都部さんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

アリス(1988年製作の映画)

3.9

原作である不思議の国のアリスはあくまでも物語の元ネタ程度で、本作の実態はといえばシュールレアリスムに基づくグロテスクな世界観での少女の冒険である。幻想嗜好の散文的な物語を、演出を糸として物語の形に継ぎ>>続きを読む

ドラえもん のび太とアニマル惑星(1990年製作の映画)

3.1

1990年代前後の開発問題に対する警鐘としての物語の側面が強い本作は、作品全体が環境保全の為のプロパガンダ的な言い回しに満ちており、社会的メッセージ性の色濃さが良くも悪くも妙な面白さを生んでいるのが自>>続きを読む

ドラえもん のび太と銀河超特急(1996年製作の映画)

2.7

物語の口火を切る役目を果たす銀河超特急を主軸として、それぞれが一つの映画の題材と成り得る三つの魅力的な要素により構成された物語は、その要素のアンサンブルにおいて月並みな失敗している為に見掛け倒しの物語>>続きを読む

ドラえもん のび太の太陽王伝説(2000年製作の映画)

3.4

ドラマとしては『王子ティオの成長物語』として、ユーモアとしては『現代と古代のカルチャーギャップコメディ』として、この一体となった二つの面白さを確保している本作は優等生さながらで、ドラえもん映画特有のS>>続きを読む

ドラえもん のび太と夢幻三剣士(1994年製作の映画)

3.1

まず前提として本作の脚本は大きく破綻している。

藤子・F・不二雄の狙いとしては夢と現を巡る額縁構造の物語の展開にあったのは察せられるが、夢の世界/現実の世界に共存するトリホーの立ち回りの意図を回収出
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ドラえもん のび太のドラビアンナイト(1991年製作の映画)

3.5

旧ドラで見られる作品の鍵となるひみつ道具による場面展開からの入りは導入として優秀で、絵本入り込み靴の基本的な能力とそこからの絵本をバラバラにしたことで生まれる奇妙な御伽噺の混合の画が面白くてこれが本題>>続きを読む

ドラえもん のび太とロボット王国(キングダム)(2002年製作の映画)

2.7

人間とロボットの共生が命題として語られる物語は、ロボットの物語であるからドラえもんの印象的な活躍が事更に多い一作なのだが、題材の重さを避ける為かコメディシーンが煩わしいと感じるほどに多く、作品に沿った>>続きを読む

映画ドラえもん のび太の宝島(2018年製作の映画)

3.1

現代を舞台に航海を趣とした冒険を繰り広げるという切り出しは面白く、それはごっこ遊び的ではあるのだが、そうした遊びに伴う胸の高揚をのび太達の感動と併せて体感させる語りはドラえもんならではの味。

また島
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映画ドラえもん のび太の新恐竜(2020年製作の映画)

2.8

リスペクト元の恐竜及び恐竜2006に引き摺られず、キッパリと一線を引いているように思える物語の筋書き自体は好感が持てる。また未発見の新恐竜を自宅やジオラマで育てるというセンス・オブ・ワンダーを得られる>>続きを読む

アムステルダム(2022年製作の映画)

2.1

シンプルに面白くない。
たとえば豪華なキャストを並べて、たとえばお洒落っぽい雰囲気を演出して、たとえば魅力的な時代設定にして、とそういう装飾としての魅力を面白さとして考慮するならばともかく、あまりにも
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ドーン・オブ・ザ・デッド(2004年製作の映画)

4.5

ゾンビ映画のエンターテインメントとしての全てを要素を的確かつ端的に抑えた金字塔に位置する作品で、ザック・スナイダーによるソリッドな撮影と軽快さと悪趣味さを煮詰めたジェームズ・ガンのコラボレーションの妙>>続きを読む

スウィング・キッズ(2018年製作の映画)

4.1

音楽は国境を超えるというたびたび繰り返されるジャンル映画としての力強い命題を踏まえた上で、それでもそれを良しとしない思想による対立が引き起こした戦争の酷薄さを伴わせることで、韓国映画特有の差異のある >>続きを読む

オッド・トーマス 死神と奇妙な救世主(2013年製作の映画)

3.3

B級映画としては秀作の部類に位置する本作は、幽霊の証言を交えた推理劇と悪霊との幻想的な対立が同居している。CGIによる悪霊の表現は物語に度々 一定のスリルを与えるものとなっていて、そうした悪霊の脅威を>>続きを読む

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)

3.6

閉ざされたコミュニティで生じる人間関係の軋轢が齎す居心地の悪さが絶品の本作は、監督の前作『スリー・ビルボード』にも通じる、個人対個人の不通なる価値観の差異に基づくエゴの応酬が繰り広げられる。

その関
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アントマン&ワスプ:クアントマニア(2023年製作の映画)

3.3

アントマンシリーズで言及されてきた量子世界の実態と真相に迫る物語として幾ばくかの満足感を観客に与える物語ではあるが、シリーズとしての一貫した独自性を欠いている印象は拭えず、フェーズ5の始まりを告げる物>>続きを読む

バビロン(2021年製作の映画)

4.4

『淘汰されるまでが芸術である』

と言わんばかりの盛者必衰の物語はある予定調和的だが、映像として未来永劫に残り得る映画という題材だからこそ、それだけに終わらない命題に対する力強く肯定という形で踏み込め
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牛首村(2022年製作の映画)

1.6

『犬鳴村』『樹海村』に続く恐怖の村シリーズの第3弾である本作は、北陸地方の著名な心霊スポット:坪野鉱泉を舞台とした作品である。
目も当てられない出来だった前二作と比較すると多少はマシな出来ではあるが、
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ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(2014年製作の映画)

4.1

敬愛するジェームズ・ガン監督の名を名実共に一大エンタメ映画監督に押し上げた痛快スペースオペラであり、彼がそれまでの作品で通底してきた人生を正しく綺麗に生きることに失敗してしまった者達の奮起物のある意味>>続きを読む

ザ・ロック(1996年製作の映画)

3.8

地球を自分に都合の良い発破場だと信じているとしか思えない男:マイケル・ベイ監督による長編映画二作目であり、過剰な爆発癖と荒々しくも血湧き肉躍るエンタメ精神が反映された作家性がこれ以上なく功を奏してる秀>>続きを読む

ナイトメア・アリー(2021年製作の映画)

3.2

ウィリアム・R・グレシャムの小説『悪夢小路』の二度目の映像化となる本作は、二時間半という尺を冗長に弄びながらも、退廃的な世界観の構築に長けたギレルモ・デル・トロの手腕により奇妙なフィルム・ノワールドラ>>続きを読む

セッション(2014年製作の映画)

3.9

ジャズ音楽をあくまでの軸として、映画本編で語られるのは音楽に取り憑かれた孤独なる二つの魂の偏執的な狂気と狂気の衝突である。

音楽の天才児と指導者の典型的な作劇から血生臭く脱却した脚本は言うまでもなく
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土竜の唄 潜入捜査官 REIJI(2014年製作の映画)

2.5

アウトロー節の利いた作品を多く取り扱う三池崇史監督と漫画家:高橋のぼるの原作のコラボレーションは、原作の作風をより大衆向けの映像作品とするという意味で功を奏しているが、映画としての面白さに繋がってる場>>続きを読む

ウエスト・エンド殺人事件(2022年製作の映画)

2.5

如何にもクリスティのオタクが書いたような目配せを感じる筋書きは鼻持ちならない気分にさせられますが、パロディコメディを趣きとするミステリ作品としても本作には不足が多く見られ、90分強というお手軽な映像作>>続きを読む

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022年製作の映画)

4.3

非常に奇想天外で痛快な物語でありながら、普遍的な愛の証明の物語でもあるという、インディペンデントムービーの優秀な点とメジャーに遜色ないケレン味を感じさせる一作。
大作映画によりすっかり市民権を得たマル
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そこにいた男(2020年製作の映画)

2.3

2019年5月に新宿歌舞伎町で発生したホスト殺人未遂事件をモチーフとした本作は、SNS上でも話題を呼んだ さながら映画のような例の構図の始まりから、鮮烈な内容を一時は期待させるもののそうした愛憎を語る>>続きを読む

神々の山嶺(2021年製作の映画)

3.6

『人はどうして登山に魅力されるのか』と改めてその命題を観客に投げ掛ける本作は、しかしながらあえて言語化を避けて感覚的に浪漫を語る筋書きとなっており、現実の登山家にも共通するであろう頂きへの渇望をその胸>>続きを読む

ドリーム・ホース(2020年製作の映画)

4.2

人生の過渡期をとうに終えた大人達が、手ずから育てた競走馬に失った情熱を見出すことで第二の人生の豊かさ そして胸の高鳴りを再獲得する物語としてたしかな見応えを感じる作品だった。

数年前までは競馬のこと
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サタデー・ナイト・フィーバー(1977年製作の映画)

5.0

70年代を代表する青春映画の一角であり、ニューシネマの残り香かおる現実の酷薄さと直面を描く暗黒青春劇で、自分を慰めていた仮初の幸せに傷付きながらも別れを告げて、他者と寄り添いながら生きていくことを選択>>続きを読む

パーフェクトブルー(1998年製作の映画)

4.4

今敏監督の出世作である本作は、偏執的に整然と構成された画面の配色や構成の鮮烈さが迸る場面が連続する傑作長編アニメ映画であり、後の作品にも繋がる虚構と現実の壁の消失による計画された個人の迷走をこの頃より>>続きを読む

千年女優(2001年製作の映画)

4.2

今敏が得意とする現実と虚構の融和の面目躍如とも言うべき作品で、様々な時代映画の主役を演じた千代子の半生を役柄の移り変わりとしてシームレスに継続する映像として成立させることで、未曾有にして無二の映像的快>>続きを読む

グッバイ、リチャード!(2018年製作の映画)

2.5

本作は残り僅かの余命と向き合うことを決めた男の迷走をジョニーデップのユーモラスを噛ませた演技により構築された作品である。一方で男の周囲との関係性は散文的に語られるのみで深みがなく、作品は緩慢であるがど>>続きを読む

天外者(2020年製作の映画)

1.6

駄作、と思わず切って捨てることが出来てしまう程度には全ての要素に至らなさを感じる作品というのが率直な感想で、演者贔屓による虚像の高評価と実像の乖離をその完成度からひしひと感じる残念さを拭えない一作。こ>>続きを読む

一度死んでみた(2020年製作の映画)

3.8

思わぬ佳作。約90分の映画ながら大胆な布石の配置とその鮮やか回収により加速度的に面白味を増していく様は非常に小粋で、そこに飽きさせる暇を与えないとばかりに独特なギャグセンスを連続投入していく気概は嫌い>>続きを読む

シャフト(2019年製作の映画)

3.4

アウトロー節の効いた単純明快な筋書きと新旧の価値観が交じ入る親子の小粋な掛け合いの数々により形作られる本作は、治安の悪さに名高いハーレムの街で繰り広げられる捜査劇として平均的な面白味の水準を獲得してお>>続きを読む

ほの蒼き瞳(2022年製作の映画)

3.4

やや古典的ではあるが驚きの真相と納得の結末が保証されたヒューマンミステリーとしては過不足なく、冬季を迎えて雪が降り注ぐウエストポイントで交わされる不可解な死の惨状は知的好奇心を擽るに相応しい。

クリ
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100日間生きたワニ(2021年製作の映画)

2.3

作品の余韻を食い物とする完結後の商業展開の速さを受けて公開前から散々な酷評を受けていた本作。
蓋を開けてみると最低限の作品としての纏まりは感じるそれで、前半のワニ事故死RTA的な語りは30分にも満たな
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