chiakihayashiさんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

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ナポリの隣人(2017年製作の映画)

4.2

このレビューはネタバレを含みます

これは〈家族〉のドラマではなく、男たちが自らの〈愛する力〉を試されているという物語だ。あるいは、ようやくそこに気づいたもののなすすべもなく途方に暮れる男たちを描いた物語だ。

血は繋がっていても確執を
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ヴィヴィアン・ウエストウッド 最強のエレガンス(2018年製作の映画)

3.3

のっけからこのドキュメンタリーのために設定されたインタビューで、ヴィヴイアン・ウエストウッドはいかにも気乗りのしない様子で「過去の話をするのはウンザリなのよ」と言い、映画の最後も彼女の「もっとマシな質>>続きを読む

記者たち~衝撃と畏怖の真実~(2017年製作の映画)

4.4

 同時代のアメリカのジャーナリズムを事実に基づいて描いて、『スポットライト 世紀のスクープ』(2015)に並ぶ秀作。

 2001年9・11以後、ブッシュ大統領は「悪の枢軸」演説でイラン、イラク、北朝
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バハールの涙(2018年製作の映画)

4.1

このレビューはネタバレを含みます

 戦場で戦う男たちの映画はあまた作られてきたが、女性のみの戦闘員による武装部隊が生命を賭して戦う有り様がメインのテーマとして映画になったことはあったのだろうか? 将来は米軍の女性兵士を主人公にしてハリ>>続きを読む

マチルド、翼を広げ(2017年製作の映画)

4.2

このレビューはネタバレを含みます

 9歳のマチルドはパリで母親とふたり暮らし。ところが彼女のママは変わり者、というよりはちょっとヘン。例えばウェディングドレスを試着し、そのまま裸足でショッピングモールを歩き回ったかと思えば、店に戻って>>続きを読む

ソハの地下水道(2011年製作の映画)

4.3

このレビューはネタバレを含みます

 ナチス占領下のポーランド、地下水道にユダヤ人たちを結果的にかくまい通した下水修理の労働者ソハが主人公。ソハは決して英雄でもなければ善人でもない。副業としてコソ泥稼業に精を出し、強欲でもあれば、狡猾に>>続きを読む

シアター・プノンペン(2014年製作の映画)

3.3

以前に国際交流基金で渡辺えりさんが聞き手になった監督のトークを聞いたときに書いたものを。

映画の創り手の話は面白い。ましてカンボジア初の女性監督ともなればなおのこと。監督は1973年生まれ。高校を卒
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あの日 あの時 愛の記憶(2011年製作の映画)

3.8

 アウシュヴィッツ収容所のなかで、ユダヤ人のハンナとレジスタンスに加わって政治犯として収容されていたトマシュは出会って恋に落ちた。仲間たちによる周到な準備とハンナをどうしても連れて行くというトマシュ自>>続きを読む

マイ・サンシャイン(2017年製作の映画)

3.9

このレビューはネタバレを含みます

トルコの片田舎で因習によって家に軟禁され、次々に結婚させられようとする5人姉妹の物語『裸足の季節』(2015)で長編デビューした監督の第2作。

1991年、ロサンゼルスの黒人居住地区。冒頭、アフリカ
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ブルー・マインド(2017年製作の映画)

4.2

このレビューはネタバレを含みます

 スイスアカデミー賞作品賞ほか3部門受賞作品。
 ポーランドの女性監督作品『ゆれる人魚』はなかなかに象徴の意味を切り取るのは難しかったのだけれど、その関連で情報が入ってきて見たこの作品のメタファーなら
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ゆれる人魚(2015年製作の映画)

3.7

このレビューはネタバレを含みます

198X年、共産主義時代のポーランドを舞台に、人魚の姉妹が陸に上がり、見世物小屋ならぬナイトクラブでスターになるが・・・というホラーファンタジー。ヒロイン2人は人魚でしかも肉食、人間の男に恋をした姉が>>続きを読む

ちいさな独裁者(2017年製作の映画)

4.4

このレビューはネタバレを含みます

正直、試写会場を抜け出したくなるほど、見続けるのは怖ろしく苦痛だった(こんな思いをしたのは『サウルの息子』以来)。

ドイツ敗戦末期、脱走兵のヘロルトは辛くも追っ手を逃れ、たまたま勲章をいくつもぶら下
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華氏 119(2018年製作の映画)

4.4

このレビューはネタバレを含みます

そもそもトランプはテレビの自分のギャラを上げるためにハッタリで大統領選に立候補するとぶち上げたのだったとか、トランプをきちんと批判できないテレビのキャスターたちは軒並みセクハラの加害者として告発されて>>続きを読む

ワンダーランド(2017年製作の映画)

3.6

このレビューはネタバレを含みます

@フィンランド映画祭2018@ユーロスペース

まもなく50歳というヒロインは、夫が年若い女と暮らすために出て行き、娘は遠くポルトガルにいるので、クリスマス休暇を初めてひとりで過ごすことに。長年の親友
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顔たち、ところどころ(2017年製作の映画)

4.7

これはもう、映画として祝福されているようなドキュメンタリーというよりは映像エッセイ。観る人たちも祝福されているような気持ちになる。

アニエス・ヴァルダはこれまでのドキュメンタリーを見てもそう思ったけ
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モルゲン、明日(2018年製作の映画)

3.9

@福島映像祭2018@ポレポレ東中野

福島での原発事故から3か月後にドイツは2022年までにすべての原発を廃炉にすることを決めた。第二次大戦後、日本もドイツも敗戦国でありながら高度な経済成長を遂げた
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悲しみに、こんにちは(2017年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

1986年生まれのカルラ・シモン監督が自身の子ども時代の体験をもとにつくったデビュー作。ベルリン国際映画祭やスペインのアカデミー賞であるゴヤ賞で新人監督賞。

6歳のフリダは荷物が段ボールに詰められる
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祝福~オラとニコデムの家~(2016年製作の映画)

3.3

コピーは「少女はこの世界に負けないように立っている」。

2017年、山形国際ドキュメンタリー映画祭大賞にしてヨーロッパ映画賞最優秀ドキュメンタリー賞。試写で見せてもらったときは、どうにも掴み所がなか
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Vision(2017年製作の映画)

3.3


吉野の山深い里を舞台にしたスピリチュアル・ファンタジー。海中での少年少女のラブシーンがこの上なく美しかった『2つ目の窓』(2014)で十分には展開できず仕舞いだった河瀨直美監督のスピリチュアルなヴィ
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ポップ・アイ(2017年製作の映画)

4.4

@試写

ミドルエイジ・クライシスと言うよりは人生の黄昏時を迎えたオジサンが、偶然幼い頃に飼っていた象のポパイに再会、彼を故郷に連れ帰ろうとするロードムービー。

いや、こんなポップかつシリアス、しか
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寝ても覚めても(2018年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

@試写会

濱口竜介監督が「『寝ても覚めても』ほど恋に落ちることの魔法か呪いのような不思議な力を、真に迫って描き切った恋愛小説を私は知りません」と柴崎友香の小説を映画化。

そうかぁ、田山花袋の『蒲団
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アフター・ルイ(2017年製作の映画)

4.5

@レインボーリール東京2018

レインボーリール東京(東京国際レズビアン&ゲイフィルムフェスティバル改め)でも女性監督作品優先でほぼレズビアンを描いた映画ばかり見てきたけれど、アラン・カミングが主演
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女は二度決断する(2017年製作の映画)

3.9

このレビューはネタバレを含みます

 やっと書けたレビュー。

 2000年から2007年にかけて「国家社会主義地下同盟」というネオナチの極右テロ集団に9人の外国人と女性警官1人が殺害され、太い釘を800本も詰めた手製の爆弾テロで22人
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ビューティフル・デイ(2017年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

『少年は残酷な弓を射る』でティルダ・スウィントンと共に親子の関係性のコワイほどの真実を抉り出したリン・ラムジー監督、6年ぶりの新作。今回はカンヌ国際映画祭の脚本賞及びホアキン・フェニックスが主演男優賞>>続きを読む

マルクス・エンゲルス(2017年製作の映画)

4.0

『資本論』全三巻を4年近くかけて読破した哲学のお勉強仲間がみんなで見に行くというので混ぜて貰って、試写と同じくほぼ前知識ゼロで鑑賞@岩波ホール。

え!? 監督はアップリンクで公開中のドキュメンタリー
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ボストン ストロング ダメな僕だから英雄になれた(2017年製作の映画)

3.2

主人公は気はいいヤツなのだけれど、離婚をした父親は見るからにマッチョだし、母親は酒に溺れつつもおばちゃんパワーで全開で子離れができていないし、そりゃ彼がルーズでヘタレなところがあるのも無理ないよね。そ>>続きを読む

BPM ビート・パー・ミニット(2017年製作の映画)

4.7

このレビューはネタバレを含みます

 映画ならではの学びを得たと呼べる作品。リクツで理解するより前にココロの奥深くがさざ波が立つように揺さぶられて、その分やわらかくなったアタマがゆっくりと考え続け、それが次第にカラダに刻み込まれていった>>続きを読む

RAW〜少女のめざめ〜(2016年製作の映画)

3.4

このレビューはネタバレを含みます

女性の秘めた欲望をこのうえなく洗練されたかたちで描き直したのがソフィア・コッポラ監督の『ビガイルド 欲望のめざめ』だとしたら、この『RAW 少女のめざめ』はホラー映画というジャンルを借りて、それを極端>>続きを読む

ファントム・スレッド(2017年製作の映画)

3.0

このレビューはネタバレを含みます

ちょっと気づいたことがあるので書き足し(こんなふうに後を引くのはやっぱり相当な熱量を持った作品だから)。

数々のドレスにはため息が出るし、デザイナー役のダニエル・デイ=ルイスはとてもハンサムで入念に
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モリのいる場所(2018年製作の映画)

-

@試写

もともとは山崎努に導かれて沖田修一監督が熊谷守一に関心を持ち、映画化された作品だけれど、私にとってはなんといっても樹木希林さんの映画だった。

熊谷守一本人は「仙人」と呼ばれることを嫌がって
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わたしは、幸福(フェリシテ)(2017年製作の映画)

3.6

 中国は近くて遠いが、アフリカとなると遠くて遠い(だいたいが多種多様な国々をアフリカとひとくくりにしてよいものか?)。「ワールドミュージック界の雄」(この言葉も何故「ワールド」なのだろう?)と言われて>>続きを読む

ルージュの手紙(2017年製作の映画)

4.0

 30年後に突然現れた継母は、自己チューで、オトコに弱く自分に甘く、かつギャンブルで食うほど頭脳犯で度胸も満点。でも、扮するのはカトリーヌ・ドヌーヴだから、憎めないばかりではなく、可愛いカッコイイ! >>続きを読む

メッセージ(2016年製作の映画)

4.4

このレビューはネタバレを含みます

@DVD

プロットはふたつ。

地球外生命体が同時に地球の12箇所に出現する。そのうちのアメリカでエイリアンとのコミュニケーションを図る言語学者がヒロイン。

AIのディープラーニング機能に助けられ
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妻の愛、娘の時(2017年製作の映画)

3.8

@東京フィルメックス

現代中国の3代にわたる女性たち。コミカルなドラマを通して、特に結婚生活における女と男の関係の変化が見えてくる。

祖母が亡くなった。先に亡くなった祖父の墓ははるか田舎の故郷にあ
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天使は白をまとう(2017年製作の映画)

4.6

@東京フィルメックス

今年の女性監督の作品ベスト5に入る秀作。あらゆるシーンが象徴的に現代の中国の−−−−のみならずアジアの−−−−女性への抑圧の構造を指し示している。なにしろ浜辺に立っているマリリ
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苦い銭(2016年製作の映画)

3.6

@試写

『3億人の中国農民工 食いつめものブルース』の著者・山田泰司によると中国は「都市戸籍を持つ4億人が農民戸籍を持つ9億人から搾取するといういびつな構造を持つ」という。(http://busin
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