なんかもう凄い歪で過激な映画である。「ロッキー」や「ベスト・キッド」などの正統派FEEL GOOD作品を撮る前にジョン・G・アヴイルドセン監督がこんな異色な怪作を撮っていたなんて！「タクシー・ドライバー」で主人公の同僚役を演じていたピーター・ボイルがタイトルロールのジョー役。拳銃マニアで人種差別者なブルーカラーのオジ。このジョーとヒッピーの娘を持つインテリタイプのオジが親しくなる。この娘を演じているのが若き日のスーザン・サランドンで、存在感抜群。やがて2人のオジは若い女性とのフリーセックスをキメセクで満喫し、最後は拳銃を手に老害パワーが暴走する。あまりにも衝撃的なラストに呆然とした。1970年の映画だけれど、ジェネレーションギャップでの対立など今の社会にも通じるところあり。だが内容的に今では絶対に撮る事の出来ない作品だろう。当時のカルチャーを見るタイムカプセル的な要素もあり一見の価値ありだが、あのラストには賛否ありそう。何でこうなるの？と私なんかは思ってしまったが、なるべくしてなったラストとも考えられる。ひとつだけ言えるのはジョーのような人物は昔も今もいるし、アメリカにも日本にもいるという事。それにしても変な映画であった。無理矢理とも言えるがラストの展開は色々と考えさせられるし、皮肉な結末も待っている。

【痴食🐖】

『ロッキー』『ベストキッド』『セイヴ・ザ・タイガー』など良質なプログラム・ピクチュアを数多く手掛け、元々ポルノ映画畑から出てきたと言われるジョン・G・アヴィルドセン監督の初期作。

堕落した７０年代アメリカ🇺🇸を舞台に、ヒッピーとLSD塗れに陥った一人娘のボーイフレンドを暴力によって殺す上流階級の父親(デニス・パトリック)と帰還兵ジョー(ピーター・ボイル)の二人が「イマドキの若者は！😤」と鉄槌を下していくサスペンス・ドラマ。

要するにベトナム戦争で腐敗した当時のアメリカ人の心象を血まみれな狂気によって再構築したポール・シュレイダー脚本『タクシードライバー』『ローリング・サンダー』の原点であり『ハードコアの夜』の元ネタと言える作品。脚本はノーマン・ウェクスラーが担当。

かなり良く出来た凶暴なオヤジが活躍するサスペンス。サイケデリックな映像感覚や間延びしたカメラワークなど、上映時間を意識させない的確な演出でグイグイ引っ張る力がありアヴィルドセンの演出はさすがに上手い。🤔ｳｰﾑ

若松孝二の『新宿マッド』という映画もあったが、どちらも当時の左傾化したヒッピーやフーテンみたいな若者たちに鉄槌を食らわす保守世代の中年男のキモさを描きたかったのかな？。静止画で幕を閉じるラストシーンが荒涼とした雰囲気で凄まじい。最終的に誰一人救われずに映画は終わる。

なかなか独創的なB級映画で主役(脇役？)ピーター・ボイルが強烈なインパクトを誇る。スーザン・サランドンのこれがデビュー作というのもまた凄い。🫢

今のトー横と変わらない話であるが、ジョーほど過激なエイジズム人間は日本には少ない気がする。
妻と談話しつつビールを飲むような、ごく「普通の男」が若者を撃つためショットガンを持ち出す描写は極めてアメリカ的。

とにかく画面から漂う70年代の臭いに圧倒される。ラジオ音源を劇伴として流し続ける演出や、プロレタリアートの集まる酒場の湿度なんて『ロッキー』のフィラデルフィアそのまま。
労働者と上層部、下町と上流階級という交わるはずのない文化がヒッピーによって接続され、飲み込まれていく。

被写体の顔に寄る心理的なカメラワークはやり過ぎだが(これもニューシネマでは定石となった)、ラストのストップモーションはお手本のような使い方。