若い頃からレクター博士の変態的狂気の片鱗が出てるアンソニー・ホプキンスが気味の悪い人形の腹話術師をやっていることで恐怖度が何倍にもなっている。情緒不安定な腹話術師のコーキーの異様な感じが癖になってしまう。

監督は「ジュラシック・パーク」にも出演していたリチャード・アッテンボロー。

そして、アンソニー・ホプキンス。44年前の40歳。まだ若いけど、演技力はバケモノ級に上手い。

売れないカード手品師のコーキー（アンソニー・ホプキンス）は、ファッツという人形を使った腹話術で人気を博し、一躍有名になるが、テレビショーの契約の目前で彼は姿を消してしまう—— 。

コーキーは故郷に戻り、かつて学生時代の想い人と再会を果たす。しかし相手には既に夫がいて…。

アンソニー・ホプキンスの見事な腹話術にビックリ。

口が…動いて…いないだと…！？

引っ込み思案のコーキーとは対照的に、歯に衣着せぬ物言いで、卑猥な言葉も頻発するファッツ。一人二役で魅せる会話の応酬がお見事である。

普通にそこに置かれているだけで、怖いんだけど。ファッツがよ。

腹話術師であるコーキーがファッツを操っていた筈が、いつしか立場が逆転し、コーキーがファッツに操られていく過程が素晴らしい。

マジックは手際が良いのに、殺しの手際は良くないコーキー。

「5分黙っておく」事も出来ない、病的なまでの喋り。アンソニー・ホプキンスの怪演がお見事。

コーキーとファッツの服装が同じ終盤は、
2人が一心同体となったメタファー。人形に心が侵されていく、哀しきマジシャンの末路とは—— ？

エンドロールで、
FATS ：ANTHONY HOPKINS
と表記されるだけあって、アンソニー・ホプキンスの独壇場である。

• #2022akirunaway

記録用
リチャード・アッテンボロー監督。

監督は今ちょうど公開中のジュラシック・パークシリーズの無印と「ロストワールド」に登場するジュラシックパークを創設したCEOの老人であるジョン・ハモンド役で有名な方だ。

脚本は監督と「遠すぎた橋」でコンビを組んだウィリアム・ゴールドマン。
今回の企画自体「明日に向かって撃て」や「大統領の陰謀」でブイブイいわせていたゴールマンの小説を原作に進んでいた。

そして主演がレクター博士でお馴染みのアンソニー・ホプキンス。
売れない手品師が腹話術を使用し瞬く間に有名になり女性と恋が芽生えてくるが日に日に腹話術人形で一人で会話をする時間が増えていき、、、。

この作品自体はシンプルなスリラーなのだが原作を確認してみると大きな叙述トリックや信用できない語り手なども使用し小説だからこそできるミステリーに仕上げているがその辺りは映像化にするにあたり大きく変更が加えられていて魅力は大きく下がっているかもしれない。

精神分裂と内面の葛藤をメタファーとして主人公と人形の関係を明示することは出来ているが後は原作の最低限のところをダイジェストで辿るようなシンプルさになっているのは好みが分かれそう。

しかしシンプルになっているとはいえ人形ホラー、サスペンスとしては充分楽しめることができ、何より良い意味で原作との相違がアンソニー・ホプキンスの怪演。
というか彼の演技の凄まじさに全て支えられているのと言って過言でない。

正常な状態から不安定になっていき精神に亀裂が生じてくる状態の演技はとてつもない。
壊れてからの演技も圧巻だが私としてはその壊れ始めの演技が特に印象に残った。
流石に当たりのシーンは撮影中もアンソニーホプキンスは精神的に追い込まれ不安定になっていたそうですが。

そりゃあこの怪演であればエレファントマンやレクター博士で呼ばれますね。