血煙の中、鮮やかに舞う
仕込み杖の白刃！
官憲の理不尽なる悪に
怒りの剣を抜くは
艶やかなる修羅の姫！
シリーズ第二弾！　　

「修羅雪姫　怨み恋歌」

梶芽衣子様の代表作であり、タランティーノも絶賛した修羅雪姫シリーズの第二弾…。っておい！第一弾はどうした？と聞かれると…はい、私の愛用してるTSUTAYAには何故かこっちしか無かったんです。まぁ中々レアですからね、仕方ないか、こっちだけでもと。見てみましたら…なんか全く繋がりなさそうで…。

修羅雪姫こと鹿島雪（梶芽衣子）は追われていた。殺人犯として官憲に追い詰められた雪はある男（原田芳雄）に一度は救われたが、海辺に向かった時、大量の取り手に囲まれ、疲れ果てた彼女は遂に捕まる。死刑宣告され、刑場に向かうが、謎のおかめ軍団に救われた。それは秘密警察であり、菊井長官（岸田森）は修羅雪姫を粛清用の刺客として使おうとしていたのだ。雪は無政府主義者徳永乱水（伊丹十三）の暗殺と重要書類の奪取を命令され、潜入する。

仇討ちと言う前作のテーマは消え、今作は…藤田敏八らしさなのか…どうも政治色が強い。また前作から同じなのは…日活、東映、東宝のゴチャ混ぜ感。監督や原田芳雄は日活、東映の悪役と梶芽衣子、そしてストーリーとグロ表現、東宝は岸田森か、撮影の色がらしさか。なんか頭がグラグラしてくる（笑）

もう岸田森率いる秘密特高警察部隊が出てきた瞬間から頭がおかしくなる。軍服マントにオカメの仮面が馬に乗って、修羅雪姫を護送する馬車を襲う絵面の凄さ。岸田森がいる紅い壁の部屋…ドラキュラ住んでそうと思ったら白塗り軍服の岸田森が…あまりのビジュアルに笑ってしまう…。更に聾唖で狂ってそうな南原宏治と…最早怪奇大作戦か、と思いました。　

東映の女囚さそりに負けまいとする様にグロさ、強烈さに走りまくる怪作ですよ。血しぶき舞い腕はぶっ飛ぶし、特高警察はめちゃくちゃリンチするし、トドメにはペスト菌打つし…その伊丹十三のビジュアルが…グロ過ぎて。

修羅雪姫自体が話の真ん中にはおらず、虐げられた民、無政府主義者たちと特高警察、政治屋の対決に巻き込まれ、狙った者に賛同し、再び寝返るストーリー。怨み恋歌の恋歌は乱水の弟として登場する原田芳雄にか…。あまり恋みたいな表現はないかな…。故に今ひとつかも、余り修羅雪の感情が動くシーンがないのかなと。アクション面では梶芽衣子さんの殺陣は前半は疲れ果てている設定でよろけながらの演技。ラストは正に見事な刀さばきを見せます。

殺陣シーンは長回しが多く、階段を使い、手持ちカメラで梶芽衣子さんと共に歩き撮影しているシーンは中々の迫力。東映のカット割りされた様式美の様な撮影に対抗していたのかとも思えます。

悪の秘密警察に戦いを挑み、散っていく反政府主義者たち…それに加勢する美しき殺し屋と言う話なんですが、あまりにも個性的な皆さんばかりで、カルトっぽい部分も目立つので…本筋がわからなくなりそうでしたよ…。岸田森が強烈過ぎて…ドラキュラが見たくなりました。

• #狂乱の70年代

【寸評】
前作の"復讐譚"とは打って変わり、本作では明治後半の社会情勢を背景に、複雑な群像劇を描いた作品となっている。
「雪」のドラマは前作で終了しているので、”社会の不正に立ち向かう狂気の女”と変化するのはアリだと思うが、どうしても物語の重心が拡散してしまうので、「雪」の存在が希薄になってしまっている。
こればかりは仕方ない。
変わりに他のキャラが前作よりも濃く、特に秘密警察長官を演じる「岸田森」は素晴らしく徹底的な悪を演じ、ラストの断末魔は目を見張るものがある。
まあ、こういうものあって「雪」の存在感は更に希薄なものになるのだが・・・。
セットの作り込みもよく、バイオレンス描写もある意味前作よりも凄まじいことになっている。

基本的には前作同様に良作だと思う。
ただやはり前作で「雪」が仇の子供から刺されたにも関わらず、何事もないように生きているのは、どうにも解せない。
「雪」が生き残ったということは、前作のテーマでもあった“無限連鎖する恨み”がどうしても薄まってしまい、同時に前作の質が下がってしまう。
個人的には前作品の質を下げるのなら、続編を作るべきではないと思っているので、せめて

・あの状態からどうやって助かったのか？

・刺されて助かった後の心境

を冒頭辺りで描写して欲しかった。
とはいえ、本作は作品のデキ非常によく、シリーズ化しないのが惜しいレベルの良作と仕上がっているので、何とも複雑な気持ちである。

前作で修羅雪姫の復讐も遂行したし、修羅雪姫・作り手共に縛りが無くなったんで反体制映画でもやりますか!ってな内容。

修羅雪姫自体のキャラを活かした面白みは薄めだが、時代を変えよう、そんなこと知ったこっちゃねぇと様々な思いが入り乱れる群像劇のようなごった煮感。その具材が原田芳雄、伊丹十三、吉行和子、岸田森の最高級なもんだから不味いわけがない。ある意味パキさんらしい映画かも。

着物から覗く太ももとかインテリの変態夜の営みとか微エロ漂うのもよい。
このシリーズはアクションを楽しむというより名カメラマンの撮影を楽しむシリーズでもある。前作の見どころの田村正毅さんのインスタ映えする決めカットは少ないが鈴木達夫さんの手持ちカメラが冒頭から繰り出されていてカッコええーしかない。
最後の決闘はなぜか「修羅雪」featuring「竜馬暗殺」「浪人街」に見えて楽しい。

相変わらずCriterion の画質は最高すぎて、引きの画で梶芽衣子さんの殺陣の代役がブサイクと判明したり、血しぶきあげる装置が地面に埋められているのがもろバレするぐらい高画質。
特典インタビューの脚本・長田さんの「脚本としての完成度は一作目。藤田敏八映画としての完成度は二作目。」は納得。

• #Criterion