ルルド

スペイン内戦で活躍した元リーダーと彼を追う警察署長の攻防を描く

3人の関係性
なかなか見応えありました

会話

ラストはどうなるか

雪山
白黒だけど景色が良い

豪華な俳優陣でした

ジンネマン監督のファンとして知られる作家の逢坂豪が同監督ベスト３として「山河遥かなり」（1947）「真昼の決闘」（1952）と共に挙げた一本。かつてスペイン内戦で闘ったゲリラ闘士の生き様を描く。原作は監督としても有名なエメリック・プレスバーガーの同名小説（1961）。原題は「Behold a Pale Horse（青ざめた馬を見よ）」。音楽モーリス・ジャール。

1939年、スペイン内戦がファシスト・フランコ派の勝利に終わり人民戦線政府は崩壊、多くのスペイン人がピレネー山脈を越えてフランス側に逃れた。あれから20年、かつてのゲリラの英雄マヌエル（グレゴリー・ペック）はピレネーの麓の村に身を潜め続け、彼の故郷の警察署長（アンソニー・クイン）は執念深くいまだにマニエルを追い続けていた。ある日、スペインからひとりの少年がマニエルを訪ねてきた。少年の父もゲリラの闘士で、仲間のマヌエルの所在を追求する警察署長の激しい尋問により殺された。少年は父の仇を討ってほしいと願うがマヌエルはこれを断る。ちょうどその頃、故郷にいるマニエルの母が危篤になり、警察署長はマニエルをおびき寄せる好機と考える。母親はフランスの巡礼地ルルドに出かける神父（オマー・シャリフ）に「決して帰って来てはならない」と息子への遺言を託すが。。。

戦後も延々とファシストが支配し続けていたスペインの内情を背景に、骨太な人間ドラマをじっくりと描いていた。潜伏を続ける主人公の心情を反映するように、中盤過ぎまで閉塞的で行き詰ったムードが続く。神父との一夜の会話により何らかの覚悟を決めた主人公が、朝方の街に投げたボールが転がっていくシーンが印象的。そして敵地に向かってからはクライマックスの銃撃戦。ラストは深さを感じるもので、現在のところ解釈しきれてはいないのだが、主人公が彼の人生にとって最も重要なものを選択したということは解る。その生き様は心に残り、今後も繰り返し考察することになりそうだ。

原題は、聖書のヨハネの黙示録、第6章第8節から。
「青ざめた馬を見よ。これに乗るものの名は死。黄泉がこれに従う」
原作題＝邦題は17世紀の英国の詩人リチャード・ブレイスウェイトの詩から。
「私は清教徒が月曜日に猫を吊しているのを見た。日曜日に鼠を殺したからだ」
いずれもキリスト教にまつわるものであり、本作のラストの意味もそこにヒントがあるのだと思う。

神父を演じたオマー・シャリフは、本作の前後の「アラビアのロレンス」（1962）や「ドクトル・ジバゴ」（1965）よりもずっと適役だったと思う。本人は本作について不評コメントを残している。

スペイン内乱に敗れ、故郷を離れフランスに逃れた人民軍リーダー、グレゴリー・ペック。内乱後もゲリラとして活動する彼を狙う警察署長、アンソニー・クインは、彼の母親の危篤を利用し、誘き出そうと罠をかける。内乱後、20年を経て老いた彼には、神も、金も、伴侶もなく、勇気すら、無くなりかけていた。という渋い内容。一人の子供が、狂言回しとして彼の運命を誘う。また彼を助けようとする、神父にオマー・シャリフ。聖書から引用された題名通り、彼らを天使としてみることも、できる。時として、男は、無謀だとしてもやらなければならない事がある。神に、背いても。またそれが、神に殉じていようとも。ペック・クイン・シャリフと3人の豪華共演。真昼の決闘でも描かれた老い・人の人生の無情。フレッド・ジンネマンが再び描く佳作。光と影が美しく、撮影も見事。ﾆｭｰｼﾈﾏ以前の作品だが、深い味わいとともに、先取りしてます。ピレネーをいく、ペックがかなりかっこい。昭和残侠伝みたい。