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永すぎた春
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『永すぎた春』に投稿された感想・評価

新潮文庫にある三島由紀夫作品の中では屈託のない軽めの小説だったような気もするし、忠実に映画化されてるような気もするが、小説にあったような三島の結婚や処女性や階級に対する偏執も薄味になり、いかにもなメロドラマ調の音楽と相まって、いい意味で凡庸な映画になってた気がしなくもない。
あと劇中にも"逆説"というワードが出てきて、三島文学に対する記述にもそのワードが繰り返し使われるが、わしには逆説どころか至極真っ当に思えるんだよな。

あややについては妖艶さが加わった30代以降の方がいいな。もちろん可愛いあややもいいが。
でも、なかなか良かった。
三島由紀夫の同題ベストセラー恋愛小説(1956)の映画化。家庭の事情で婚約期間が長引いてしまった若い男女の紆余曲折を描く。丸山(三輪)明宏が映画初出演。監督は「秦・始皇帝」(1962)の田中重雄。

東大生の郁雄(川口浩)と本郷の古本屋の娘・百子(若尾文子)は婚約した。会社重役をしている郁雄の親は家柄の違いを問題にしていたが、大学を卒業してから結婚するという条件で郁雄が説き伏せた。そんな中、デザイナーの本城つた子から誘惑された郁雄は、結婚まで抑圧される自分の性を彼女で満たしても良いのではないかと考えはじめる。。。

戦後10年を過ぎた頃の東京の風俗文化が切り取られていて楽しかった。女性のファッションや部屋のインテリアがかなりオシャレ。当時の貞操観念の高さがストレートに描かれていて興味深かった。

明るめな登場人物たちの中で、百子の兄が惚れ込んだ看護師の貧しい母親の描写が、戦後のダーク面を発していて印象深かった。このエピソードが
映画に深みをもたらしている。

目立ったロケ地は東大の本郷キャンパスと銀座のシャンソン喫茶「銀巴里」。そのステージで丸山明宏(当時22歳)がシャンソンを歌う姿が数シーン映る。本作が公開された1957年に丸山は『メケ・メケ』が大ブレイクし一躍人気を果たした。三島由紀夫や寺山修司が絶賛した当時の丸山のオーラは確かに只ならぬものがあった。本作への出演も原作者・三島のリクエストがあったのかもしれない。

若尾文子(当時23歳)は本作の直後に「青空娘」(1957)に出演し増村保造監督とのタッグが始まる。自分はほとんど増村映画でしか若尾を観ていないので、本作での純情なイメージは新鮮だった。

三島由紀夫が丸山明宏を支持していたのは周知だが、若尾文子のファンでもあったことも公言している。本作の撮影現場に見学に来た際に初めて面会し、映画の仕上がりも満足だったとのこと。本作を皮切りに三島原作の映画化に尽力した映画プロデューサーの藤井浩明は、本作について「従来の日本の娯楽映画と違った、スマートでもっと垢抜けた映画にしようとかなり粋がって製作した」と振り返っている。

※「銀巴里」で歌っている女性はジャズ歌手の東郷たまみ(画家・東郷青児の娘)。
わせ
3.5
永い春をどうやり過ごすか。刺激の欠如、退屈という名の猶予、欲望に正直でいたい気持ちと誠実であろうとする意思が同じ身体のなかでぶつかり合うのは若さ。有り得ないくらいに気まずい顔合わせに、思わず外へ出て笑い出してしまう若尾文子がキュートだった。バナナ!だとか言いながら踊る船越英二が可笑しくて、けれど妹のことを思い、自分の幸せにそっと区切りをつけようとするところは、やっぱり切ない。与えられた幸せをまっすぐに受け取ることも礼儀なのだと思う。もうすこし大人になったら、次は自分が誰かに幸せを与えられるようになる。それが明日からの宿題だ。

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