都部さんの映画レビュー・感想・評価 - 7ページ目

ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密(2022年製作の映画)

3.4

鈍重で陰惨とした雰囲気のみが蔓延していたことでエンターテインメント性を削いでいた前作と比較すると、構築された世界観に対する諧謔味と直面する問題の由々しさの塩梅が程よい本作。

たしかに場面場面を取り上
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そばかす(2022年製作の映画)

3.5

Aセクシャル/ロマンスを題材とした映画というのは、セクシャルマイノリティという文字並びから大衆がまず連想する『同性愛』を命題とした作品と比較すると未だに数は少なく、私個人も若干その毛があるということも>>続きを読む

その男、凶暴につき(1989年製作の映画)

3.6

北野武が初監督/脚本を務めた処女作で後年の『ソナチネ』などに完成度は明確に劣るものの、孤独な苦境に追い込まれた男の悲哀とその散花をニヒルな目線から描くという根本の作風はこの時より通底していると言っても>>続きを読む

Never Goin' Back ネバー・ゴーイン・バック(2018年製作の映画)

1.5

今年劇場鑑賞した映画で『クソつまんねぇな……』と十分単位で最も生々しくその中身のなさ感じた作品であり、A24が犯しがちなそれらしい洒脱な筆致でクソな日常を描けば作品になると思ってる舐めがマジで前面に出>>続きを読む

機動警察パトレイバー THE MOVIE(1989年製作の映画)

3.5

先見の明を作品の鋭利な口火として、明確な近未来性を展開する脚本はSFとしての重厚な魅力に溢れており、語り口こそ軽妙であるものの押井守その人の作風の硬質な点を纏め上げている印象が強い。

後の攻殻機動隊
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メタモルフォーゼの縁側(2022年製作の映画)

4.3

『好きな物を好きだと表明し、そしてその感動を他人と分かち合う』ことの普遍的な創作に対する感動を取り扱いながら、二人の女性が多くの垣根を超えて心の融和を遂げる物語として実に上等な出来。

BL漫画の展開
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ソナチネ(1993年製作の映画)

5.0

北野映画のひとつの到達点とも言える本作は、日本の極道映画の潮流から逸脱したシュールでオフビートな雰囲気を纏いながら、生と死の境界線が曖昧になってしまった男達のひと時の享楽と呆気ない幕切れを同居させるこ>>続きを読む

トゥルーマン・ショー(1998年製作の映画)

5.0

年末なのでマイ傑作選の再鑑賞──最初から自分の人生は誰かの掌の上であると気付いた男が、自分の人生を取り戻す為に奮闘するというプロットは最高の一言で、始まりから締めに至るまで小粋さと毒気と愛嬌を欠かさな>>続きを読む

劇場版デート・ア・ライブ 万由里ジャッジメント(2015年製作の映画)

1.7

ファンムービーとしては及第点/一本の映画としては壊滅的に駄目という、原作付きのアニメ映画が陥りがちな失態作以上でも以下でもない作品ですが、並み居るヒロインズのデートシーンが楽しめるという意味では、見る>>続きを読む

エース・ベンチュラ(1994年製作の映画)

3.3

ジム・キャリーを『マスク』の主演抜擢に繋げた出世作として知られる本作は、その前評判通りにジム・キャリーのコメディアンとしての真価が猛烈なまでに発揮された作品である──天井知らずの高揚感を全身で表現する>>続きを読む

ディア・エヴァン・ハンセン(2021年製作の映画)

1.5

個人的には『不出来』の一言で、ミュージカル/ミュージカル映画/劇映画とそれぞれの方向性から別口に評価しても、そのどれもが至らない出来として終始しているという印象。死人に口なしとばかりに尊厳なく死人を体>>続きを読む

アンテベラム(2020年製作の映画)

3.7

南北戦争最中のアメリカ南部の綿花畑で黒人奴隷として重労働を強いられているエデン。ある悲劇に見舞われた彼女は、それを機に奴隷仲間と脱走を企てる。一方、社会学者で人気作家であるヴェロニカは招かれたニューオ>>続きを読む

フォックスキャッチャー(2014年製作の映画)

3.6

こうした実話を題材とした作品はどうしても表現の幅が縛られる為に監督の地力が試されがちだが、史実劇としての『完成度』という点ではかなり上出来のそれであるように思う。本作は名誉と栄光を前にして拗れた承認欲>>続きを読む

ホーンテッド 世界一怖いお化け屋敷(2019年製作の映画)

2.0

粗筋以上の工夫が見られない90分に渡る作劇は大いなる退屈を招き、トリッキーでもスラッシャーでもゴアでもない至極半端な人体損壊描写が齎すのはその場の凌ぎの蹂躙であり、それは決して作品の完成度に帰依するこ>>続きを読む

マウス・オブ・マッドネス(1994年製作の映画)

3.8

本作はカルト映画を数多く制作したジョン・カーペンター監督の代表作で、とあるジャンル映画なのですが特にそれに関しての事前の知識を必要とせず、人間が相対する根源的な恐怖を夢か現かの曖昧な境界線の上で映像と>>続きを読む

そらのおとしものFinal 永遠の私の鳥籠(エターナルマイマスター)(2014年製作の映画)

1.5

酷い。本当に酷い。シリーズ最終作と銘打たれた本作ではあるが、実情は原作の最終エピソードのイカロスの告白シーンを冒頭と結末に分割して配置した構成で、間の10分弱を埋めるのは最終作に相応しいとは言えない月>>続きを読む

劇場版そらのおとしもの 時計じかけの哀女神(エンジェロイド)(2011年製作の映画)

2.7

劇場版限定ヒロインが辿る道は非業と相場が決まっているのですが本作もそれに類するもので、前半はアニメ1.2期の総集編を日和の視点を交えながら描くことで彼女のキャラクターを立たせ、後半は束の間の日常とそら>>続きを読む

ビート・パー・MIZU(2019年製作の映画)

2.5

生まれつき周囲の音のBPM値が分かってしまうという主人公の設定は面白いが、設定以上の物語は展開されず、主人公の心理的な壁の解消もそれらしい音楽と状況により安直に流されて完結してしまっている印象。

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海へ行くつもりじゃなかった(2017年製作の映画)

3.5

自分の人生に関与しないはずの他人との奇妙な交差に対するロマンチズムというのはあると考えていて、その一瞬の交差はそれが一瞬であるからこそ無二の価値があり、良くも悪くも『身内』という括りで完結する雁字搦め>>続きを読む

川っぺりムコリッタ(2021年製作の映画)

5.0

2022年公開映画:邦画の中では本作が一番好きな映画です。
綺麗な生き方が出来ない人間達が、人間としての良し悪しを惜しみなく晒しながら、緩慢な時間が流れる幻想的な現実で向き合うのは『死』という人生の命
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ブラックアダム(2022年製作の映画)

3.3

昨今 内部事情が混迷を極めるDCEUの11作目に位置する本作──怒りの行き場を失った復讐鬼:ブラックアダムにドウェイン・ジョンソンを迎えたことで、荒々しい力の化身としての人物設定の説得力は充分。彼が暴>>続きを読む

スリザー(2006年製作の映画)

3.8

敬愛する作家の一人として私が強く師事するジェームズ・ガン監督の初監督作品──トロマフィルムで培われたエログロナンセンスの味付けはこの頃から健在で、生理的嫌悪感を掻き立てる抜群のモンスタービジュアルと気>>続きを読む

ナイブズ・アウト:グラス・オニオン(2022年製作の映画)

4.7

前作:『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』を鑑賞して、このシリーズに見事に心を奪われた身としては試写会の招待は喜ばしかったのですが、前作の斬れ味に匹敵する作品が果たして見られるのかという一抹の不>>続きを読む

THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画)

4.3

原作未読の鑑賞による所感なので、国民的バスケ漫画の映画としてではなく一本の映画として見た時にどうだったかの話になるのですが──非常に細部まで拘り抜かれた良質な3DCG映画で面白かったです。

懸念され
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ニトラム/NITRAM(2021年製作の映画)

3.8

私が今年公開された映画の中でも本作を滅法好ましく思うのは、本作が『何故 君はそんなことをしたのか?』と問いかけるような内容ではなく、あくまで観測者の視点で彼はその事件に至るまでどのように生きてきたのか>>続きを読む

ゾンビーワールドへようこそ(2015年製作の映画)

2.9

本作は玉石混交のゾンビ映画の中では比較的 B級映画としての体裁が整えられている作品ではあるが、挿入されるジョークの数々は悪趣味で下品極まりなく端的な不快感を催す物ばかりで、ゾンビ映画に付き物なゴア描写>>続きを読む

神は見返りを求める(2022年製作の映画)

4.0

𠮷田恵輔監督の作品といえば、大傑作『ヒメアノ〜ル』の衝撃から最新作の本作に至るまで人間の陰湿で最低な暗部を克明に描く一見すると性悪説的な筆致が見られる作家で、しかしながらその斬れ味は凄まじく またただ>>続きを読む

イコライザー(2014年製作の映画)

3.4

今やジャンルの括りとなった、温厚な中年が実は歴戦の猛者で……というナーメテーター映画の走りとなる本作。デンゼル・ワシントン演じる紳士的な壮年のマッコールが、殺しのシークエンスを迎えると粗暴かつ容赦なく>>続きを読む

哀愁しんでれら(2021年製作の映画)

3.3

良い意味で精神を逆撫でする描写の執拗な重ね方が色濃く印象に残る作品で、さながら御伽噺のように良い母/良い父であろうとする姿がひたすらに空回り、そして最終的には多くの命を奪うことになる大事件に発展すると>>続きを読む

はい、泳げません(2022年製作の映画)

4.3

私は本作を鑑賞してマジで泣いた──なんて情緒も何もない言い回しだろうか──のですが、これには理由がありまして。私は『悲しむべき時に上手く悲しめなかった人間が、薄情者であるとか無慈悲であると他人に非難さ>>続きを読む

RED/レッド(2010年製作の映画)

3.5

ブルース・ウィリスを初めとした壮年の俳優達が大暴れするというプロットはそれだけで胸躍るものがあり、期待通りにド派手な活劇を繰り広げる贅沢さが本作の映画としての何よりの強みでしょう。まだ味方の面子が揃わ>>続きを読む

揉めよドラゴン 爆乳死亡遊戯(2020年製作の映画)

1.8

ピンク映画はおよそ四年振り──18歳になった時に何気なく見れるなら見るか〜と思って実際に見た際にあんまり面白くなかったので避けていた──でしたが、どうやら本作は奇作の部類らしく個人的にはあまりにま下ら>>続きを読む

隣のヒットマン(2000年製作の映画)

3.2

思わぬ掘り出し映画でしたね──隣人の殺人鬼のトラブルに巻き込まれる小市民の姿を描く喜劇として無理のない範囲で展開の手数が多く、またシチュエーションコメディとして後半の状況の混迷ぶりは中々楽しい。
登場
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ザ・ハント(2020年製作の映画)

3.6

ドミノ倒しの如く死が連鎖する序盤のシークエンスは最高の一言で、物語における主要人物は死ねば死ぬほど良いという定説を信仰している私からすると、『誰がこの話主人公なのか?』という無慈悲な死による移り変わり>>続きを読む

未来戦記(2022年製作の映画)

2.0

昨今 アジア映画の映像のレベルは順当に向上している印象ですが、香港映画である本作もその例に漏れず、ハリウッドに顔負けしないCGIを駆使したSF作品のビジュアルとして強固さを持つ場面が数多く展開されます>>続きを読む

BURN THE WITCH(2020年製作の映画)

3.6

久保帯人氏の作品で見受けられる 魅力的なキャラクタービジュアル/思春期の心を擽るような横文字の羅列/コミカルとシリアスの同居したユニークな掛け合いなどの作家性が持つ魅力を申し分なく閉じ込めた作品であり>>続きを読む