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『セックス・ピストルズ 破壊の設計図』に投稿された感想・評価

セックス・ピストルズを語るとき、真っ先に挙がるのはジョニー・ロットンやシド・ヴィシャスの強烈なイメージだろう。フロントマンとして圧倒的な存在感を放ったジョニーはもちろん、パンクというジャンルが語りの中心に据えられる以上、破滅的な生き方を貫いたシドが伝説として語り継がれていくのも、無理からぬことである。

しかし、バンドという集団は、音楽を愛し、音楽に真剣に向き合い、音楽とともに生きるような人物がいなければ成り立たない。そして、セックス・ピストルズにおいてその土台を担ったひとりこそが、グレン・マトロックだった。スタジオアルバムをわずか1枚(『Never Mind the Bollocks, Here's the Sex Pistols』)しか残さずに伝説となったこのバンドにとって、初代ベーシストとして楽曲制作にも大きく貢献したグレンは、欠かすことのできない重要なピースであった。

成功への道半ばでグループを去った彼自身が証言者として語り、さらにプロデュースも手がけることで、よく知られたバンド史を別の角度から捉え直し、再構成してみせた本作は、非常に貴重なドキュメンタリーといえる。

自分の求める音楽を追求したいという思いや、メンバー選出に関するわだかまりがあったとしても、自らが去った後に伝説の域にまで達したバンドに対して、何の感情も抱かずにいられるわけではない。グレン・マトロックの胸の内には、言葉では容易に表現しがたい複雑な思いが、今なお残り続けているように見える。本作は、そうした感情がひとつの映像作品として世に送り出されることによって、ある程度の昇華を果たしているのではないか。そう感じさせる1作でもある。


粗削りなサウンド、挑発的な言動、そして破れた服や安全ピンを用いたファッション。セックス・ピストルズは、後世のパンク文化を決定づけた存在であり、反逆と破壊の申し子として広くイメージされてきた。一方で、その背景にはマネージャーのマルコム・マクラレンやデザイナーのヴィヴィアン・ウエストウッドといった人物の存在があり、バンドの成功は、さまざまな才能がその瞬間に交わったことで生まれた化学反応だったともいえる。

本作は、自由と反抗の象徴となったバンドと、彼らを世に送り出したショービジネスとの関係にも目を向け、表現と商業主義が交錯する舞台裏を掘り下げていく。彼らが伝説のバンドであることに疑いの余地はない。しかし、彼らもまた一人ひとりの人間であり、その活動はショービジネスという仕事の一環でもあった。本作は、彼らを神話として仰々しく祭り上げるのではなく、比較的客観的な、地に足のついた外側の視点から見つめている。だからこそ、当時の彼らをとりまくリアルな空気感が浮かび上がってくるのだ。


本作には、スティーヴ・ジョーンズやポール・クックをはじめ、デボラ・ハリー、ビリー・アイドル、ウェイン・クレイマーら、パンク/ロック史をその身で知るミュージシャンたちが顔をそろえる。フェイセズやデヴィッド・ボウイの名前が語られる一方で、オアシスのノエル・ギャラガーも登場し、セックス・ピストルズへの賛辞を送っている。当時のライブ映像やアーカイブ資料を織り交ぜながら、セックス・ピストルズのみならず、その周囲で急速に拡大していった1970年代のパンクムーブメントそのものを振り返ることができる構成も、本作の大きな見どころだ。

熱狂を少し外側から落ち着いて見つめる姿勢はここにも貫かれており、映像と関係者の証言を通じて、移りゆく時代の1ページへと観る者を誘う。あの時代の空気をそのまま復元してくれるかのような感覚で、当時を肌で感じ取ることができる。
本作は、セックス・ピストルズの創設メンバーであるグレン・マトロックの回想録を原作にした音楽ドキュメンタリー。セックス・ピストルズの72年から75年の結成、成功、そして78年の破壊に向かう流れを、当時のロンドンの社会、そしてイギリスのパンクロック史を交えながら、貴重なアーカイブにより構成。シド・ヴィシャスの姿も見られる。作品の流れは時系列的に構成。グレン・マトロックのパフォーマンスを交えた語りを中心に、関係者へのインタビューもマトロックや監督の熱意の成果であろう。
2.5
セックス・ピストルズの初代ベーシスト、グレン・マトロックにフィーチャーしたドキュメンタリー。
ファーストにしてラストアルバムとなった『勝手にしやがれ‼』の大半の曲を作ったにもかかわらず、バンド内のゴタゴタやマネージメント戦略によって脱退“させられた”マトロック。そうなった経緯や、個性強すぎなメンバーへの複雑な思いは自叙伝等で語ってきたが、本作でもその心情を吐露している。
故シド・ヴィシャス以外のメンバーの証言も含まれているも、マトロックも含めて総じて「黒歴史にしているわけではないが、過去を振り返ってもしょうがない」的ニュアンスの受け答え。とりわけギタリストのスティーヴ・ジョーンズの、「もう何百回も喋ってきてるから…」は、偽らざる本音だろう。
活動期間こそ短かったが、ビリー・アイドルは「ファーストアルバムだけで十分だった」と語り、ノエル・ギャラガーは「俺が作ってきたどのアルバムよりも優れている」と、その影響力を端的に表す。マトロック自身も、未だにピストルズに縛られていると明かす。そんな「普通のミュージシャンになりかった」彼は、70近い年齢になった現在、その願望を叶えている。
ジョニー・ロットンやヴィシャスみたく破天荒インパクトを残して伝説になるのもアリかもしれないが、マトロックの「普通が一番」をロックとする生き方だってイイじゃない。