泥臭い映画だ。スタイリッシュに撮るのではなく、ふたりが竹刀や木刀を振りかざしてただ打ち合う姿を撮る。良く言えば誤魔化しはない。悪く言えばエンターテイメント的な旨味はない。いや、一応カタルシスはある。率>>続きを読む
なんとも言いようのない珍品を堪能してしまった。「イット」の正体をあれやこれやと詮索するのは野暮というものか。エイズなどの性病を描いているとも受け取れるし、あるいは「死」そのものが絶えず迫り来る人生を表>>続きを読む
これは見事! ストーリーのどんでん返しが良い具合にキマっていて、先を読ませない作りになっている。監督のストーリーテリングの巧さは『光にふれる』でも明らかだったのだが、それに更に磨きが掛かっている。監督>>続きを読む
渋い映画だ。なんなら「燻し銀」と言っても良いのだろう。「黒人」かつ「女性」という二重のマイノリティとしてのアイデンティティを背負わなければならなくなった女性たちが NASA の中で奮闘して「The F>>続きを読む
これはしてやられた! という感を抱く。もしかしたら今一番キューブリックに近い位置に居るのが吉田大八という監督なのでは……と。結構重大な突っ込みどころは幾つかあるのだけれど、それを踏まえても 3.11 >>続きを読む
序盤のテンポが個人的に体質に合わず、後半で捻りが効いた展開から期待値が高まったのだが……落とし方に今ひとつしっくり来ないものを感じた。尻すぼみ……という印象を抱いたのだ(それも監督の計算の内なのかもし>>続きを読む
系統としては『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』や白石晃士監督が撮るような POV のホラーに入るのだろうが、まず手ブレの生々しさがこの映画にはない。観ていて緊張しないのだ。だからただダラダラした素人の>>続きを読む
若年性アルツハイマー病を描いた映画。ジュリアン・ムーアの演技は流石に迫力があり、それでポイントをだいぶ稼いでいる。だが映画としての出来はどうか? どうも病状の進行を一本調子で描いた作品という印象が拭い>>続きを読む
点数が低くなってしまったのは期待値の高さ故なのか。それとも、主人公が不良になった理由に説得力を感じないことやその他の細かい説明が足りないことを気にしてしまう私の体質故なのか。私はスジからしか映画を観ら>>続きを読む
ボンクラな映画だなあ……『快楽天』あたりで展開されそうなストーリーのお話。エッチな要素をアートで言い繕っていないところに監督の誠実さを見るべきか、それとも本当にただの凡人が撮った映画として受け取るべき>>続きを読む
『マン・オン・ザ・ムーン』という映画自体をさほど面白いと思えなかったせいか、この作品を観たら評価が変わるかな……と思ったのだけれど今ひとつ前のめりになって観ることが出来なかった。確かにジム・キャリーの>>続きを読む
渋い映画だな、と思わされた。私には珍しく原作を読んでいたのだが原作の旨味はそのままで、しかし原作の奴隷に陥らずに独自のクオリティを保って映画化されたという印象を感じる。そこにあるのは「愚行」の数々だ。>>続きを読む
映画製作を禁じられている条件下で、それでも体制に反抗してなおかつこのような人情味溢れた映画を作ったその心意気は大いに買いたい。しかし、どうしてもオーソドックスな映画と比べると観ていてキツかったので点が>>続きを読む
ドキュメンタリーとしては可もなく不可もなし。名匠ケン・ローチが、時に食い繋ぐためにしぶとく商業主義に屈してでも、役者となっても諦めずに映画を撮り続けて来たその道筋が関係者と本人に依って語られる。ここで>>続きを読む
今回のケン・ローチは淡々としている。背後で流す音楽はほぼ皆無。ダニエル・ブレイクという人物についても、彼に救われるケイティについても語らない。ただひょこひょこ歩く姿を見せ、そしてお役所仕事の不条理を見>>続きを読む
序盤は個人的にはかなり退屈だったのだが、レオナルド・ディカプリオが奇蹟的に生き延びるあたりから面白くなって来た。個人的にはその映像美に例えばタルコフスキーやテレンス・マリックの映画などを想起させられた>>続きを読む
緊迫感を漂わせる冒頭のツカミから始まり、少年が走ったり自転車を漕いだりする横への運動がこの映画を疾走感溢れるものに仕上げているように思う。だから観ていて単純に面白かった。ストーリー自体はダルデンヌ兄弟>>続きを読む
点数的には高くなってしまったが、諸手を挙げて絶賛すべき映画だとは思わない。良く言えばこの映画は良質なフランス文学のように、繊細な心理描写や細部のタッチの輝きの筆致に依ってこちらを魅惑する。それはノスタ>>続きを読む
山下敦弘という監督と相性が合わないせいか、脚本家のせいなのかそれとも私がスジからしか映画を観られないという体質だからなのか、いずれかは分からないのだがともあれこの映画を前のめりになって観ることは出来な>>続きを読む
突っ込みどころ満載のスジだが、ところどころ細かなギャグが散りばめられているので退屈はしなかった。要は昔あった『加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ』的な、大人のファンタジー映画として観れば良いのだろう(>>続きを読む
結果的に点は高くなってしまったが、なかなか評価に苦しむ映画だ。何故主人公が娼婦の正体を探るのか動機が描かれていないので感情移入し辛い反面、それを描かないことこそがダルデンヌ兄弟の狙いではないかとも思わ>>続きを読む
これは凄い! 『ロスト・ボディ』のようなキャッチーな謎が冒頭で提示されていなかったので序盤は結構退屈だったのだけれど、後半から尻上がりに面白くなって来たのでこの点数になった。どんでん返しの見事さと来た>>続きを読む
気まずさがこの映画のキモなのではないかと思ってしまった。冒頭の主人公とその妻のやり取り、子どもたちが主人公を警戒するところ、そして主人公と同じく妻を亡くしたトラック運転手との無言の見つめ合い……そのあ>>続きを読む
非常に悩ましい映画だ。私はハリウッドの赤狩りの歴史を知らなかったので勉強させられるところは多々あったし、またダルトン・トランボという人物についてもなにも知らなかったので彼の反骨精神から学ばなければなら>>続きを読む
アンドレイ・タルコフスキーにも似た境地を感じさせる。悪く言えば退屈なスローテンポの映画なのだけれど、そこは黒沢清氏だけあって幽霊の女性たちの美しさ、迫り来る彼女たちのじわじわと来る存在感の凄味に依って>>続きを読む
非常に悩ましい映画だ。確かに俳優陣の頑張りがあって感動の涙は誘われた。しかし、何処かこの映画は薄っぺらいというか、今ひとつ前のめりになって観られなかったことも確かだ。こちらの「俗情との結託」が露わにな>>続きを読む
もう「ボーン・スリッピー」が流れることはない。あの時代のアンセムであり、若者たちの明るい未来を(無理矢理にでも)楽天的に歌い上げていたあの空気はここにはない。二十年という月日が彼らに与えた負荷は大きい>>続きを読む
レオス・カラックスのアレックス三部作にも似た、若さ故のぎこちなさや乱暴さを感じた(特にスケートボードの場面)。あとは言うまでもなく北野武映画をも想起させられたのだけれど、北野映画がヤクザを描いていて生>>続きを読む
ドイツ映画にはさほど詳しくないのだけれど、例えばエミール・クストリッツァがこの素材を撮ったらもっと面白くなるのではないか……と思いながら観てしまった。具材は良いのだ。ベルリンの壁崩壊と東西ドイツ統一を>>続きを読む
スジ自体はあってないようなもの。ひたすらドラッグに明け暮れる若者たちの無為な青春を描いており、主人公のレントンは一旦そんな暮らしから脱出を試みるものの彼について回る「ダチ」とのしがらみに束縛されて逃げ>>続きを読む
スカーレット・ヨハンソンの美貌を堪能する「だけの」映画。わざとエンターテイメント性を無視して、余分な情報を削ぎ落としてしまって謎めいた雰囲気を作り上げているのだろうけれど、その不条理さに惹かれたかとい>>続きを読む
新海誠作品に対してはあまり良い印象を抱いていなかったのだけれど、この作品は流石に大ヒットを飛ばしただけあってエンターテイメント性を孕んだ作品として成立しているように思った。小説版を先に読んでいたので展>>続きを読む
しょーもないB級ホラーなんだろうなと思ってヒマ潰しに観始めたら(失礼!)、これがまさかの『ゴーン・ガール』級のイヤミスだった! 死体が蘇るという不可解な事件から始まって、まさかそう来るかというようなミ>>続きを読む
ちゃちな映画だなあ……いやロケーションに相当にお金を使ったのは分かるのだけれど、その分を脚本に回せよという感じ。大自然の描写やワールドワイドな多様性の広がりには感動させられるものがあったし、映像もまあ>>続きを読む
音楽を売りにした映画の悪いところがロコツに出ている。つまり、ストーリー性の膨らみがなく音楽に寄り掛かり過ぎているので、主人公の苦悩も奮闘も努力もサクセスのカタルシスも、なにもかもが薄っぺらく感じられる>>続きを読む
吹替版で鑑賞。観終えたあと唸らされてしまった。ご都合主義的だとか話がサクサク進み過ぎだとか色々文句のつけようもあると思うのだけれど(良質なゲームを解いているような気分になった)、兎も角も「今の」アメリ>>続きを読む