六本木にてホテトル業に勤しんでいる女性（霧浪千寿）が、とある未成年の同業者を捜索している私立探偵と心を通わせていく。性産業に従事する女性たちの悲喜を描いている、日活ロマンポルノ。スタジオクレオール製作。

題材に取られているホテトルとは、指定されたホテルにトルコ嬢を派遣するサービスのこと。マンションでサービスをおこなうマンショントルコ（通称マントル）から始まり、やがて場所がホテルへと移ったので「ホテトル」と呼ばれるようになった。

「客とヤッて、食べて、寝る」というルーチン・ワークを繰り返しているホテトル嬢が、本物のLOVEを模索していくパターン。もう子供ではないのだが、大人にも成り切れないヒロインが、心のスキマを埋めてくれる相手を捜し求める。

天井桟敷出身の監督だが、コレといって異彩を感じることができず。極めてスタンダードな、3本立てポルノの3本目という印象。その一方、バブル崩壊に向けて傾き始めた頃の日本が、映像の中に封じ込められているところが興味深い。

ある年齢以上には懐かしい響きであるホテトル嬢、そんな職業で稼ぐ未成年の女性と彼女の仕事仲間を探しに東京に来た探偵との『コールガール』もどきのチャラいドラマはどうでもよくて、ひたすらバブルが弾ける直前の六本木の雰囲気を堪能する歴史探訪映像として楽しめる一作。東京の乾いた街並みや如何にも時代を感じさせるメイクもその味わいを増幅させていく。

主役を演じる霧島千寿の河合優実を彷彿とさせる顔立ちが物語にリアルな感触をもたらし、風俗に生きる人間の痛みを生々しく伝える。相手役の探偵を演じる坂田祥一郎はチャラい演技がちょっとウザイけれど、癒せない傷を抱えつつ軽妙に振る舞いながら仕事に打ち込む人間像を好演している。

一晩だけの関係を求めて主人公を欲する客と彼女の所詮消費としての関係性が丁寧に描かれいるのも好印象、男は妻では満たせない性行為を求めてその手の女を買うけれどそれはあくまで金で従わせるその場かぎりのもので結局はそれ以上踏み込めないことを客と主人公の再会シーンでさりげなく描くのが上手い。

８０年代後期らしく絡みはAVのように生々しくなっていてロマンポルノのロマンが喪失していることを実感させるが、それがかえってドラマでの空虚な心情となっている登場人物の感情を映像に引き出していてやっていることは乱痴気騒ぎなのに何だか切なくなってしまう。そしてバブル崩壊以降、六本木で豪華な生活を送る登場人物たちは何処へ行ったのだろうとちょっと想像したりも。

印象論になるが、被写体を徹底して突き放している印象のある映画。テキトーに演技つけてる感がすごい。わかり合えないという諦念が根本にあるからこそ状況さえ揃えば簡単に「真実の愛」に辿り着けてしまう。『ふたりぼっち』と並ぶくらいには傑作だと思いました。