中川信夫監督のおセンス！！

剣道場の娘が、父と弟を殺されて
復讐を果たすよくあるお話ではあるが！！

中川信夫監督のおセンス！！

大事だからもっかい言う。

オープニングロールから、
年貢米の隠し米で生首ごろん。デスヨ。

娘は捨て子で父と弟と血は繋がって
いないけれど、その剣の腕は確か。
姉と比べられ、父に厳しく当たられる弟は
剣の道よりも愛しきおなごと新しい暮らし
を目指しますが、お勝が欲しいお代官の
謀に巻き込まれ、父も息子も帰らぬ人に。

お父さん役が西村晃さん！！
剣に厳しい父親役ピッタリ！！

宮園純子さん初めまして！ですが、
凛とした美しさが斬って、斬って、
斬りまくるッッッ！！！！

帯くるくる〜もござるヨ！！

そして、そして。
きましたーッッッ！！
賞金稼ぎの若山富三郎！！いよッッッ！
拳銃使いだけど、わずか数十秒の殺陣は
痺れる格好良さッッッ！！

廓屋の引きの画角とか、思わず拍手。
ちょっと遠目だからお目目こらしたが。

信夫のこだわりも詰まった復讐劇であった。

てぃなみにシリーズの第二弾だったようだ。
信夫はコレと次の最終作第三弾を監督。
第三弾はユー様なかった〜。

傍若無人に振る舞う番頭により生計を破壊させられた女剣士・お勝（宮園純子）が、敵討ちのため江戸へと出立する。宮園純子主演による人気シリーズの第2作目。前作との直接的な繋がりはない。

「権力者によってヒドイ仕打ち（拷問・強姦）を受ける→復讐心を滾らせて、毒婦のスキルを覚醒させる」というお馴染みの展開。前作とは異なるロケーションにて物語が進行するため、別作品として楽しむことができる。

陰影のコントラストを大事にした映像作り、四肢切断在りきのバイオレンス描写、緩急のあるカメラワークなど、あらゆる技法が盛り込まれている。中川信夫特有の映像世界に、どっぷりと浸ることが可能。

女優陣による色鮮やかなお江戸ファッションもまた見目麗しく、グルグルと帯を解かれながら「あーれー、おやめになってー」が登場する。そして、若山富三郎の居合い斬りが、もはや芸術の領域に入っている。

1960年代末期らしいエロと激しい残酷描写が混じった時代劇映画、復讐鬼と化した女が悪人たちに報復する展開は後の『修羅雪姫』や『コフィー』に通じるものがあって興味深いものの、主人公の宮園純子が堕ちて凶状持ちとなっていく過程などストーリーはベタすぎるし語り口が加害者が暴虐の限りを尽くして被害者がいたぶられていく過程を長々とやっているのでかったるく感じられたり主人公の協力者的な立場となる大信田礼子が事件に都合よく顔を出しまくるため正体不明な人物像になっていたりと総じて言えばプログラムピクチャーらしい見せ場を優先した平凡な娯楽作品に。

それでも中川信夫監督による冴えた演出が随所で登場して映画を引き締め、観客の目を覚まし最後まで見させる手腕が流石。オープニングタイトルで悪人によって農民たちが容赦なく殺害される場面は悪辣な手腕をテンポよく捌いて本編に期待をもたせるし、役者の顔を強調せずロングショットを活用して空間を意識させる演出に思わず見入る。特に宮園演じるお勝が悪人の罠によって遊廓に売り飛ばされる場面での、役者にカメラを寄らずカットを割ることなく一階と二階の二つの階でのやりとりをロングによるカメラ据えっぱなしの長回しで表現する演出には驚かされるはず。こんなことするのゴダールと中川信夫しかいないのでは。

テレビドラマの脅威に晒されていたとは言え、宮園や大信田をはじめ綺麗な女優陣が顔を揃えていたり天井に吊るされていたぶられる西村晃の名演、後年の時代劇での活躍ぶりを予兆させる今井健二や曽根晴美の堂々たる悪党っぷり、道場主の息子なのに剣は使えないし悪党には騙されっぱなしだし剣の腕前に秀でた姉である主人公に反発しているくせにいざとなると頼りにしたりと軟弱すぎてイライラさせる『柔道一直線』でブレイクする前の近藤正臣なとなかなかの顔ぶれが揃った役者の演技も見所。そしてちょっと登場しただけなのに美味しいところをかっさらっていく若山富三郎のインパクト(居合斬りの腕前はもはや超人レベルに)。

ちなみに本作最大の悪人今井健二の役職である甲州勤番は今井の語るとおり史実での徳川幕府における左遷での誰も来ない山里に配置されるという最もひどいポジションにあたり、これを口にすると誰もが嫌がったらしい。実際に幕末に現在のアメリカ大統領のように自分の意見に反対する尊攘派や次期将軍候補対立者を容赦なく捕まえるため裁判官に当たる役職に自分の意見に忠実な人物を配置したりしていた当時の大老(政治を司るポジションでの最重要職)井伊直弼に「こんな法を無視して人間に罪を着せていくやり方をするとかえって反発する者が増えて幕府を弱体化させる」と意見書を提出した幕臣が甲州勤番に左遷されたりも(この人の意見は的中し、井伊直弼本人もテロの標的になり殺害され、そのあとも幕府に反発するグループや井伊直弼に押さえ込まれた大名たちがかえって活発化して徳川家の弱体化を招くことになる)。そう考えると強引すぎる今井のやり口も出世ルートになんとか戻るためにはやむを得ないよなとちょっとは同情するはず、やってることは天と地ほどの差はあるが。