【名作を観ようシリーズNo.126】

”愛しき者はすべて去りゆく〟


今や名監督となったベン・アフレック初監督作品で、弟のケイシー・アフレック主演、モーガン・フリーマン、エド・ハリスいった名優たちが脇を固めた骨太サスペンス。
ソフト所有で久々の再鑑賞。


ボストンの小さな街で起こった幼女誘拐事件の真実に迫る探偵パトリック。すべてを知った彼が選択した決断は正しかったのか？

この作品も、10数年前の初鑑賞時と、3児の父親となった今では感じ方が全く違う。
こんなに深い物語だったのか…

人生、正義感だけでは難しい判断がある。大事な存在を守るためには、清濁合わせ飲むことも時には必要なのかもしれない。
ただし、そこには十字架を背負う覚悟が必要だろう…
この物語のような闇は現実社会にたしかに存在する。

本当の正義とは？

観る者の心に問いかける、サスペンスドラマの逸品です。

【サスペンス映画のススメ】
〈ジャンル定義への当てはめ〉
　○: 観客の緊張感を煽る
　○: 超常現象なし

◆作品名:
ゴーン・ベイビー・ゴーン (2007)
◆サスペンスの要素:
・失踪した少女の捜索

〈本作の粗筋〉
・ボストンの私立探偵、パトリックとアンジーのもとに、4歳の少女アマンダ捜索の依頼が舞い込む。アマンダの母親へリーンを訪ねた２人は、彼女の自堕落な暮らし振りを目の当たりにし、焦燥感に駆られる。
・パトリックとアンジーはボストン市警と組んで全力で捜査を進めていくと、ドラッグ中毒者、売人、闇を抱えた人間たちが次第に捜査線上に浮かび上がる。やがて彼らは、ヘリーンがドラッグの売人から金を盗んだという事実をつかむ。アマンダの誘拐は、この代償だったのか…？

〈見処〉
①愛しき者はすべて去りゆく…。
　ベン・アフレック初監督作品！
・『ゴーン・ベイビー・ゴーン』は、2007年に製作されたサスペンス映画。「ミスティック・リバー」を手掛けた小説家デニス・レヘインのミステリー『私立探偵パトリック&アンジー』シリーズの4作目小説『愛しき者はすべて去りゆく』を、本作が長編監督デビュー作品となる俳優ベン・アフレックによって映画化されたもの。
・主演はベンの弟、ケイシー・アフレック。ミシェル・モナハン、モーガン・フリーマン、エド・ハリスといった豪華キャストが脇を固め、誘拐された少女の母親を演じたエイミー・ライアンは、本作で多くの映画賞にノミネートされ、一躍人気女優となった。
・本作の舞台となるボストンはアフレック兄弟の出身であり、脇役・エキストラの多くの地元の人間を出演させたベン・アフレックの演出は激賞され、後に続く『ザ・タウン』(2010)、『アルゴ』(2012)による成功の礎となった。

②結び…本作の見処は？
初監督作品とは思えない完成度！
○:「事件初日に解決しないと、検挙率が10%まで激減する」誘拐事件に対して、本作では、少女の失踪から3 日が経過した時点で物語はスタート。二転三転する事件の全容は、ラストまで予断を許さない。
○: 「社会正義とは何か？」…まるでイーストウッド監督作品のように社会メッセージを含み、鑑賞後に複雑な余韻を感じさせる作品。
▲: 今どきのサスペンス映画の定石どおり。配役に捻りがあっても良かったかも！？

• #サスペンス映画のススメ

『ゴーン・ベイビー・ゴーン』
原題 Gone Baby Gone.
製作年 2007年。上映時間 114分。

デニス・ルヘイン（『ミスティック・リバー』）原作のミステリー小説（『愛しき者はすべて去りゆく』Gone, Baby, Gone (1998)角川書店刊、私立探偵のパートナーのパトリック・ケンジーとアンジー・ジェンナーロのシリーズ4作目の小説。）を映画化したベン・アフレックの監督デビュー作。
パトリック＆アンジーにベンの弟、ケイシー・アフレックとミシェル・モナハン。共演はモーガン・フリーマン、エド・ハリスら。

ボストンの私立探偵パトリック＆アンジーの2人は、行方不明の4歳の女の子の家族に雇われ、警察の捜査に協力することになる。
ポン引き、麻薬の売人、コカイン中毒の売春婦など、この界隈の汚い裏社会を渡り歩くうちに、彼らはどんどん広がる謎を解き明かし、何が正しくて何が間違っているのか、状況倫理と絶対的道徳の間で悪戦苦闘してゆく。

嗚呼、モラルジレンマ。
このスマートな映画の結末はここでは書けないが、今作品を観て嵌まった方の多くは、この後何日も考え、語り続けることになるような作品でした。
ベン・アフレックの監督デビュー作は、彼が幼少期を過ごしたサウスボストンを舞台にした物語にふさわしい才能を持っていることを示しているかな。
この辛辣で重苦しく微笑ましくない物語は、急速に衰退するこの社会で道端のゴミと同じくらいありふれた状況になりつつある子供の誘拐について、2つの音色を除いてすべて心に響きました。
サウスボストンの貧しい白人労働者階級の登場人物は、その栄光のない姿、つまり田舎でも都会でも地方でもどこでも見られるような下層民の姿が描かれていた。
貧困、肥満、その他の身体的嫌悪感（人だけでなく）、腐敗、塵芥がそこかしこに、そしてそこにいるほぼすべての人に汚れさえ見られるよう。
今作品の非常に過酷な物語の舞台をうまく作っていた。
ベンの弟ケイシーが、誘拐事件を解決するために雇われた私立探偵役で主演しているのがとても良かったっすわ。
彼は感情の幅が狭いんやけど、通常、俳優の致命的な欠点が、この非常にシリアスな役では逆にプラスに働いてたと思う。
多くの暴力とごまかしの後、彼はついに、熟練の舞台女優、エイミー・ライアン演じる麻薬中毒のシングルマザーの4歳の娘の誘拐に関わる重要な警官役で、素晴らしいエド・ハリスとモーガン・フリーマンが作り出した混乱した謎解きを解決する。
エイミー・ライアンは、麻薬中毒者／毒親ちゅう役柄で、全体的に非常に効果的やったけど、舞台用に学んだ彼女の落ち着いたボディランゲージは、実際の中毒者のうつむき加減で打ちひしがれたボディランゲージと比べるとリアリティにチト欠けていたかな。
しかし、彼女は貧しい白人の下層階級の嫌悪感をよく伝えていた。総体的な否定、侮辱、無礼、無責任、汚い言葉を存分に使い、特に、彼女の嫌悪感を抱く自分のような「母親」が、恐ろしく欠陥のある母親の罪のために長年にわたって社会とともに多くの辛い代償を払うであろう無垢な娘を育てる姿には腹が立ったものであった。
もし、彼女が運よく生き延びることができたなら、やけど。
また、ケイシーのダッドリー・ドゥライトというキャラが、後述のジレンマについては最後に非常に葛藤していたのに、先に法律を自分の手で行使して、国家の権利でしかない決断を下すことについては全くしていなかったことである。
極端な道徳的正しさと犯罪的間違いが同一人物にあるんか。
おそらく他の多くの人と同じやけど、ここでは彼の無法行為が、最後に取った厳格な独善的姿勢とあまりにも対照的だった点が不愉快かな。
ミシェル・モナハンは、アフレックのスマートで意識高い系のガールフレンド兼仕事仲間をゴージャスに演じていて素晴らしかったし、最後に何が起こるべきだったかについての正しい意見やった。一人の子供に起きたことが、良いことであれ悪いことであれ、世界を大きく変えることはないことはよく理解してる。
しかし、世界で拡大している集団悪は、私たち全員がその時正しいと思う人生の選択によって成長していると見た時、疑問を投げかけ検討しなければならない。
では、伝統的な道徳的正しさは、どんな問題に対しても常に最良の解決策なんやろか？
それとも、厳格な伝統的道徳的権利と比較して、たとえ伝統的道徳的権利と対照的であっても、一度に一人の子供にとって最善のことは、その子供と社会にとって全体的に現実的な最善の答えなんやろか？
今作品を観れば、責任ある視聴者なら誰もが考えるとおもう、この非常に難しい問題。
この映画を見て、そして、この先この問題についてよく考えて見たいかな。
ベン・アフレックはそれを、映画で見せることができる限り説得力のある、しかも楽しい方法で見せてくれてました。
しかし、ハリウッドアルアルのような気持ちのいい結末を期待しない方がいいです。
このような選択をしたアフレックに拍手を送りたい。
善き作品でした。