① 戦争により親も夢も奪われたが、裕福な家庭に育てられたパク。望んでもいない夢を押し付けられ、初対面だと言っても良いほどに関係性の希薄な女性との結婚が勝手に決められている。そう言った自己のない人生を強いられる抑圧への抵抗からかパクは死体へと惹かれていく…。死体への恋は決して叶わないという自覚があるからこそ、自身の人生の鎖を強固に感じさせ、その退廃的で刹那的な安息がより一層物悲しさを浮き立たせる。巡り行く四季と人生を屏風に反映した虚実入り混じった表現が面白く感じました。
② なぜ少女アサコだけが無傷で生き残ったのか。彼女の元に現れる血だらけな母親の霊。アサコの罪悪感と贖罪の気持ちから生まれる怪奇現象。その血だらけな悍ましさの中に現れる雪や眩い光のどこか幻想的な美しさ。救いという彼女の心の中での清算がもたらす希望が温かさを帯びて感じられたのが良かった。
③ 露骨すぎる『サイコ』オマージュが楽しい。ここまでガッツリ『サイコ』してるの初めて見たかも…。「憑依」とは何なのか。魂は存在するのか。その答えを全部自分の口から語ってしまうのですが、その答えを自覚してるからこそ、悲しさが際立っていたと思います。