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羽織の大将
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『羽織の大将』に投稿された感想・評価

昭和30年代にしては珍しい大学生(フランキー堺)が落語家を志し、弟子入り。

生来の調子の良さで師匠や兄弟子に溶け込む掛け合いや田舎から来て噺家になることに反対する母や妹とのやり取りにおかしみがあるコメディだった前半とは打って変わって、後半からは一時の成功に自惚れ本質を見失い真っ逆さまに転落していく様が描かれていた。

当時の大名人の8代目桂文楽が本人役で出演し、高座シーンだけでなく意外にも出番が多かったりと、そこも見どころ。
3.7
落語をネタにした映画ではかなりレベルが高い部類の作品。ミュージシャンから俳優に転向したフランキー堺に落語家からタレントに転向する主人公を演じさせ、タレントへの転身に反対する彼の兄弟子に落語家からタレントに転向した桂小金治に演じさせるというシニカルな配役がナイスだし、フランキーは喋りもいける口なので落語家が板についていてドラマに説得力をもたらしている。

師匠役の加東大介がベテランらしい雰囲気を醸し出してさすが名優と唸らされるが、さすがに落語は出来ないのでそこは上手くカバーしている。そして批評家の安藤鶴夫に主人公を辛辣に批評する大学の恩師を演じさせるというキャスティングの妙!

六代目桂文楽をはじめ本物の落語家たちが多数登場しているのも見所、そして桂小金治の落語を見られるのが貴重で特に最初にフランキーに教える『さんぼう』を後半重要な場面でフランキーが語るという巧みな使い方にホロリとくる。

増長してしくじったフランキーにもたらされるビターな結末が彼に恋する団令子との結末も相まってほろ苦い余韻を残す。
3.5
桂小金治の事故シーンについて。
映画における人物が道路を横断するシーンは観るたびにひやひやするものだが、桂小金治は例によって、あっさりと車に轢き殺される。映画の冒頭、道路側を歩くフランキー堺の横から車が突然飛び出してくることで映画が始まる。車の運転手は大学時代の友人藤木悠であり、フランキー堺を途中まで車で送る。車から降りたフランキー堺は道を横断しようとするが、車や路面電車が行き交い、前に出ようかと思えば前から車が通り過ぎ、後ろに下がろうとすると車が後ろを通る。通り過ぎる車に驚きながらもフランキー堺は道路の向こう側へと消えていく。これと全く同じことが桂小金治の事故シーンで再現されていて、別にすごいシーンではないが、明らかに何か変なことが起きている。桂小金治が道路を渡ろうとすると前から車がきて、後ろに下がろうとすると後ろから車がきて、前から車が来て轢かれてしまう。フランキー堺は道路を渡ることができたが、桂小金治は道路を渡りきることができなかった。笠原良三の脚本でどこまで書かれていたのか気になる。

落語家として落ち目となったフランキー堺、団令子の中華料理屋にさす光。桂小金治の葬式、遺影の前で落語をするフランキー堺と出席者を俯瞰でとらえたショットのエモさ。なんてことないショットだが。ラストの団令子がフランキー堺のもとから去っていく場面も見事。

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