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『映画監督って何だ!』に投稿された感想・評価

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同一脚本を複数の監督が演出する試み自体は、「監督によって映画の表情が変わる」という点を見せるための典型的な手法だが、脚本の枠をあえて踏み越えたような差異を見せると、結果として「監督の権利を示すために脚本家の権利を軽んじている」ように見えてしまう。

総合芸術でありながら脚本家やプロデューサー、その他技術者の視点を欠いたまま「監督=唯一の創造主」と断定してしまう姿勢が、あまりにも幼稚である。

「監督の自由=他者の領分の侵食」という極めて歪んだプロパガンダ映画であり、監督による監督のための一方的な自己正当化かつ独善的な作品である。他者への敬意を欠いた、監督至上主義の暴走だ。
日本映画監督協会が創立70周年記念事業として製作。監督90名が俳優として、60名がスタッフとして参加。「映画作品の著作権」が映画監督ではなく映画会社に属する現状に問題提起する一本。監督脚本;伊藤俊也。プロデューサー:高橋伴明、林海象、山本起也。

錚々たる顔ぶれの監督たちが役者またはインタビューで登場する。時代劇パートでは小栗康平演ずる侍が若松孝二演ずる悪役を踏みつける。映画史パートで文化庁次官を演じたガイラこと小水一男の長尺台詞は見事。映画と著作権について楽しく学ぶことが出来た。

個人的にはDVDに収録されていた「映画監督って何だ!メイキング」が興味深かった。監督たちの素顔が垣間見れる貴重な映像であるが、それ以上に重要なのは同作が佐藤真監督の“遺作”であると共に、自死に至る原因であった事。

2008年に開かれたシシンポジウム「佐藤真の映像民俗学の世界を見る」のパンフレットに経緯が書かれていたので引用しておく。

「佐藤さんはメイキング編の監督を担当、この著作権要求映画の著作権は監督伊藤俊也と
製作者監督協会と、そのどっちが持つのか、スリリングで悩ましい行方に注目しつつ問題
意識を孕んだ意欲的なメイキング映画を目指したのでしたが、それが原因で協会幹部と衝
突する事態となったのです。」
「故人は私への手紙に、忿懣をこめて次のように書きました。亡くなる半年ほど前です。
自分の作品は、私への人格否定発言により暴力的に押し切られて改変され、この著作権
侵害が引き金になって、自分は強度の鬱病に罹ってしまった。」
「信頼していた監督協会幹部に著作人格権を侵害され裏切られた佐藤さんの傷口
は大きく、その病状は彼の期待に反して長引き、半年の間に四度の精神病棟入りを繰り返
す状況となってゆき、結局、彼は果せぬ想いを遺しつつ死を選ぶ結果となったのでした。」

この件に関しては林海象監督が研究本で詳しく書いていた。同シンポジウムでは改変前の佐藤監督ディレクターズカット版が上映されたが、現在そのビデオは行方不明になっているとのこと。
教育番組的に分かりやすく、映画の権利問題の歴史が分かる一本。
監督がここまで蔑ろにされてるのは、知らなかった。

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