"お墓は広い方がいい…家族が集まってくれるから…"

楽して儲かるから…従姉妹のムイは祖父を介護して家を相続した…自分も楽して暮らしたいと考えたエムは、末期の大腸ガンで余命一年と診断された祖母メンジュにとって一番の存在になる為に、半ば強引に祖母と同期する事に…

打算から始まった祖母との同居…しかし、慎ましいながらも懸命に生きる祖母の姿を見てエムは…

急な休日…泣けるとの評判を聞き、一つ泣きに行きますかとの思いから本作をチョイス…

主人公エムのあまりにも短絡的で打算な行動に、物語に入り込めず…金金金…がずっと続きどうにもねぇ…遺産相続は万国共通という事でしょうか…

特にエモーショナルな出来事がある訳ではなく、余命宣告を受けた祖母の日常が淡々と描かれているのですが、段々小さくなっていく祖母の背中に反比例して、金に振り回される家族の姿が何だか切ない…

タイ語特有のイントネーションが耳に心地良く、ごちゃっとした街並みに美しい田舎の風景と一歩ずつ死へと向かっていく祖母の姿のコントラストが素晴らしい…でも、金金金…が私にはどうも雑音になったようで…エムは祖母と同居し、祖母の姿を見る事で変わったようでいて、さして変わってないようでいて…何だかモヤモヤ感が強い…

最近、めっぽう涙腺が弱くなった私ですが、今回はどうもねぇ…ただ、ラストはイイ…じわっと来ました。

印象深いのは、イイ子のようで実際は随分と計算高い従姉妹のムイを演じた女優さんは、河合優実に激似…タイ映画デビュー？って思ったくらい…

自分よりも家族を思う愛情の深さに、涙があふれて止まらない。

パット・ブーンニティパット監督、プッティポン・アッサラッタナクン、ウサー・セームカム等の共演によるタイ製作のドラマ。
楽して暮らそうとする主人公の青年が、一人暮らしの祖母と出会うことで変わっていく姿を描く。
この日は、実は違う作品を観ようと思っていたところ、Shirorinさんに激推しされたことから、急遽本作品をチョイス。
主人公となるゲーム実況者を目指すエムをアッサラッタナクン、祖母のメンジュをセームカム、エムの母親をサリンラット・トーマスが演じているほか、サンヤー・クナーコン、ポンサトーン・ジョンウィラート、トンタワン・タンティウェーチャクン等が登場。
物語は、草が生い茂る山中にあるお墓で祈りを捧げるメンジュ等の様子でスタートするのだが、それは実は他人のものであり、実際には質素なお墓でしかないというコメディ感抜群のオープニングを見せてくれる。
以降、大学を中退し、ゲーム実況に明け暮れるエムが、祖父を介護していたことから相続で豪邸を手に入れた従妹に触発され、一人暮らしの祖母メンジュの財産を目当てに彼女と同居を始める様が描かれ、何とも軽薄な狙いではあるものの、そこに潜んでいるのは、相続然り、介護然り、病気然りと、お国は関係なく人類の永遠の課題であると言えるものばかり。
そのため、エムの立ち振舞いはブラックコメディ的なもので、時折そのような演出が施されてはいるが、笑うに笑えないシーンも多々あり。
その後は、前述のようなエムと祖母の同居生活を中心に進行、祖母の信頼を得ようと奮闘するエムと、その狙いを手玉に取るかのような行動を見せる祖母とのやりとりは、何とも微笑ましいもの。
中盤以降、祖母に起きた出来事をきっかけとして、エムの考え方が変わっていくこととなる展開は、この手の作品としては王道なのだが、私も含め実際に祖母の存在に触れたことがある方は、随所に琴線に触れてくること間違いなし。
また、冒頭に書いたお墓を筆頭に、街中を走る鉄道、露天が立ち並ぶ路地、街並みに普通に溶け込んでいる橙色の袈裟を纏った僧侶、そして何よりエアコンがなく、湿気を帯びた生ぬるい風が吹き、蚊帳を使う夏の光景はタイの魅力に溢れており、プチ旅行に行った気分になった次第。
クルマ好きの視点からすると、豪邸を売り大金を手に入れた従妹が中盤に乗ってきたのがトヨタのSUVであり、一見するとカローラクロスっぽいのだが、どうにもボディが小さく、フロントマスクも日本では見ないものであったため、何だろうかと疑問に思っていたところ、エンドロールを眺めていたら「New YARiS CROSS」の文字がデカデカと登場、後から調べると、日本で発売されているヤリスクロスとは全くの別モノである海外仕様のヤリスクロスであったことが判明、なかなかカッコよかったのは見逃せないポイント。
そのタイトルでもある祖母との約束はいつなされるのだろうと思っていたら、オープニングのお墓とともに伏線回収され、その鮮やかさに見事胸を熱くさせられることになったとともに、小学生の頃、一日一時間と決められていたファミコンを、両親がいない夏休みの日中に時間関係なくプレイしまくっていた私を咎めることなく、ましてや後から母親に告げ口することもなく、温かい視線で見守っていてくれた祖母を思い出すには充分であった良作。

おばあちゃんが、僕の一番だ。

※本作品を教えて頂いたShirorinさん、ありがとうございます！

最近、「アジアのA24」と呼ばれることが多くなった、映画製作会社があ「GDH」（これは愛称で、正式には「GDH559」）
『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』を製作したことで話題となったタイの映画製作会社で、年間で製作される作品は数本と限定的ながら、一方で、それらの作品群にリソースが注力されるためか、作品のクオリティの高さは圧倒的。昨年公開された作品が、アカデミー賞国際長編映画賞のショートリスト入りを果たし、いよいよ世界からの注目度が高まってきました。

先日、この『おばあちゃんと僕の約束』のパット・ブーンニティパット監督が来日して、京都へ来られた時に、インタビューをする機会をいただきましたが、作品の背景を含めて、詳しく聴きましたので、詳細は記事をどうぞ。

#NewsPicks 記事
映画『おばあちゃんと僕の約束』新鋭パット・ブンニティパット監督ロングインタビュー。作品の着想から、日本映画との繋がり、そして、その興味の先は、伝統の継承へ
https://newspicks.com/news/14377704/

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