元セックス・ピストルズの初代ベーシスト、グレン・マトロックの視点から描いたドキュメンタリー映画。過去にジュリアン・テンプル監督の『NO FUTURE A SEX PISTOLS FILM』(原題:The Filth and the Fury/2000年)を劇場で観たときは、それなりにパンクスらしき人種もいたけど。しかし、このドキュメンタリー自体が少々毛色の違う作品なのか? 私が見る限り、イブニング(早朝)パンクスは、どこの席にもいなかった。サービスデーなので、もう少し入っていると予想していたが、客席は3分の2ほど。客は年齢不詳の人が多かった。入場者にはポストカードが配布。
【↓以下ネタバレがございます↓】
『セックス・ピストルズ 破壊の設計図』(原題:I Was a Teenage Sex Pistol/2025年)は、初代ベーシストのグレン・マトロックの視点で、バンドの結成から成功、崩壊までを語るドキュメンタリーである。1970年代後半のロンドンに現れ、音楽のみならずファッションや若者文化まで揺さぶったバンドの姿を、当時の映像と関係者の証言で追っていく。マルコム・マクラーレンやヴィヴィアン・ウエストウッドにも触れながら、パンクの象徴となったバンドの実像と、神話が生まれた過程を浮かび上がらせる。
本編を観る前に、ピストルズの海賊版『SPUNK』(1977年)と、マトロックが脱退後に結成したリッチ・キッズ(Rich Kids)の『Ghosts Of Princes In Towers』(邦題:王子の幻影/1978年)を律儀に聴き直してから劇場に向かった。あらためてリッチ・キッズを聴くと、バズコックスを思わせるメロディアスでキャッチーな曲が並んでいて、のちの“パワーポップ”の時代を先取りしていたように感じる。短命に終わったが、過小評価されているバンドではないか。
マトロックは初期のピストルズで「アナーキー・イン・ザ・U.K.(Anarchy in the U.K.)」や「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン(God Save the Queen)」の原曲への関わり、過去のピストルズを中心にしたドキュメンタリー映画『D.O.A.』(1980年)にもリッチ・キッズとして登場し、「プリティ・ヴェカント(Pretty Vacant)」ではベースを演奏しながら歌っていたので、音楽面で主導権を握っていたのは分かる。ただ個人的には、マトロック脱退後に生まれた「さらばベルリンの陽(Holidays in the Sun)」と「ボディーズ(Bodies)」の方が疾走感があり、ジョーンズ色の強い曲を推している。とはいえ、マトロック時代の曲だけを通して聴くと、他のパンクバンドとは一線を画した独特のグルーヴ感があることは認めざるを得ない。
しかし、バンドという集団は、音楽を愛し、音楽に真剣に向き合い、音楽とともに生きるような人物がいなければ成り立たない。そして、セックス・ピストルズにおいてその土台を担ったひとりこそが、グレン・マトロックだった。スタジオアルバムをわずか1枚(『Never Mind the Bollocks, Here's the Sex Pistols』)しか残さずに伝説となったこのバンドにとって、初代ベーシストとして楽曲制作にも大きく貢献したグレンは、欠かすことのできない重要なピースであった。