都部さんの映画レビュー・感想・評価 - 8ページ目

スランバーランド(2022年製作の映画)

3.1

設定だけで判断するならそれは子供向けの映画のようではありますが、作品としての本質は『子が親の死を受け止める』『大人になったり立場を得たことで、好きな夢を見られなくなった人々に対する肯定』というビターな>>続きを読む

もしも昨日が選べたら(2006年製作の映画)

2.8

日本人が寓話的なファンタジーと聞き、最初に思い浮かべるのは『世にも奇妙な物語』でしょうか。思えば邦画において寓話的な物語は少ないように思います────本作は自分の人生の速度を調整出来るようになった男の>>続きを読む

この世に私の居場所なんてない(2017年製作の映画)

3.0

『貴女より大変な人はいるんだよ』
という文句は基本的にクソで、世界だとか他人だとかの悩みと相対化して偉大なる私の悩みを陳腐化してんじゃねぇよとキレるのは至極正当な怒りなのですが、それが暴力や暴走として
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"Sr." ロバート・ダウニー・シニアの生涯(2022年製作の映画)

3.9

1970年代に低予算映画の王と呼ばれ、反骨精神に満ちた数多く反体制映画を世に送り出したロバート・ダウニー・シニアの生涯を彼と彼の息子であるロバート・ダウニーJrの手により映し出すドキュメンタリー。>>続きを読む

トロール(2022年製作の映画)

2.7

本作は人類による環境破壊とそれに対する自然の抵抗という社会的テーゼを民話であるトロールに当て嵌めた装いの作品となっている。
実在する民間信仰を絡めた独自性と優秀なCGIにより顕現するトロールがノルウェ
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私はゴースト(2012年製作の映画)

3.2

海外資本で1万ドルの長編映画を撮る事はほぼ不可能に近い──アストロン6とか例外はある──のですが、主演は実質一人×低予算×屋敷内という限定的な舞台設定を巧みに弄び、『死とは?』『幽霊とは?』と人間の心>>続きを読む

この子は邪悪(2022年製作の映画)

1.6

本作は端的に『脚本が酷い』の一言に尽きて、不気味な雰囲気を伴ったヒューマンホラーかと思えば肩透かしもいいところの三流スリラーである。
序盤の段階で作品の展開は読める上に、それを成立させる為の作品内の理
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ハリエット(2019年製作の映画)

3.0

奴隷としての境遇から逃れ奴隷解放組織 地下鉄道の一員となり、同じ境遇にある黒人達を救済していくというハリエットの物語は史実なりに劇的ではあるが、しかしそのアプローチは史実劇として月並みの域を出ることな>>続きを読む

劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 冥(くら)き夕闇のスケルツォ(2022年製作の映画)

3.3

前作と比較すると作品並びに脚本の完成度は紛れもなく劣るものの、巧みな撮影処理によるゲームエフェクトが齎すアクションの妙や既知のキャラクター同士の掛け合いによるSAO的なエモーショナルなシーンの数々は担>>続きを読む

ザ・メニュー(2022年製作の映画)

3.2

「これ実はミートは人肉でサラダは陰毛とか提供してる人間レストランでしたってオチだろ」と、この手のジャンルのこの手の映画の類型として本作に舐め腐った展開予想を抱えて鑑賞したのですが、予想を裏切って『そっ>>続きを読む

ある男(2022年製作の映画)

4.2

『名前』と『生い立ち』という人間の立ち位置を決定付けてしまう呪縛からの逃避巡る物語は、忌むべき生い立ちから逃げた"偽の谷口大佑"ことXそして在日三世という生い立ちに立たされながらその真相を追う弁護士の>>続きを読む

黒い司法 0%からの奇跡(2019年製作の映画)

3.7

罪はその人間の『色』を見れば分かると言わんばかりの横暴が罷り通る南部社会において、誠実かつ懸命に死刑囚の冤罪を晴らそうと身を粉にするブライアンの姿は作中の周囲のみならず観客の感情すらも揺さぶるに充分な>>続きを読む

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)

3.4

前作前々作以上に現実と虚構の融和を前提とした物語にも関わらず、命題に対する踏み込みは甘く、年月を経た上でのアフター震災文学の側面を帯びた作品としては守りに入りすぎている印象がやはり強い。物語から誠実や>>続きを読む

DAICON FILM版 帰ってきたウルトラマン(1983年製作の映画)

4.3

『シン・ウルトラマン』のAmazonプライム独占配信に追随する形で配信開始された本作、改めて目にしてもその特撮映像作品としてのクオリティの高さは言うまでもなく、特にその特撮美術に目を引かれるものがある>>続きを読む

さがす(2022年製作の映画)

4.9

今年2022年に公開された邦画の中でも本作は屈指の出来であり、社会的なテーマを弄びながらもエンタメとして旨味のある怒涛のツイストを繰り返して、最後には重厚かつ味わい深い結末へと至る手腕は実に見事。>>続きを読む

ホラーマニアvs5人のシリアルキラー(2020年製作の映画)

2.3

C級映画としては申し分ない出来ではある一方で、邦題/原題共にあるジョエルのホラーマニアの設定がまるで活かされないのが残念ではあり、殺人鬼達に追い回される不幸な男という構図に協力者の殺人鬼キラー女が絡む>>続きを読む

こちら葛飾区亀有公園前派出所 THE MOVIE2 UFO襲来!トルネード大作戦!!(2003年製作の映画)

2.4

本作が前作と比較して明らかに映画的な駄作と化しているのは、悪い意味でのこち亀におけるリアリティラインの弄び方や前作には存在していた映画的な快楽の著しい欠如が大きな要因としてあることは否めないでしょう。>>続きを読む

今日から俺は!! 劇場版(2020年製作の映画)

2.8

福田雄一監督の作品には一定の苦手意識があったのですが、本作は中々に楽しい映画で作品としてのメリハリと福田作品に伴う作家性が上手くエンタメとして昇華されている一作。
主人公である三橋と伊藤の日々を面白可
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ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル(2017年製作の映画)

3.6

1995年に公開された『ジュマンジ』の事実上のリメイクとなる本作、テレビゲームに形を変えたジュマンジの中に閉じ込められた四人のティーンエイジャー達は、本来の自分とは真逆の姿でゲームクリアを目指す。>>続きを読む

キャンディマン(1992年製作の映画)

3.8

黒人を取り巻く人種差別問題をかような映画でアプローチとして用いているのは当時を鑑みると斬新で、その上で古典的なスラッシャーとしてのプロットを忠実にこなしているので作品としての強度が高く、完成度という意>>続きを読む

バイオレンスアクション(2022年製作の映画)

1.5

本作は作品としてのダサさ/映像としてのダサさと大きな汚点が二種存在するのだが、私はデフォルメ化されたトリッキーなキャラクターが命を軽妙に葬っていくパルプ的なフィクションなる作風自体はむしろ好ましく思っ>>続きを読む

エボリューション(2001年製作の映画)

3.6

まさしく絵に書いたようなB級SFコメディで具合が良かったですね。
2000年代初頭の匂いが香るCGにより登場するエイリアンの数々はどれもグロテスクなナイスデザインで、生理的嫌悪感を醸す拘りが造形の端々
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台風クラブ(1985年製作の映画)

3.5

子供と大人の境に立つ存在が抱える果たされない情動の数々を、枠の中に無理やりに閉じ込めたものを『青春』と一言で形容するのが大人の手つきならば、本作はその対極に位置する無秩序な混沌を意図的に演出しきった作>>続きを読む

県警対組織暴力(1975年製作の映画)

3.8

『仁義なき戦い』により発起した東映による実録映画路線の中で制作された極道映画の一端で、本作は地方都市における警察と極道の癒着関係が極道一掃の流れの煽りを受けて、やがて破綻していく義理と人情の刹那的な滅>>続きを読む

ヴィレッジ(2004年製作の映画)

2.6

シャマラン監督の佳作『ヴィジット』で監督を見直したので、バランスを取る前に今度は酷い方の映画を見ておくかということで鑑賞──本作もまたネタバレ厳禁の映画なので、講評の際にその内容に対する言及のし過ぎは>>続きを読む

ヴィジット(2015年製作の映画)

4.1

最新作の『OLD』が中指を立てざるを得ない出来だったので戦々恐々でしたが、本作は非常に好みかつ面白い作品でしたね。

疎遠がちな祖父母夫妻の元へと帰省する兄弟達は、母と祖父母の和解を題材にドキュメンタ
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聖なる証(2022年製作の映画)

3.7

狂信的な信仰とそれが横行する抑圧的な環境。
その犠牲となる無垢なる子供の物語の悲劇性というのはいつの時代も変わらず、閉鎖的な環境の中であくまでも医療で子供を救おうとする看護師のドラマは重厚ながらも淡い
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アイズ ワイド シャット(1999年製作の映画)

3.0

『時計じかけのオレンジ』『フルメタル・ジャケット』などで知られるスタンリー・キューブリックの遺作として知られる本作、妻とのセックスレスな日々に頭を抱える開業医ビルの眩惑的な性体験のを描く一作。

キュ
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タクシードライバー(1976年製作の映画)

3.9

戦争帰りで極度の不眠症に悩まされる男:トラヴィスはタクシー運転手の仕事を営み始める。堕落した人々が集う街で孤独に苛まれる彼は、運命の相手を見つけるのだが………名匠マーティン・スコセッシの代表作。

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こちら葛飾区亀有公園前派出所 THE MOVIE(1999年製作の映画)

3.2

秋本治氏の代表作『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の記念すべき劇場版第一作、弁天小僧を名乗る爆弾魔による連続テロの解決の為にFBIより派遣された爆弾解体のプロフェッショナル 星野リサを迎え、両津勘吉を初>>続きを読む

フォレスト・ガンプ/一期一会(1994年製作の映画)

3.9

ウィンストン・グルームの名著『フォレスト・ガンプ』を原作としたロバート・ゼメキス監督による実写映画。純真な心を持つフォレスト・ガンプ、アメリカ史を駆け抜けた彼の激動の人生を追う。

万人向けの名作映画
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激突!(1971年製作の映画)

4.1

荒野にて車を走らせるセールスマン、たった数度の追い越しによって彼は巨大トラックに付け狙われることとなる……弱冠25歳のスピルバーグ監督の長編デビュー作。

背後から迫ってくるトラックに追い回されるとい
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デイ・シフト(2022年製作の映画)

3.6

吸血鬼が存在する世界、清掃員を務めるバズの本職は吸血鬼ハンター。
娘の学費を支払う為にいつもの様に吸血鬼を殺したバドだったが、彼が殺したのは土地を収める大物吸血鬼の関係者で……。

Netflix配信
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仮面ライダーW(ダブル) FOREVER AtoZ 運命のガイアメモリ(2010年製作の映画)

3.8

平成仮面ライダーシリーズ第11作に当たる仮面ライダーWの劇場版。
ファンからは仮面ライダー映画最高傑作と声高に言われる本作だが、その評価も的を外しているとは言い難い出来。

冒頭から本作の敵役(かたき
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ハドソン川の奇跡(2016年製作の映画)

3.3

奇跡的な生還劇として知られるUSエアウェイズ1549便不時着水事故、通称『ハドソン川の奇跡』と呼ばれる事件、その真実を映画化。

第一に作品のメインアプローチは語り部であるチェスリー・サレンバーガー機
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ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー(2022年製作の映画)

3.6

追悼映画としては申し分ない出来。
前作『ブラックパンサー』の主演を務めたチャドウィク・ボーズマンの死を物語の一部として組み込み、代役やCGによる代替処理を行わず現実の死を虚構の中でも蔑ろにしないという
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