めしいらずさんの映画レビュー・感想・評価 - 4ページ目

処女の泉(1960年製作の映画)

3.8

人はどうしてこんなに簡単に感情や欲望に振り回され罪を犯してしまうのか。神はどうして人が過つのをそのまま看過するのか。敬虔なクリスチャンの地主が教会に愛娘を使いに出す。その道すがら彼女を騙して接近し凌辱>>続きを読む

大日本人(2007年製作の映画)

1.2

このレビューはネタバレを含みます

映画と言うよりも長くて退屈なコントを観ているような感覚。目の前で繰り広げられる微妙にふざけた事象と、それに対して演者が極めて厳粛風にリアクションしていることとの間のズレ感が笑いどころなのかも。いわゆる>>続きを読む

ママ(1972年製作の映画)

3.2

幼い息子が寝ている隙に買い物に出かけるお母さん。早く済ませて帰りたいのに、レジ前には難儀な客たちが行列をなし遅々として進まず、時間ばかりが過ぎていく。その頃、家では息子が様々な危険に身を晒されていて…>>続きを読む

変態村(2004年製作の映画)

2.7

このレビューはネタバレを含みます

車が立ち往生して迷い込んだ村の異様な雰囲気。そこにはどんな人が暮らし、何が行われているのか。かつて何があったのか。なぜ女や子供がいないのか。主人公が目撃し体験する禍々しい事ごと。破壊される車。獣姦。磔>>続きを読む

椿三十郎(1962年製作の映画)

4.0

上役らの権謀術数に首を突っ込んで右往左往している若い侍たち。年長者は知恵が働きいつも奥歯に物が挟まった物言いをし、若者はいつも浅はかで兎角正しいものとそうでないものとを見間違える。相手の言葉を額面通り>>続きを読む

野のユリ(1963年製作の映画)

3.0

その人の善き心は善き行いとなって表れ、やがて善き人を連れてくる。ただの通りすがりの男の利他的な行いが周囲を巻き込んで大きな事業を本当に実現する。その男に打算がないのが判るから人は彼に惹きつけられてしま>>続きを読む

柳川堀割物語(1987年製作の映画)

3.0

高畑勲が手がけたドキュメンタリー映画であり、そのことに徹底して劇映画的色付けを一切しない点がまるでNHKの特番を観るよう(ナレーションが加賀美幸子、国井雅比古両氏であるのもその感を強める)でありもする>>続きを読む

スタートアップ!(2019年製作の映画)

2.4

心配し合っているのにそれがうまく伝わらない母と息子が、その場所を離れることで互いを己を見つめ直す。主人公と親友の二人それぞれの上司のさりげない人間味が清々しい。悪役の役回りやコメディ部分は些か平板であ>>続きを読む

チェンジリング(1979年製作の映画)

2.4

妻と娘を亡くした失意の中、ポルターガイストが起きる家に越して来てしまった主人公が、怪奇現象の根っこにあった大昔の遺産相続を巡る父子の悲劇を探り当て、霊の恨み辛みを鎮めようとしたけれど…。大仰にならない>>続きを読む

夢二(1991年製作の映画)

3.4

「ツィゴイネルワイゼン」「陽炎座」に続いて”大正浪漫三部作”の掉尾を飾る名編。相変わらず人を食った物語の清順調に翻弄されてしまうのはいつも通りなのではあるけれど、同時に独特の色彩美や感覚美を捉えた映像>>続きを読む

座頭市(2003年製作の映画)

2.9

めちゃくちゃ高速に見えるビートたけしの殺陣芝居がカッコいい。お話の描き方のニュアンスが何となく復讐譚調のコントっぽい感じがする。畑を耕す鍬の音やガダルカナルタカの剣術指南、大工の棟上げ、ラストのタップ>>続きを読む

四季(1969年製作の映画)

2.5

馬を駆って四季の移ろいの中をゆく恋人たち。冬景色がとりわけ幻想的で美しいのがロシアアニメならではか。ノルシュテインらしい奥行きのあるアニメ表現がさすが。チャイコフスキーの音楽も素敵。

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)

2.7

待望の初ジョーダン・ピール体験。得体の知れぬホラー映画のように始まって、やがて未確認飛行物体にまつわるSF調になり、姿を現した”それ”と対決する(ジョーズ的な)モンスター映画調になり、最後には西部劇の>>続きを読む

逆転のトライアングル(2022年製作の映画)

3.8

これまでの「フレンチアルプスで起きたこと」「ザ・スクエア思いやりの聖域」の二傑作ですっかりファンになってしまったリョーベン・オストルンドの、実に彼らしくブラックな笑いに満ちたこれまた傑作だった。原題は>>続きを読む

スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム(2021年製作の映画)

2.7

フィルマにおける驚くべき高評価。どうやらこの映画にはシリーズ作品を観続けてきた人には理解できる絶大な感動ポイントがあるようであって、過去作を一つも経ずにいきなり本作に飛び込んだ私ごときがどうこう言える>>続きを読む

あの夏、いちばん静かな海。(1991年製作の映画)

3.2

壊れたサーフボードを拾ったのをきっかけに始めたサーフィンに次第にのめり込んでいく聾唖の青年の青春。その始まりから終わりまで。何かを始めた時、やる気を挫くような様々なことが起こる。金銭面。新参者に対する>>続きを読む

Dolls ドールズ(2002年製作の映画)

3.4

北野作品を観るのは7作目だけれど映像は本作が一等綺麗だった。人形に血が通って見えてくる人形浄瑠璃とは逆さまに、ここでは役者がどこか人形めいて見え始めるのが面白い。純日本的な美意識が見どころだろう。もう>>続きを読む

ルパン三世 カリオストロの城(1979年製作の映画)

3.1

まあ言ってみればとてもあり得ない無茶苦茶な大活劇なのであるけれど、だからこそアニメで描く意味があると言うことでもあるだろう。それを信じさせてしまうだけの画の力があると言うか、宮崎駿は騙りが上手いと言う>>続きを読む

HANA-BI(1997年製作の映画)

3.3

子どもの死。不治の病に冒される妻。自分の身代わりに半身不随となり後に孤独に耐えかね自殺未遂する幼馴染の刑事。犯人捕縛の際に殉職する部下。彼らや遺族への主人公の負い目。死の気配に取り囲まれ彼もまた強烈に>>続きを読む

ロシア砂糖のTVコマーシャル(1995年製作の映画)

2.6

ノルシュテインによる角砂糖のコマーシャルフィルム。果実のジャムを煮ている母ライオンと、横からちょっかい出しては怒られる子ライオンの微笑ましい光景。木漏れ日の温かみそのものの日常の1シーン。そう言えば子>>続きを読む

ウォレスとグルミット、危機一髪!(1995年製作の映画)

2.3

入念に張り巡らされた罠にかけられグルミット大ピンチの巻。それなりに楽しめるけれど、良くも悪くもあまり印象に残らなそう。

タラタタ(1977年製作の映画)

3.0

タラタタ、タラタタ…。マーチのリズムに乗ってパレードが街をゆく。街のみんなが集まって大賑わい。でも幾重にもできた人垣は、小さな少年と仔犬からパレードを覆い隠してしまっている。二人は仕方なく人通りのない>>続きを読む

スキャナーズ(1981年製作の映画)

2.8

静々とした調子の語り口が印象的なサイキックホラー。超能力が目に見える訳ではないから、そこには今から何かが起こりそうな不穏さと、凶々しい結果があるばかり。無用なアクションや騒々しい展開がなくてスッキリし>>続きを読む

トゥ・リエン(1980年製作の映画)

2.8

神の御業とも言うべき天地創造。あらゆる動植物が繁栄していく。その中でただ一つ神を煩わせる生き物がいた。もちろん人間である。彼らだけが与えられたものに満足せず次々に神に要求する。あらゆる動植物の死屍累々>>続きを読む

カメラマンの復讐(1912年製作の映画)

3.0

1912年のロシア産ストップモーションアニメ。夫は妻に内緒の浮気中。彼に恨みを持つ映写技師がその一部始終を撮影する。一方で妻にも恋人がいたけれど夫に密会現場を見つかってしまう。しかし夫婦が仲直りに向か>>続きを読む

クラック!(1981年製作の映画)

4.6

夫が手ずから作り上げ妻に贈られる安楽椅子。村人が集い婚礼を祝うダンスの賑わい。そして子供を儲け、やがて手を離れ、また新たに家族が繋がっていく。その家族史は、壊れる度に補修され大事にされてずっと彼らと共>>続きを読む

真夜中のカーボーイ(1969年製作の映画)

3.8

夢に見た大都会ニューヨークの片隅で、生き馬の目を抜く世情に夢破れ堕ちていく若者たち。世間知らずで純朴な田舎者の主人公ジョーの底抜けの浅はかさ。都会に傷ついたリコが虚ろな目で未だ見る理想の未来像の子供っ>>続きを読む

イリュージョン?(1974年製作の映画)

3.0

太陽の日差しの中で野に山にはしゃぎ回って遊ぶ子どもたちの牧歌的な光景。動物の追いかけっこ。毛虫がサナギへ。雨の後の虹。自然はなんて不思議で面白いのだろう。子どもたちはいつまでも遊び飽きない。そこに現れ>>続きを読む

冬の日(2003年製作の映画)

3.0

芭蕉と弟子らによる連句の世界観を、国内外のアニメーション作家が己の作法による自由な表現で読み継いでいく。何と言っても巻頭の発句を担当したノルシュテインのパートが見事。木枯らしに弄ばれ遠くへ飛んでいく笠>>続きを読む

木を植えた男(1987年製作の映画)

3.5

白地の画面に絵が浮かび上がってくるような映像の凄み。この圧倒的な美しさはアニメーションでしか表現し得ないものだろう。画面の隅々にまで心が通って見える。
木を切り倒し、山を切り拓いて発展してきた人類の行
>>続きを読む

ミッドナイト・ラン(1988年製作の映画)

3.7

子どもの頃に滅法面白かった映画を年月を経てから再び観ると案外つまらなかったりすることがよくあるけれど、このお話の面白さは今でも全く色褪せていなかった。如何にもアメリカ映画的な全方向に辻褄が合うハッピー>>続きを読む

汚名(1946年製作の映画)

2.3

いわゆるスパイ活劇風にはせず心理的駆け引きでサスペンスを見せていくのがさすがヒッチコックで知的である。スパイに弱みを握られ仲間内の粛清を恐れて鈍る敵の動きを巧く利用した救出劇もスマート。ただ、妻がスパ>>続きを読む

悪魔のシスター(1973年製作の映画)

2.8

このレビューはネタバレを含みます

デ・パルマらしくヒッチコック的な物語。「殺しのドレス」の時は「サイコ」だったけれど、本作では「サイコ」と「裏窓」を下敷きにしたようなよく練られた設定だった。向かいのアパートの殺人現場を目撃した記者と彼>>続きを読む

不思議の世界絵図(1997年製作の映画)

2.6

母をたずねて三千里のような、不思議の国のアリスのような、ちょっと切ないお話。寄宿学校を追い出され頼りにはならなげな古い地図を携えて歩き始めた主人公が、途中で様々に風変わりな人々との出会いと別れを繰り返>>続きを読む

午後の網目(1943年製作の映画)

2.7

午睡する女性が夢の中で見る夢の中で見る夢の…どんどん夢の階層の奥深くへと誘われるような入れ子構造に眩惑される。鍵、鏡、ナイフ、一輪の花、受話器。一つひとつが意味ありげに見えるけれどよく判らない。何とな>>続きを読む

アレックス(2002年製作の映画)

3.7

このレビューはネタバレを含みます

逆回しのエンドロールから始まるこの映画では最初に結末が提示され、そこからオープニングに向けて少しずつ時間を遡っていく形で語られる。負傷してゲイが集うハッテン場から運び出される青年。彼がそこに至るまでの>>続きを読む