『人の死はドラマであり、創作は現実を超えられない』

母を亡くした少女が白いウサギと鬼の少年と共に出雲を目指すファンタジーアニメ。アニメなのに全然動かないという通常事故案件を、スタープラチナ・ザ・ワールドで無理矢理成立させる企画力。誰に何を届けるのかまで頭が回っていないけど後味は悪くない。

惜しい映画だったな〜。もっとおもしろくできた。

今日は『神在月のこども』を試写会で鑑賞。

まず設定やストーリーの大筋はすごくおもしろそうで「良い」。

主人公「神無(カンナ)」は「韋駄天」の末裔。神在月に出雲に集まる八百万の神々のために、日本中の神社を守る神々から馳走を集めお届けする使命がある。

母の形見の勾玉を身につけた時、その「韋駄天」のチカラが発動し、降っていた雨粒が空中で静止する。ほぼ時が止まったことを表すこの表現は『SPEC』の「ニノマエ」のパクリだと思うが、これはこれでいい。

ただ、この「あまりに早いから周りが止まって見える」という理屈を最後まで通した結果、アニメーションとしてひとつもおもしろくない、スピード感の全くない韋駄天になってしまった。

動いているのは主人公と旅を共にする仲間たちだけで、全てのシーンでモブキャラは全て静止。これじゃ低予算の言い訳に理屈を付けただけのような格好だ。

特に、終盤、神のチカラを失い、普通のスピードで走ってる時まで周囲の人間たちは動かない。ここは動かさなきゃ。ここで動いてる雑踏の中にカンナがいれば、今までとのギャップがおもしろいのに、これではただの手抜きに思えてしまう。

周りが止まっている中を普通に走っている動画の後に、普通に動いてる人たちの中を『フラッシュ』ばりの超スピードで駆け抜けていく動画を入れて、そのスピード感と爽快感を表現すべきだった。

また、主人公がこのチカラに目覚めても、少しも嬉しそうじゃないし、そのチカラを試してみてはしゃぐこともしないのはいかがなものか？

普通、『ハリーポッター』のような、どこにでもいるような子が実は◯◯だった！ってお話しの場合、そこに見ている方にワクワクする気持ちが生まれるんだが、その高揚感を捨てて、主人公はずっと葛藤をし続ける。

この「お母さんを殺したのは私なんだ」という重いテーマを引きずり過ぎて、普通は「試練を乗り越えて使命を自覚する」流れが、『エヴァ』のシンジくん並みにいつまでもウジウジしてて主人公の確かな成長が感じられない。

ほぼほぼ最後まで「お母さんに会いたい」ばかりを叫んでいたが、各神社の神々から課された試練を乗り越える内に、母が務めた「韋駄天」への思いを受け継ぐ覚悟ができて、確固たる信念を持って出雲大社へ走ってもらいたかった。

「愛宕神社」「鷲神社」「諏訪大社」馳走を集めに立ち寄る神社の神々も、もっと個性的に、もっと物語に絡められなかったものか？　もし『千と千尋』レベルでこの神々が描けたら、個性的なキャラクターが提供できたら、全然違ったものになったろうな〜。

人物のキャラクター造形も決して悪くはなくても個性がない。特に主人公の「笑う顔」「泣き顔」などの表情がよくあるパターンで感情が描けていない。

アニメーションがどれだけ動かせるかは予算の問題もあるだろうけど、ここまで動かないと「これで劇場用アニメか？」とも思ってしまうし、何よりこだわりが感じられなかったのは残念。

最後に、「マラソン大会」は冒険の後に持ってくるべきだった。出雲から帰って成長したカンナが、天のお母さんが見守る中、颯爽と一位でゴールしテープを切る。

あ〜、私が作り直したい。

　女の子が東京から出雲大社まで神様達にお届け物を運ぶロードムービー！

　日本独特の神秘的な世界観と女の子の成長していく様が心打たれる！後タイトルむちゃくちゃ良い！！

　日本の神話やご当地の神様も登場したり、思わず走って聖地巡礼したくなるよ！

　柴咲コウさんといい、声優陣豪華！

　あんこぶつけたろか！