はじめての梶芽衣子主演映画でした。ちょっとアクションがしょぼいところがありましたが、存在感、激しい戦闘シーンと血潮、音楽どれも最高でした。これは外国人には衝撃的な構成かもしれません。幼少時代の女の子も迫真の演技で見事です。

【寸評】
「クエンティン・タランティーノ」監督の『キル・ビル』のモチーフ…というよりほぼパクリ元となった作品。
明治初期という激動の時代を背景に、「宿命」と「恨み」という人間の原初的感情を、血まみれの殺陣と鮮烈な映像美で描いている。
現代上映したら間違いなく問題になるであろう、9歳の女の子を全裸にしたり、池に落としたり、女の子を樽に詰めて坂から転がしその転がってる樽を刀で真っ二つにしたりなど、「戸塚ヨットスクール」の校長もビビるような超スパルタ描写もある。
正直、これで強くなるとは思えないのだが・・・。


【演出】
本作は、まるで劇画の世界をそのまま実写にしたかのような様式美となっている。
特に印象的なのが“白無垢のような着物に飛び散る血”であり、その「雪」が着る真っ白な着物と鮮血の対比、そして静寂のあとのバイオレンス描写は、観るものの感情をえぐらずにはいられない。
また、「雪」に惨殺された相手の出血量は過剰ではあるものの、不思議とスプラッター的な不快感は感じず、むしろ美しさすら感じられる。


【演技】
主人公「雪」を演じた「梶芽衣子」。
本作をここまで素晴らしい作品とした最大の貢献者である。
もはや説明を超えた迫力で演技をしており、クールでありながら情念に満ちた眼差し、そして憎しみを体現した鋭い眼光。
「雪」はあまり多くを語るキャラクターではないが、剣を振るうたびに彼女の憎しみや怒り、そして悲しみと少女のような脆さが、嫌と言うほど画面越しから伝わってくる。
これら悲しみと脆さがナチュラルに表現出来ているからこそ、「雪」は単なる殺人者ではなく、復讐しか知らない悲しき女として視聴者の胸に刺さるのではないだろうか？


【脚本】
本作は、親の仇を子が討つという復讐譚となっているが、ただの復讐譚では終わらない。
”親の恨み”といった宿命として背負わされた者の哀しき運命の物語である。

物語の途中で「雪」は唯一の救いとも言える「竜嶺」という男と出逢うのだが、その男の正体がなかなか皮肉めいていい。
ネタバレになるので正体は明かさないが、この運命的な出逢いはなかなかに衝撃的である。
そして、ラストの更なる衝撃の結末。
復讐は、血と喪失、果てしなき哀しみであり、その先にあるのは“無限連鎖する恨み”だ。
これを視覚的、心理的に視聴者に叩きつける。
そういった素晴らしい脚本だと思う。

まぁ、いくつか違和感を覚える部分はあり、特に、「道海和尚」（雪の育て親）が何でここまで「雪」に協力的で復讐に手を貸すのか？といったのが良く分からない。
過去に「雪」の母親と何かしら関係があったのか？
よく分からないが、何も関係がないのに赤子をあそこまでの殺人マシーンに育てる必要性がどこにあるのだろうか？とどうしても疑問に思ってしまう。
もしかしたら原作には「雪」が生まれてから、「道海和尚」に預けられるまでの描写があったのかもしれないが、どちらにしてもそこは描いて欲しかったかな。

血みどろの修羅雪が、腹に刺さったドスを抱えたまま、真っ白に染まった雪の鹿鳴館から、ふらふらと通りに出てくる。そこもまた一面の雪。真っ白の着物には夥しい血糊。
残された力で、刺さったドスを抜く。
と、同時に流れる主題歌。
♪
死んでいた朝に
とむらいの雪が降る
はぐれ犬の遠吠え
下駄の音きしむ♪

梶芽衣子の、ドスが効いていながら澄み切った声がきっと心を打つ。

上村一夫の叙情の世界。
実写で描くのはこれが限界だろう。藤田監督は梶芽衣子という逸材の見事な起用で、この難題に果敢に挑んでいる。

絶頂期の梶芽衣子、どのカットも完璧に美しい。独特の色彩、艶やかな着物姿が、血飛沫とドロドロの復讐劇の中で一人際立っている。

必見。

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