【第97回アカデミー賞　撮影賞他全4部門ノミネート】
『ウィッチ』ロバート・エガース監督作品。ホラー映画にも関わらず批評家賞で健闘、アカデミー賞では4部門でノミネートされた。

サイレント版、ヘルツォーク版に続く三度目の映画化。ニコラス・ホルト、リリー・ローズ・デップ、ビル・スカルスガルド、ウィレム・デフォーなどが出演している。

過去の二度の映画化作品ではエレンはノスフェラトゥに見初められるキャラクターだったが、本作では彼女とノスフェラトゥの間に幼い頃から繋がりがあることが示される。

また、受動的であまり役割のなかったキャラクターにも見せ場が用意されており、現代で映画化する意味を感じる作品になっている。とりわけエレンを預かる友人のフリードリヒの哀しい運命が劇的に描かれている。

エガースならではの研ぎ澄まされたビジュアルが目を惹く。左右対称の画面、ノスフェラトゥの影を上手く使った演出はサイレント版に通じるものがある。

リリー・ローズ・デップは単なる二世女優から実力派に変身、ノスフェラトゥに魅入られる存在として怪演をみせている。助演女優賞入ってもよかったんじゃないかなぁ。

ノスフェラトゥの屋敷、ドイツの退廃的な街並みを再現した美術や衣装が素晴らしい。不気味で美しい画面を見事に作りあげている。

エガースの前作『ノースマン』では合わないアクションをやっていてつまらなかったが、本作で原点回帰したように見える。やっぱりエガースはこういうゴシックホラーがよく似合う。

美しくも哀しい吸血鬼物語を復活させてみせている。全てのキャラクターに役割が与えられ、改変されているのも見事。ゴシックホラーに似合う役者陣も好演、やはりデフォーはこういう狂った役をやらせると光る。

ノスフェラトゥのリメイクとして大満足の一作、エガースの本領発揮という感じで大いに楽しめた作品だった。スクリーンの大画面でみるときっとまた違う発見があるはずなので再見したい。

• #第97回アカデミー賞

100年以上前の吸血鬼映画の原典、大筋のプロットはそのままに、エガース色全開の美意識とリスペクトが捧げられた、美しくも儚く、哀しいに余りある超常ゴシックホラー。

元が1時間強のサイレント映画なので流石に引き延ばし感は強いが、それでも構図やカメラワーク、色調の完整度には、何度も息を呑む。原典の再解釈というより再構築と言うべき大胆な取捨選択も白眉。元のパンデミックの側面やオルロックのグダグダ移動シーン等は抑えられ、女性消費に対する悲劇的な描写が主だった軸になっていて、寓話としても整理されている。

エガース映画の映像レベル、作品を追うごとにどんどん洗練されていて強烈だな。ウェス・アンダーソンよろしく、大成の境地に近づいてる。

• #どど丼賞レースマラソン2025

試写