韓国の青春映画ですが、それ以上に社会派な作品です。
同性愛を描くと自然と社会派なテーマも入り込みますが、本作は多少詰め込み過ぎなところがありながら、上質な映画に仕上がっています。
1999年を舞台に、世紀末で世界が終わるかもしれない、時にはそれを望んでいるようにさえ思えてくるほど、差別的な韓国社会が描かれます。
出てくる成人男性はほぼクソ野郎と思っていいぐらいの女性差別主義者で、この映画も青春映画的な愛情のハードルが『トガニ』や『薄氷の告発』のようにすらみえてくる凄まじい映画ですね。

一人の女子高生が同性愛に目覚め逞しく成長していく物語。邦題から危惧されたような、宗教にどっぷり浸かった女性信者同士の恋愛ものではなかった。
女性同性愛者にとって친구(友だち)と여자친구(ガールフレンド)の違いは何だろう。愛情と友情を天秤に掛けることなく、そのどちらにも全身全霊を傾けていく少女の姿はとても清々しい。

護身術に、という母親の思いつきでテコンドーを習い始めたジュヨン(パク・スヨン)なのに、初めはおっとりしていて心も決して強い方だとは言えない。一方のイェジ(イ・ユミ)は訳ありで恵まれぬ境遇を強く生きていてサバサバした性格。対照的な2人が惹かれ合う様子もすんなり受け入れられた。
途中からジュヨンと親友のソンヒ(シン・ギファン)が所属するテコンドー・チームの下劣なコーチを中心にして巻き起こるドロドロしたバイオレンス・サスペンスの様相を呈していく。でも最後はしっかり女性同士の愛の物語で締め括られていて見事だった。愛の力がジュヨンをあんなにも逞しくしていくとは…。そしてイェジとその保護者の背景を窺わせるエピソードをさり気なく仕込んでくる辺り、相変わらず人間ドラマを主軸にした韓国映画の実力は素晴らしい。

一番、過酷とも思える状況を辛うじて生きているソンヒを演じたシン・ギファンは初見。憂いを帯びた繊細な演技に強く惹かれた。このソンヒを主人公にしたサスペンスでも充分アリだと思う。ジュヨンの友だちである少年ミヌを演じたキム・ヒョンモクも初見。彼のコメディ演技にも感心して見ていた。

ゆで卵と飲み物を手にフロアで寛ぎながら入る韓国流サウナや、蜂の巣をそのまま漬けた蜂蜜焼酎(？)を飲む打ち解けた姿が何だかとても気持ちよくて気に入ってしまった。

字幕翻訳は石井絹香氏。

ポスターからは想像もつかない、思っていた内容と全く違うストーリーでした(ソウルメイトに近いのかなと思ってました)。こんなに辛くて切ない気持ちなったのは久しぶりで、近年乾燥しまくりの瞳を潤してくれました。やはり韓国映画は凄いです。