橋本忍映画祭②

東京近郊のドヤ街。立ち退かせてアパート建築を進める暴力団。そこに診療所を構える老医師と引っ越してきた若い医師。

所謂、復讐劇だけど、やはりこの脚本家がからむと社会派ミステリー風になる。社会悪と虐げられる人々。

前半はありきたりな展開ながら、最後は、おお！という幕切れが中々凝ってる。

暴力団の親分を演じた滝沢修が、いやらしさ満点^_^今なら韓国俳優にいそうなタイプ。

南田洋子も吉行和子も、おばさんになってからしか知らないんだけど、若くて可愛い^_^

タイトルからもなんとなく匂ってくる社会派な作品。戦後のドサクサで不法に住み出した住人とその土地を狙う巨悪。わかりやすい構図の中に結構面白いのが詰まってる。
ドヤ街を浮遊するかのように漂うカメラや「味の素」の工場がうっすら見える土手の映像の面白さ。
宇野重吉さんの善き町医者と滝沢修さんのヤクザ上がりの市議会議員の配役。滝沢さんの嫌な奴全開の芝居は強烈すぎてアクセントになりすぎ。
主人公なにしてかなと、忘れそうになるゆったりした回想形式はじわじわ事の真相に迫っていく。
からの「えっ。えっ！えっ！！」のコント寸前のどんでん返し過多が凄すぎる。
事件の全貌を新聞は興味本位でしか書き立てないのも強烈なパンチ効きすぎ。
インディーズぽいやりたいことやる的映画ながら、当初は石原裕次郎主演でやろうとしてのはびっくり。

橋本忍、中平康脚色監督作品、法の裏をかく暴力組織と戦う市民たちの物語。
葉山良二、吉行和子、南田洋子、宇野重吉他出演。
組の一員を演じる名脇役の榎木兵衛さんの登場がとても懐かしかった。
わたしの若い頃、大阪の新歌舞伎座で杉良太郎さんの舞台で上手から下手へ歩くだけの農民の役の演技に対して、既に中日頃に「今日ようやく初日が出たよ！」と褒めて下さったことを思い出しました。ただ歩くだけではなく、農民として如何に通り過ぎる役になりきるかを痛感、演技の難しさを改めて教えて頂いた一言でした。