めしいらずさんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

Kids Return キッズ・リターン(1996年製作の映画)

3.7

何か一つのことに青春を賭ける。個々に生来ある要領の良し悪し。勘所を外してばかりで逃げ腰の人生になっていく者。意識せずとも物事の芯を捉えてしまう有能な者。無才に腐らずに努力し続ける者。才能の有無に関わら>>続きを読む

菊五郎の鏡獅子(1935年製作の映画)

2.3

六代目尾上菊五郎が演ずる「鏡獅子」を海外向けの文化紹介として小津が撮った記録映画。徹頭徹尾、記録映画なのであって、それ以上でもそれ以下でもない。外国人や伝統芸能に通じた教養人にはこの貴重な記録フィルム>>続きを読む

サイクリスト(1989年製作の映画)

3.0

重病の妻と息子を連れイランに逃れたアフガニスタン難民の男が、職にあぶれ貧窮し治療費捻出の為にやむなく丸7日間ぶっ通しで自転車を漕ぎ続ける興行に挑む。困った人の足下を見るだとか、利用して一儲けを企むだと>>続きを読む

赤毛のアン/アンの結婚(2000年製作の映画)

1.5

このレビューはネタバレを含みます

ミーガン・フォローズ主演の”赤毛のアン”シリーズだから観たのだけれど、どうにもこうにもそれらしさが全くない。途中から大戦を交えお話がどんどんきな臭くなっていく。それ以前に話がまるでデタラメでありご都合>>続きを読む

カーズ(2006年製作の映画)

2.8

一秒でも人より速く、一歩でも人より前に。それが是とされ民が当たり前と思わされて生きているその一方で、忘れられ寂れていく町にそれでも住まい続ける民もいる。自分たちの住む場所を愛し、誰もがお互いのことをよ>>続きを読む

コクリコ坂から(2011年製作の映画)

2.8

「ゲド戦記」「アーヤと魔女」が個人的に苦手だったからあまり期待せずに観たけれどこれは面白かった。主人公たちの関係性の紆余曲折には少々都合が良い感じもあるけれど、あるいは戦中戦後の混乱期なら十分にあり得>>続きを読む

トゥルーマン・ショー(1998年製作の映画)

1.6

このレビューはネタバレを含みます

自分の人生を生きていると思っていたのが実はそうじゃなかった。そのことに気づいた男が己の自我を取り戻し人生を改めて歩み始めるまで。こんな誰にも当てはまらない特殊すぎる設定に主人公を放り込み、作り物の苦難>>続きを読む

夏の夜は三たび微笑む(1955年製作の映画)

3.0

ベルイマンによるまさかの艶笑喜劇。「不良少女モニカ」以外にはヒット作がなく窮地だった当時のベルイマンが、カンヌで本作を評価されたことで国際的に名を知られるようになり、以後の綺羅星の如き作品群で映画史に>>続きを読む

シェラ・デ・コブレの幽霊(1964年製作の映画)

2.3

昔に一度だけテレビ放映されカルト的なファンを生んだ伝説的なホラー映画であるそうな。芸人探偵が庶民の依頼を調査する某テレビ番組で採り上げられたのをきっかけにネット配信されリバイバル的に注目を集めているそ>>続きを読む

白雪姫(1937年製作の映画)

2.7

承認欲求の虜囚はその醜い心持ちによって美貌さえも翳らせ、心根が優しい人はその穏やかな笑顔によってボロをまとっていても輝いて見える。人の美醜について外見などは実は取るに足らない些事なのだけれど、人は得て>>続きを読む

タンデム(1987年製作の映画)

2.8

このレビューはネタバレを含みます

ラジオのクイズ番組の司会者と彼のマネージャーが、ボロ車に乗って各地を転々とドサ回りしながら続けた二人の25年の終焉。番組打ち切り。司会者を慮ってマネージャーはそのことを隠して番組が続いている体を装うけ>>続きを読む

メイド・イン・USA(1967年製作の映画)

2.7

セリフとか映像とか役者とかいちいちカッコいいけどさっぱり訳わからん。つまりはとてもゴダールらしい映画じゃった。別嬪率高し。

タイタニック(1997年製作の映画)

3.2

恋愛劇としての部分は正直あまり関心ないのだけれど、歴史ロマンとしてスペクタクル劇としてはやはり抜群に面白い。豪華客船の設えと作り込み、そしてそれが沈みゆく凄絶な有り様のスケール感に圧倒されてしまう。正>>続きを読む

狼の時刻(1966年製作の映画)

4.5

失踪した画家の夫を待ち続けている妻の回想。芸術家として他人から評価されることと自己認識との間にある溝を埋めようとして夫は理性を失ってしまったのだろうか。または不倫相手への未練からだろうか。強迫観念と狂>>続きを読む

恋の二十分(1914年製作の映画)

2.5

公園のベンチでいちゃいちゃしているカップルにちょっかい出すチャーリーの巻。時計を巡るチャーリーや警官、スリ、スリの恋人、被害者らを巻き込んだすったもんだの果て、チャーリーは他人の恋人をうまうまとせしめ>>続きを読む

成功争ひ(生活法)(1914年製作の映画)

2.0

チャップリンの初出演作品とのこと。特ダネを友人記者から横取りする詐欺師のお話。いわゆる”キーストンコップ”のドタバタ調であり面白みよりは歴史的価値の方が今では大きいかも知れない。動作にすでにチャップリ>>続きを読む

コーラス(1982年製作の映画)

3.5

補聴器を外すと無音の世界になる祖父は帰宅した孫に気付かない。「おじいちゃん、扉を開けて」と外から呼びかけても気付いてもらえないでいる孫に友達も次々に加勢して、その呼び声の輪はどんどん広がりやがてコーラ>>続きを読む

フェリーニの道化師(1970年製作の映画)

3.0

監督フェリーニ自身も本人役で登場するドキュメンタリーのようなフィクションのような映画。サーカスの喧騒と混沌、道化師たちへの愛が溢れる優しいタッチ。時代が進むに従って求められなくなっていくサーカスへの惜>>続きを読む

麦秋(1951年製作の映画)

4.6

前の世代から受け継いだものを次の世代へ渡す。ただそれを連綿と繰り返す人の営みこそを描いているのだと思う。子どもたちがいて、父母がいて、祖父母がいる。そして生活の真ん中に家族で囲む食卓があった。父から息>>続きを読む

沈黙(1962年製作の映画)

3.7

言葉が通じない異国を姉と妹と彼女の息子の3人が旅する途中のホテルで、抑圧的な姉と奔放な妹の間にずっとくすぶり続けていたわだかまりが露わになっていく。性に対する考え方の相違。酒に溺れつつも理性的であろう>>続きを読む

赤ちゃんに乾杯!(1985年製作の映画)

3.0

独身男3人が気ままな共同生活を送るアパートに届いた赤ん坊。期限つきの初めての育児。最初はどう世話すれば良いのか判らず押し付け合っていた彼らが、少しずつやり方を心得ていくうち次第に奪い合うように面倒をみ>>続きを読む

グロリア(1980年製作の映画)

4.1

これまでに観た映画の中のカッコいいキャラクターについて考えるとき、例えば「レオン」のレオンやスタンだとか、「第三の男」のハリー・ライムだとか、「勝手にしやがれ」のミシェルだとかを差し置いて個人的に真っ>>続きを読む

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)

3.2

オリジナル版「エール!」の印象そのままでどちらを観ても良いと思う。このよく出来たストーリーを初めて体験した分だけ個人的にはオリジナルの感動がやや大きかった気がする。家族が娘を頼りにする必然性については>>続きを読む

夜と霧(1955年製作の映画)

4.5

アラン・レネの名を世に知らしめた記録映画。ヴィクトル・フランクルの著書と同タイトルであり同じくホロコーストを題材としてはいるけれど直接の関係はない。あちらが心理学の側面からホロコーストに切り込んでいた>>続きを読む

魔術師(1958年製作の映画)

3.2

魔術、神秘、死後の世界、奇跡、愛。科学の側に属する者はそれら非科学的なものはないと言い、非科学の側に属する者はあると言う。でも…。悪戯の幽霊に本気で恐怖を感じ慌てふためく医師。魔術の種をバラされて消沈>>続きを読む

アリス(1988年製作の映画)

4.0

もはや説明不要のルイス・キャロルの原作であるけれど、繰り返し映像化される題材になったのはとても豊かで刺激的な視覚イメージを読者それぞれに喚起させるからだろう。可愛らしいお話として印象付けられている人が>>続きを読む

スチレンの唄(1958年製作の映画)

2.3

アラン・レネの工場萌えなドキュメンタリー映画。工場見学クイズ的な前半と、工場の構造物やパイプが作る線のフォトジェニックさを見るような後半。そこに詩的なナレーションが被さる。まあ面白くはない。工場好きに>>続きを読む

冬の光(1962年製作の映画)

3.7

窓から射し込む冬の光が寒々しい牧師の心の内側を照らす。妻を亡くしとうに信仰を失った牧師が、それを自覚しながらもあくまで職務として表面的に信者たちと関わり続ける。それはとても不幸な関係性にも思えるけれど>>続きを読む

アラビアのロレンス/完全版(1988年製作の映画)

4.0

オスマン帝国の支配からアラビア半島を解放する為、対立するアラブ人部族を取りまとめて反乱を率い、アラブ人たちの独立国家建国を目指したイギリス人将校が、作戦こそ達成したものの一枚岩とはなれない部族間のいざ>>続きを読む

バジュランギおじさんと、小さな迷子(2015年製作の映画)

2.8

この娘を親元に帰してやりたい。パキスタンの山村に住まう唖者の女の子が、隣国インドにある霊験あらたかな寺院での願掛けからの帰りに母とはぐれる。偶然彼女を見つけ窮状を知った主人公が、持ち前の善き心に衝き動>>続きを読む

サン・ジャックへの道(2005年製作の映画)

2.8

フランスのル・ピュイから遥かスペインの聖地サンディアゴまで1500kmの道のりを踏破した訳ありの男女9人の巡礼の旅路。その過酷な道行きにそれぞれが無心になり、彼らがまとっていた虚飾はいつしか剥がれ落ち>>続きを読む

鏡の中にある如く(1961年製作の映画)

3.7

著名な「神の沈黙」三部作の最初の作品。重篤な精神病を患う娘を己の小説の題材として見てしまう父親像が、あの芥川の「地獄変」の絵師を髣髴とさせるけれど、ベルイマンは家族に対して抑圧的であった自身の父親を重>>続きを読む

冬冬の夏休み(1984年製作の映画)

2.8

病気で入院している母から離れて田舎の祖父の家で過ごす兄妹の夏休みがドキュメンタリー調で描かれている。きっかけ一つですぐに打ち解け合う兄と地元の子ら。亀の災難。時に牛の糞が流れる川遊び。親しい友を見つけ>>続きを読む

ザリガニの鳴くところ(2022年製作の映画)

1.6

このレビューはネタバレを含みます

設定ありきでキャラクター造形が薄めの映画だろうと冒頭で予想できたのに、予告編に曰く”結末は正真正銘の衝撃”が待つってのが気になって、眉に唾をつけつつも最後まで観た。でもその派手な惹句のせいで衝撃の結末>>続きを読む

素晴らしき日曜日(1947年製作の映画)

2.9

夢を諦め鬱屈している青年が、デートの日の日曜日、恋人に幾度も励まされ再び夢を追い始めるまでの一日。そこに敗戦後間もない日本の復興、立ち直ろうとする日本人を重ね合わせて描いた、黒澤らしからぬ市井の小品。>>続きを読む

ローラーとバイオリン(1960年製作の映画)

3.0

バイオリンを習う少年と道路舗装に従事する青年の友情。意地悪する者とされる者とに分かれた子ども同士の世界。平生から怖いと思っている大人の世界。叱られて項垂れる子らの後ろ姿。でも大人の中に交じるのは晴れが>>続きを読む