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『婦系図(おんなけいず) 湯島の白梅』に投稿された感想・評価

mingo
3.8
婦系図ほぼコンプに向かってる。三隅版も良いが、マキノ版のエモさがぶっちぎってるか。身分の違う男女が知り合い、第三者の手によって引き裂かれるのはよくあるが、それが本作では森雅之だから、感慨深い。そして山本富士子があまりに美しすぎて配役が適任すぎるし鶴田浩二も意外に悪くない、と考えるうちにいつものように泉鏡花の世界観に引き込まれてるから衣笠の演出のうまさだろうか。その他杉村春子や加東大介といった豪華俳優陣の所作も見逃せない。
泉鏡花原作のものを衣笠貞之助監督が映画化したもの。

時代錯誤感のフルスウィングという感じなれど当時の結婚制度を批判的に描いているのでこんなにも悲恋に満ちた物語に仕立て上げられたのだろう。

そもそも「やまと新聞」に掲載された所謂 大衆小説を元にしているので、今の感覚で観るとドロドロした昼ドラに近いのかなと思ってしまう。

原作小説の方で見ても、個人的には例えば『婦系図』よりも『歌行灯』などのほうが断然好みだ。泉鏡花作品の中では。

そして、この衣笠貞之助版。

もう、主人公・早瀬主税の師である酒井教授が諸悪の根源であることに激しくつっこみを入れてしまうことうけあい。

しかしその酒井が最終的には早瀬の手を借りて独逸語辞典を完成させてしまうのは示唆的で、人間味を一才排除したところに結実される辞書というものの暴力性を感じさせる。
世の中の法律は“勝てば官軍”に依って宛てがわれた支配であることに似て… 。

お蔦が早瀬と強引に別れさせられたことに絶望して病床に倒れ、そしてついには絶命してしまう。
その直後に、早瀬にとって思い出の湯島天満宮で酒井が彼に呟く「女房と呼んでやれ…」という台詞にはすべての観ている者が拳を握るだろう。

心奪われるのはお蔦を演じる山本富士子の悲壮感溢るる佇まい… 。
↓のレビューは。今はもうなくなっってしまった映画レビューサイトに、鑑賞直後に投稿したレビューを。こちらのサイトに移行する際に、以前のアカウントにて投稿したレビューになります。

☆☆☆☆

「切れろ別れろは芸者の時に言う言葉。今の私にはせめて死ねと言って欲しい…」

原作泉鏡花による悲恋物語。

格子戸を明け朝日を浴びる山本富士子。
余りに神々しい輝きに満ちた美しさを、一体何に例えたら良いのだろう。

世を忍んで1つ屋根の下で夫婦となった、元芸者のお蔦こと山本富士子と、早瀬こと鶴田浩二の2人。
妻が偶然夫の幼なじみの男(高松英郎)と出会った事から、徐々に運命の歯車が狂い始める。
現代ではなかなか理解がし難いが、舞台設定の明治初期とあらば、時の世間的な封建制度によってジワジワ真綿を締め上げる様な悲恋へとなって行く。
そのシンプルな日本式の物語は、森雅之と杉村春子の再会をもってピークに達する。
頑固一徹な森と、長い間世を忍ぶ生活を自らに課して来た杉村。
2人の芸達者によって、このシンプルな話に深みを際だたせ、更なる悲恋に拍車をかける。

死の床に伏すお蔦の枕元に添えられる美しい梅の花びら。
あの日、別れ話をしたあの湯島の梅の花。

監督衣笠貞之助による、後世にまで伝えたい素晴らしいまでの美しさ。
堪能し、その日本人特有の慎ましさに号泣しました。

2009年 10月6日 新・文芸坐

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