主演ギトリ、共演レーミュというマックス・ランデーとジャック・タチの間に介在するフランス映画史における数少ない喜劇生産者二人がタッグを組んだ作品であるが、ここは殆どギトリの独壇場。究極の一人芝居。
映像を見せずひたすらモノローグで妄想実況するギトリのエネルギーはちょっと狂気的だが、これを映像付きで丸々一本撮ると『とらんぷ譚』になる。しかしミシェル・シモンの存在感は凄いな。

登場人物が三人の軽妙ミニマムな不倫室内劇。台詞のほとんどがギトリの早口ひとり芝居で構成されていて、考えてること全部口に出ちゃうの？ってぐらいとにかく凄い勢いで喋りまくる。記憶力と頭の回転どうなってんだよ。まさに「撮影された演劇」であり、字幕制限を考えればフランス語を聞き取れでもしない限り完璧に理解することは不可能であろうものの、リズムというか、言葉の音楽的な力には強く引き込まれた。あと男性用パジャマ着てる美人妻が最強。

アンスティチュ・フランセ東京―エスパス・イマージュでのサッシャ・ギトリ特集にて。

死ぬほど笑わせてもらった。敢えて言うがホークスの『赤ちゃん教育』かマッケリー〜マルクス兄弟の『我輩はカモである』並の傑作。電話のシーンはやはりロッセリーニの『アモーレ』での『人間の声』(アンナ・マニャーニ)を思い出すよね。

• #2016藤原