「ミシシッピー・バーニング」
1989/3/4 公開 アメリカ作品 2017-5
TSUTAYA CINEMA Handbook 2016
1980年代ランキング41位 再鑑賞

正統派骨太のアメリカ作品の名作ですね！アラン・パーカー監督が実話に基づく社会派サスペンスを観る者をぐいぐい引き込む演出を上手く作り上げています。捜査方法の異なる二人のFBIをジーン・ハックマンとウィレム・デフォーが見事に演じています。特にジーン・ハックマンを観ているだけで物語に引き込まれていきます。名作！！

1960年代のアメリカ南部における人種差別問題をテーマに、アラン・パーカー監督が実話に基づいて描いた社会派サスペンス。たたきあげのベテラン捜査官をジーン・ハックマンが、その相棒の若手エリート捜査官をウィレム・デフォーが熱演。

とんでもなく面白いですよ！！！！
KKKや差別主義者らと戦うFBIの2人組って構図なんですけど、バディものとしてめちゃくちゃ熱いし、グッとくる2人で超イケてる。
んで、これけっこう自分は大事に思ってるんですけど、タイトルとジャケ写が本当カッコいい！！！

んで、真面目な話もすると、今作は黒人差別を描いた社会派映画ど真ん中の作品でして、私が個人的に一番印象に残ってるのは
「黒人を憎んだおやじの本当の敵は貧乏だった」
ってセリフなんですね。

これが今作がまったく古びず、それどころか黒人差別とは遠い場所にいる私のような人間にもぶっ刺さった理由だと思うんです。

この言葉には、「人は本当の敵（＝構造的な貧困や社会不平等）を直視できず、もっとわかりやすい他者を敵に仕立てて憎んでしまう」という、普遍的かつ痛烈で恐ろしくパワーを持った真理が含まれています。

貧困や不安定な生活基盤といった敵は複雑で、自分では変えにくい。だから人は、もっと単純で目に見える対象（人種・外国人・他の地域・階層）を敵に仕立てて憎悪を向けてしまうことがあります。
この構図はアメリカ南部だけでなく、時代も国境も越えて繰り返されてきたものです。

現代の日本に置き換えて、社会分析的にもう少し掘り下げます。（あくまで政治的主張ではなく、社会構造分析のつもりです）

「黒人を憎んだおやじの本当の敵は貧乏だった」
このセリフには、「敵のすり替え」と「感情の矛先の誤配」という深い社会構造が見えてきます。

つまり、憎しみの正体は感情ではなく構造にあるのではないか、という話です。
構造は目に見えにくく、個人の力ではどうにもできないことが大半です。そこで多くの場合、自分と同じ弱者に怒りが向かったり、わかりやすい他者を敵に設定したりします。

アメリカ南部ではそれが黒人だったわけで、現代日本では、「外国人労働者」「生活保護受給者」「特定の世代」「フェミニスト」など、政治的・社会的にラベリングされた集団になることが多いです。

現代の日本は平和であるがゆえ、構造の影響は個々人に静かにのしかかっています。
するとまるでミシシッピーバーニングのような、設定した敵への過剰な攻撃が起こります。（あんまあれですけど、個人的にはヘイトうんたら全般をイメージしています）

いわゆる「矛先の誤配」です。
矛先の誤配が起こると、同じ立場にある人々が互いを責め合う構図が生まれます。
同じ船に乗っている人たちがいるとして、船の穴を開けた者ではなく、船の端に座っている人を責め始めてしまう。差別や憎悪の温床の完成です。

これが難易度激ムズなのが、船の穴を開けた者がいるとして、その人がたまたま腐った床板を踏み抜いただけなのか、あるいは誰かに脅され船に穴を開けたのか、そういう様々な関係が絡んでくるのでいっそう実体は見えづらいんですよね。

貧乏ってくくりも単なる金銭的貧困ではなく、チャンスの不平等、生活の不安定さ、社会システムの脆弱さ、教育や医療へのアクセス格差といった、生きるための土台の脆さが根本にはあるので、誰かを憎んでも解決しない、もっと根深い構造が敵なんですね。

つい最近もミシシッピーバーニングまんまの事件がアメリカで起こりましたし、この映画が何十年経っても刺さり続けるって悲しい。

でも超名作なんでおすすめ！！！！！！

黒人に対する人種差別がテーマで、実際の事件を基にしているだけあって、当事者以外の傍観者の冷ややかな反応や描写一つ一つがリアルで、終始重たかった。
冒頭でウィレム・デフォーが"ケネディ坊や”と言われていたのには違和感を感じた。