『屋敷女』
原題 A l'interieur.
映倫区分 R18+.
製作年 2007年。上映時間 83分。
2007年に製作・公開され、凄絶な恐怖と戦慄を描いて話題となったフレンチホラー。
07年の日本公開時には修正やカットを余儀なくされた同作のノーカット完全版。
ベアトリス・ダルが女殺人鬼を怪演。
メガホンをとったのは、初監督作となる本作で高く評価されたアレクサンドル・バスティロ＆ジュリアン・モーリー。

クリスマスイブの真夜中、出産を目前にした妊婦サラの家に黒い服を着た不審な女が訪れる。
女が家に押し入ろうとしたためサラが警察を呼ぶと、女は姿を消す。
ひと安心して床に就くサラだったが、なんと女はすでに家の中に侵入しており、大きなハサミを手に恐ろしい形相でサラに襲い掛かる。
女の目的もわからず、衝撃と恐怖に包まれるサラだったが、そこで陣痛が起きてしまい。。。

※👵老婆心ながら、まず最初に、
ゴア(血糊や流血など、べっとりとした血液を表現する言葉。 ここから転じて血しぶきが飛び散る残虐シーン等のある作品)表現やグロいのが苦手な人は、この作品には観ない方が無難かと存じます。
また、妊娠さんはなおのこと観ないでほしいです本当に🥺。

新フランス過激派と呼ばれる世代に属するアーティストによる今作品。
見よう見ようと思いつつタイミングが合わずやっと視聴。
ホラーの常識を覆すことを目的として作られた今作品。
邦題の『屋敷女』は邦題だけにやりたい放題、映画は殺りたい放題。
原題：À l'intérieurては、"内部、内側"の意味で、その他にも"人の心の内、本心”などを表す時に使われる言葉だそうです。
それがどうして邦題が
『屋敷女』なんやろ。
『屋敷』に棲む『悪霊』の仕業か何かがアレコレ悪行をしてるでなし。
(確かに悪霊の仕業としか思えない残忍で冷徹なモノやけど、それに、3人のポリスがサラの家をチェックするシーンでは、家番号が666であることから、悪魔の仕業ともとれくもないが、、、無いやろなそれは)
監督・脚本、及び製作陣は、妊娠さんを利用して閉所恐怖症の恐怖を演出し、ホラーの常連客も唸るような、体のあらゆる部分からプシューっと血が噴き出し、アレモ、コレモ吹き出し、噴出、ふんしゅつ顰蹙過剰。
家の中のあらゆる場所にバシャッと血が飛び散り、染み込み、ドロドロシーンを容赦なく連発する。
また、悲惨な交通事故に遭ったばかりの妊婦サラ(アリソン・パラディ)が出産を目前に控えているちゅうストーリーで禁句に触れたような物語を展開させる。
しかも、クリスマスの前夜に。
普通なら、今作品は単なる搾取映画に過ぎないと即座に拒絶し、忘れようとしてるとこやけど、
せや、血にまみれた表面だけではない何かを感じた。
実際、血みどろの裏側には大きな知性があり、母性についての十分な含意を与えてたのはたしかやし。
例えば、バスティロ監督は、舞台となる家に霧をかけるという奇妙な選択をし、夢のような雰囲気を出して、登場人物の潜在意識の表出を示唆している。
その結果、観てる側はこの事件の正当性を疑い始める。
彼には、奥さんがいて、サラが不倫をした上での罪悪感からの、夢か妄想なのか等々。
黒マントの女性は、主人公の母性に対する恐怖の表象なんやろか。
身体的な苦痛や自傷行為は、夫(若しくは不倫相手)を死なせてしまったという主人公の罪悪感に対する反応なんやろか。
多くの疑問が投げかけられ、与えられた唯一の答えは、まだ十分に論理的であるにもかかわらず、かなり単純で作為的です。
しかし、映画の結末ではまだ十分に曖昧であり、さらなる考察を可能にしてるかな。
今作品の緊張感と雰囲気のある演出、不気味なストーリー、優れたサウンドデザインと編集が相まって、今作品は忘れがたい作品になりました。
ただ、豊かなサブテキストに加え（より直感的なレベルでも）、今作品は様式化された演出と、忍び寄る恐怖と脈打つサスペンスを見事に表現しており、見る者の目を楽しませてくれる反面、
こないな素晴らしい資質にもかかわらず、不必要なまでに暴力的な過剰さを追求し、その強力なサブテキストをさらに発展させるよりも、むしろショックを与えることだけを目的としているように思われるし、そないな映画作品を好まない方には嫌悪感さえ覚えてしまうんじゃないかな。
また、ポリスたちの早すぎる死は無意味に思え、夫自身の死と、彼女を救えなかったことを表現しているとも云えるが、単に死体数を増やし、ベタベタの血糊を数枚追加するために含まれたと主張したいかな。
でも、まぁ個人的には映画『マーターズ』を観た時と同じ様な感覚で痺れたかな(よい意味で)。
面白いと表現するのは合ってないかもしれないけど、この物語が女性VS女性ちゅう、男性優位のジャンルで女性同士のスラッシャー的な対決をしていることはエエ感じやった。
それに加えて、これはゴリゴリのメタファーとしての悪夢のような母性不安ときてる。
サラが、妊娠に対する不安や疑問、後悔を抱えた女性から、生まれてくる子供のために死力を尽くして戦う女性へと変化していく過程が描かれている。
ほとんど、彼女がどこまでやる気があるのか、病んだ原始的なテストのようなもの。
ベアトリス・ダルとアリソン・パラディのキャラの原始的な性質は、この暴力的で血生臭い母性の過程を通して浮かび上がってくる。
ラストショットでは、モダンホラーの中でも最も残酷な映像、子供を産むための母親の試練に犠牲、痛みを、申し訳ないけど気持ち悪く表現してて、今作品の最も破壊的で明確な映像を見ることができます。
また、この映画は血に塗られ、これまで作られた中で残忍なホラーの1つであることを確固たるものにしているかな。
悲壮感の漂う雑踏の中で見つけた深遠なものは別として、今作品は何よりも雰囲気のある作品であり、予想外のものでした。
まぁ、その予想を外させる意味では、意味不明な邦題は多少なりとも役に立ってるかな。
サウンドデザインについては、低く響く電子音。深紅の暴力の閃光の中で聞こえる悲鳴と遠吠え。これらのビットが、大音量と静寂の両方の瞬間の恐怖を衝撃的にし、観てる側をより不安にさせます。
さらに、この編集は、多くのシーンの心理的な側面を不快なまでに増幅させてた。
例えば、ベアトリス・ダルが演じる謎の女がトイレのドアの前に座り、タバコに火をつけるシーン。
彼女の怒り、精神的な苛立ち、その感情が劇的に強まる様子が、サウンドデザインと編集が一体となって、この女性の精神状態をそのまま模倣し再現してました。
ベアトリス・ダルが大げさな悪役を演じることもなく。
全体的に、純粋な恐怖と閉所恐怖症の雰囲気。
多くの人は、強烈なクライマックスとフィナーレ。
正直、どのシーンにも希望がなく、ある時点から何も期待できなくなる。
今作品は非常に見応えのある作品だと思う。
火傷、気管切開、ハサミによる肉体の貫通など、完璧なメイクアップ効果から、サラと生まれてくる子供の身を案じる執拗な心理攻撃まで、今作品は冷酷そのもの。
今作品は、血みどろのホラーとして見ることもできるし、より広く、より比喩的な意味で見ることもできると思います。

徒然に。。。
もし、あの子が死なずに成長したなら。 　　　　　　
　　　 秘めたる悪魔と向き合う
　　　　　　　　　　by kuuことGeorge
人の力を越えた何かによりて
陰鬱溢れる世界に誕生した時
私は崇高なものに拳をつきつけた
母は祝福の言葉と呪詛を
囁やいたと云う
何故　
私を産み育てたのだろうか？
何故
儚い蝉にでも産んでくれなかったのだろうか？
悲しむべきなのは
私が自ら贖罪を背負い
蝉の寿命の様に
儚い快楽に溺れた日々である
人々に嫌悪を抱かせた過ぐる日の私
このうちに秘めた悪魔を
残余の紙の様に
燃え盛る火の中へと投げ捨てることはできないのだから

【ホラー映画のススメ】
◆作品名:
屋敷女 ノーカット完全版 (2007)
◆映倫区分 / 日本 : R18+
◆ホラーの要素
　謎の女の殺戮が視聴者の恐怖を煽る
◆恐怖の種類とレベル
　精神的恐怖　★★★★☆
　肉体的恐怖　★★★★★
　知識的恐怖　★★☆☆☆

〈本作の粗筋〉 eiga.comより抜粋
・クリスマスイブの真夜中、出産を目前にした妊婦サラの家に黒い服を着た不審な女が訪れる。女が家に押し入ろうとしたためサラが警察を呼ぶと、女は姿を消す。
・ひと安心して床に就くサラだったが、なんと女はすでに家の中に侵入しており、大きなハサミを手に恐ろしい形相でサラに襲い掛かる。女の目的もわからず、衝撃と恐怖に包まれるサラだったが、そこで陣痛が起きてしまい……

〈見処〉
①この女、凶暴につき——
凄絶な恐怖を描くノーカット完全版
・『屋敷女』(原題：À l'intérieur、英題：Inside)は、2007年にフランスで製作されたスプラッター・サスペンス映画。
・本作は『ベティ・ブルー/愛と激情の日々』のベアトリス・ダルが屋敷女＝女殺人鬼を怪演。メガホンをとったのは、初監督作となる本作で高く評価されたアレクサンドル・バスティロ＆ジュリアン・モーリー。
・本作は残虐表現が激しく、2007年の日本の劇場公開時に映倫から審査を拒否されたため、日本の配給会社が自主的に修正を加え公開された。また、日本ではその無修正映像を観ることが出来る唯一の方法であった廃盤のセル版DVDに対してプレミアがつくなど、幻の作品と化していたが、2021年7月にノーカット完全版が劇場公開された。

②結び…本作の見処は？
３大フレンチ・ホラーのうち、最グロテスク映画。妊婦と愛猫家は、鑑賞を避けたほうが良いかも。
◎: 自宅内というワン・シチュエーションにて、妊婦に対する暴行という禁じ手を描く作品。完全版ではボカシが外れた終盤の殺戮シーンは、良いも悪いも直視が辛い。
◎: 屋敷女による狂暴性と歪な母性愛の源泉が終盤に明らかになるなど、サスペンス仕立ての作品となっている。
○: 胎児の視点を描く斬新な演出もオリジナリティが高い。
▲: 強い女性陣に対して、男性陣は単なる「血液供給係」にて、存在感なし。

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クリスマス・イブ…翌日に出産を控え、一人自宅に帰るサラ…本来であれば、間もなく会える我が子への喜びがその顔に浮かんでいるはず…でもサラには悲しみの表情しかありません。

それは4ヶ月前、サラ自らが運転する車で事故を起こし、助手席に乗っていた最愛の夫マチューが亡くなっていたのです。
辛うじてお腹の子供は無事でありましたが、マチューを亡くした喪失感は大きく、出産も一人で乗り切ろうと母の援助も断っていたのです。

サラ以外には誰もいない静かな家に鳴り響くチャイム、玄関には…女？…でも顔はよく見えない…電話を貸して欲しいという女に対し、夫が寝ているからとやり過ごそうとしましたが、女は言います。

"夫なんていないでしょ、開けてサラ…"

驚愕するサラ、更に、窓を見るとそこにはゆっくりと煙草に火を付ける一人の女…恐怖の一夜が今始まる…

2000年代前半、突如起こったフレンチ・ホラーブームの中、アレクサンドル・アジャの「ハイテンション」、パスカル・ロジェの「マーダーズ」、サヴィエ・ジャンの「フロンティア」と並んで四大フレンチ・ホラーの一角として語り継がれている本作。

初公開時は2008年？だったと思いますが、余りの過激な描写に黒ボカシ入りでの公開となったいわく付きの作品でもあります。

なのに突然のノーカット・ボカシ無しの完全版での公開…なんで？…多分今後二度と劇場公開がされる事はないだろうとの想いで慌てて劇場に駆け込んだ次第です。

容赦ないグロ描写の連続ではありますが、製作から10年以上が過ぎ、スプラッターとしてはやや古臭さを感じてしまうところはあります。

ただ、CGの技術が進み多様な観せ方が可能となった現在でもこの作品を観る観客の顔を歪ませているのは、グロ以前にタブーをモノともしない邪悪さであったり、狂気そして恐怖をストレート且つ血みどろで描きつつ、フランスらしい品の良さも感じられるというこの凄さ。

何より狂気の女を演じたベアトリス・ダルの力が本作を伝説の作品にした原動力だと思います。

"ベディ・ブルー"でもエキセントリックな役でしたが、当時は可愛いながらも危うい感じに惹き込まれましたが、時が経ち、堂々とした出立ちと時が刻まれた事による美しさは完璧で、狂気と悲しみの両方を絶妙な匙加減で魅せる演技はまさに"サイコ"…多分、この役は彼女にしか出来ないでしょう。

ボカシが取れ全てが明らかとなった上でのラストシーンの重みは格段の違いがあります。

決して万人に受ける作品ではありませんし、積極的にオススメという訳でもありません。

でも…凄いよ…観た方がいいよ…って、ちっちゃい声でススメます…凄いよ…