僕たちは、少しずつ変わっていくね。

木村聡志監督、脚本、日穏主演による青春群像劇。
高校生・代々木ジョニーが、所属するスカッシュ部に新入部員が加わったことをキッカケに、日常が変化していく姿を描く。
主人公となる代々木ジョニーを日穏、彼女の熱子を松田実桜、幼なじみの神楽を一ノ瀬瑠菜が演じているほか、今森茉耶、西尾希美、加藤綾乃、吉井しえる、高橋璃央等が登場。
物語は、歩くジョニーのドアップの横顔が映し出される中、オープニングクレジットが表示されるのだが、その字体といい、出し方といい、何とも懐かしさを感じさせてくれるもの。
次には、彼女である熱子に対して別れ話を持ちかけるジョニーが描かれるが、この時点で2人の会話の情報量の多さと、わかったようなわからないような内容に、木村監督作品だなと実感することに。
そもそも、ハーフのような名前でありながら、そこには一切触れられず、実はジョニーではなくジョナサンという名前からして、シュールな設定。
以降、スカッシュ部でありながら、スカッシュをしたことのないジョニーが、新入部員であるデコが登場したあたりから、少しづつ日常が変化していく様が中心となり、基本長回し、かつ前述のように情報量多めの会話劇の内容に、あるあると思いながらニヤリとさせられること多々あり。
また、出てくる同級生を筆頭に、女性陣のビジュアルが強めで、こんなアイドルだらけのような高校なんてないぞと思っていたら、本作品はミスマガジン受賞者が出演する映画プロジェクトから生まれた作品で、「ミスマガジン2023」受賞者を揃えていたとのことから、それも納得。
そんな中でも、瑚々、根矢涼香、前田旺志郎、安藤聖、マキタスポーツ等が登場していたのに加え、平井亜門、綱啓永、中島歩がチョイ役としてアクセントになっていたのはよかったところ。
監督作品で以前観た『違う惑星の変な恋人』も同じような作風であり、大人の恋愛模様が綴られていたのに対し、本作品は高校生を主役としているが、作中でもジョニーが熱子から「ちょいちょい出てくる例えがピンとこないからやめて」となじられるように、流石にこんな会話をしている高校生はいないだろうと思ってしまったのが玉に瑕ではあったものの、そのファンタジー寸前の会話劇の面白さは健在であったとともに、綱演じるコンビニ定員とのゼリー選びの不毛な会話が何気にツボった一作。

いい意味でどれも同じだと思います。

脱力系な高校生たちによる、ゆる～い会話劇がメイン。木村監督らしい独特なフィルムに仕上がっていますが、ラストシーンあたりは流石に緩すぎて…睡魔との闘いでした（なんとか負けなかったけどねｗ）。

とにかく「ゆるい」ので、若い演者さんたちもやりやすかったとは思います。主人公の思考回路が読めないのも、木村監督作品に共通している部分。カメラの画角や演出、音の使い方もシンプルなので自分的には好み。ただ…合わない人にはかなり退屈な作品に見えちゃうかな。

　ちょっと変わった男子高校生・代々木ジョニー（日穏）本名ジョナサン代々木は、マイペースな放課後を送っていた。いきなり冒頭からタランティーノの傑作『ジャッキー・ブラウン』のパム・グリア―ばりの代々木ジョニーの登場に度肝抜かれる。映画は開巻早々、気の強い今カノ熱子ちゃん（松田実桜）をうっかり怒らせてしまう。高校生くらいの年代なら男の子の頭にはSEXしかないが、日本史の例えがまたもや秀逸である。こんな可愛い彼女を振っても良いのかと思うが、彼の周りにはシュールかつ意味不明な行動を繰り返すメンバーが集まって来る。スカッシュ部のクセ強メンバーたちと部室で喋ったり、彼は定期的に引きこもり生活中の幼なじみ神楽（一ノ瀬瑠菜）の家に顔を出す。そんななか、スカッシュ部に熱血新人部員デコ（吉井しえる）が入ったことをきっかけに、幽霊部だった部員たちがいきなりスカッシュという競技に目覚める。ワケありで田舎から上京し、近所の古本屋でアルバイトする出雲さん（今森茉耶）と出会う。恋愛に友情に部活に少しずつ変化していくジョニーの日常。そしてついに、スカッシュ部の団体戦の日が迫ってくる。

　木村聡志監督のKCU最新作は今回もすこぶる面白い。私は木村聡志監督がKCUワールドでやりたいのは、マーク・ウェブの『500日のサマー』だと秘かに思っているのだが直接本人には伝え切れていない。もともとミスマガジンの6人を主要キャストに入れてくれと言う依頼だったようだが、一応、今森茉耶をヒロインとしながらも周縁の人物の書き込みと、各人のvs代々木ジョニーとの1対1のシークエンスのやりとりがすこぶる面白く、劇中でおそらく25回は笑った。コンフォート・ゾーンというコミュ障同士の聖域を冒してまで、いや代々木ジョニーは冒しているつもりは微塵もないのだが、互いが互いに安全圏からもう一歩踏み出してしまったことの不幸というか、相手側から見ればもう一歩踏み出せないことの悲劇が単なる青春群像劇でありながら、ひたすら胸に沁みる。願わくば神父さん（高橋璃央）とバタコさん（加藤綾乃）の行方くらいは可視化して欲しかった。本読みは1回だけで、大した演出もしない木村監督が「持田です」という食い気味の応答に明確な指示を出したり、後半の「ひかりのいえ」に自ら好んで幽閉されて行く神楽の描写以降のひたすら余韻、余韻、余韻だらけの不思議な世界に夕方から桃、おそらく日大芸術学部の怠惰な授業からのピンポン連打には心底参ってしまう。ラストの訪問者が誰なのかという問いに対しては誰でもない主人公の妄想と答えるのが最適解なのだろうが、チャイム3回に奇妙な符号を見てしまう自分がいる。