都部さんの映画レビュー・感想・評価 - 6ページ目

スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち(2020年製作の映画)

2.6

女性スタントの仕事に対する弛まぬ努力と熱意が、普段は影武者に徹する本人達の口から語られるという点では価値あるドキュメンタリーである。しかし時代やその性質が本編中まるで統一されない散文的な語り口と女性賛>>続きを読む

リベンジ・スワップ(2022年製作の映画)

3.6

単純な勧善懲悪の復讐劇のようでひと味の捻りが効いているのは面白く、前半と後半で物語の構図が大きく変化する仕掛けは、初期設定の面白さに甘んじずに二転三転と物語を掻き回すことで観客を楽しませる愉快な脚本で>>続きを読む

キスから始まるものがたり3(2021年製作の映画)

2.3

三部作の完結編ではあるが、本作は前二作からの作劇の積み重ねを投棄した典型的な破局と取って付けたような布石に基づく未来への展望で充満しており、人間ドラマの曇りが晴れた事で生まれた風通しの良さを感じる爽や>>続きを読む

キスから始まるものがたり2(2020年製作の映画)

2.7

前作の表現上の問題点の多くは改善されており、それが単なる学生間の月並みな恋愛劇であるという点を頑張って無視すれば、喜怒哀楽がひどく明確な映画として呑み込める作品となっている。

また改めて主演を務める
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キスから始まるものがたり(2018年製作の映画)

2.6

古典的なティーンズラブコメディとしての面白味は確保しているものの、時代錯誤を覚える男女描写は浅慮でそこで生じる性別の加害性を描きながらも、それを向き合うべき問題として処理せずに放置する物語構造には『古>>続きを読む

タイラー・レイク -命の奪還-(2020年製作の映画)

3.7

アクションの名手:ルッソ兄弟製作による本作は、やはり複数種の魅せるアクションシーンの多くで形成されており、クリス・ヘムズワースの演者としての特性に基づく力強い活劇を重厚感たっぷりに、これでもかと展開し>>続きを読む

クワイエット・プレイス 破られた沈黙(2021年製作の映画)

3.2

前作からのたしかなスケールアップを感じさせるのは変わる変わるな舞台での派手な攻防の数々で、一瞬の油断が命取りという状況設定のスリルは前作から大きく削がれているものの、劇場体験特化型のホラー映画としての>>続きを読む

サイレント・トーキョー(2020年製作の映画)

1.4

第一に作中情報の交通整理の下手さと主題の描き方の拙さに目がいく。

政治的主張を帯びた真剣味を求める物語なのかと思えば、物語の大半が荒唐無稽な筋書きで舗装されている様相には甚だ困惑させられる。また反戦
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エクソシスト(1973年製作の映画)

3.5

現代の機敏な映画脚本に慣れた身からすれば、序盤から中盤に掛けての何かが起きそうで起きないが繰り返される緩慢な物語の進展には困惑させられるが、本作の主題が祓魔を機会とした語り部:カラス神父の信仰を巡る物>>続きを読む

FYRE: 夢に終わった史上最高のパーティー(2019年製作の映画)

3.5

インフルエンサーは決して悪ではないように思う。
人は信用に置ける人間の口コミを信頼しがちだし、そこに企業が目を付けて流行を操作することは何も今に始まったことではない。それが職種として名称を得たのは比較
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恋する寄生虫(2021年製作の映画)

3.4

本作のこの荒唐無稽なプロットを成立させているのは林遺都と小松菜奈の主演二人による演技力と存在感で、非現実性を意図するような劇伴の弄び方や画作りの数々も作品の形成の力添えに尽力しているが、真相発覚による>>続きを読む

ヒッチハイカーKAI:手斧のヒーロー、その光と影(2023年製作の映画)

3.2

問題ではなく問題の取り扱い方が興味深いドキュメンタリーだ。

本作はある暴行事件を手斧という凶器を用いる事で食い止めた男が祭り上げられた当時を巡るドキュメンタリーだが、このカイという男がどこか危うい存
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ウィジャ・シャーク 霊界サメ大戦(2020年製作の映画)

1.1

衝撃的な結末がサメ映画界隈で大きな話題となり時のサメ映画となった本作だが、終盤に配置された十秒程度しかないウケ狙いのワンシーンを誉めそやして評価する悪い意味での馴れ合いのノリに甘んじてるから、何年経っ>>続きを読む

からかい上手の高木さん(2022年製作の映画)

3.1

原作は中学二年生の日々を繰り返しながらこの男女が交際までの精神的前戯を執り行う話なので、本作はそこから時間も関係性も前進させるという気概を感じるコンセプトなのは劇場化の意義を感じさせるもので悪くない。>>続きを読む

トランスフォーマー(2007年製作の映画)

3.0

マイケル・ベイ映画の脚本に改めてIQを求めるのは馬鹿馬鹿しいのでそこはまだ百歩譲るとして、物語の鈍化を引き起こす余分な下りがとにかく多くて、明らかに過剰な映像尺の作品である点は看過出来ない。

まず敵
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モータルコンバット(2021年製作の映画)

3.0

『もはや真田広之の映画じゃねぇか!』と海外で活躍する日本俳優による作品の美味しいとこ取りに喝采を送る一方で、フレーバーテキスト程度の設定を軸にした格闘ゲーム原作相応の、よく言えばシンプルな脚本に期待以>>続きを読む

マチルダ・ザ・ミュージカル(2022年製作の映画)

3.1

『チャーリーとチョコレート工場の秘密』の原作者であるロアルド・ダールの原作及びミュージカルを土台としてNetflixにより制作された本作は、色彩豊かな画面構築と少女少年達による見応えのあるミュージカル>>続きを読む

残穢 住んではいけない部屋(2016年製作の映画)

2.9

物見遊山気分でだらだらだらだらと長話をしやがってよ……と恐怖体験を題材とした映像作品にあるまじき緊張感に欠ける構成には苦言を呈さずにはいられませんが、地に足の着いた生活音に混じる異音や空間が作り出す恐>>続きを読む

ずんだホライずん(2017年製作の映画)

2.6

世界初のボーカルシンセサイザーを使ったミュージカルアニメである本作は、『ミュージカル』というジャンルを良くも悪くも良いように扱うことで、原作に忠実な混沌たる展開犇めく短編アニメとしての体裁を整えた一作>>続きを読む

バタリアン(1985年製作の映画)

3.9

本作はゾンビ映画界の始祖として知られるジョージ・A・ロメオの処女作『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』のパロディ映画であるが、前提を知らずとも大いに楽しめる痛快無比なゾンビコメディとなっている。

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気狂いピエロ(1965年製作の映画)

3.7

映画を映画たらしめる既成概念からの逃避と作劇上の語り部の逃避行が同期することで語られる本作は、監督当人の見識の深淵から掘り出される即興演出による弛まぬ斬新性で形作られた名作である。
引用の洪水が物語を
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フロム・ダスク・ティル・ドーン(1996年製作の映画)

4.2

最高。殺伐としたクライムサスペンスの導入を斜め上の方向で裏切る中盤の転換点のパルプぶりは痛快で、ゲッコー弟の無軌道な殺意によるヒリヒリとした緊張感が場を支配する前半と無関係に思えた要素の数々が思わぬ形>>続きを読む

灼熱の魂(2010年製作の映画)

4.2

今や『DUNE』の監督として知られるドゥニ・ヴィルヌーヴの出世作であり、某年の外国語映画アカデミー賞の最終候補作にも上がった作品でもあるが、その前評判に恥じない非常に研鑽された完成度を目前とすると『…>>続きを読む

嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん(2010年製作の映画)

3.4

原作を聖典の一つと崇める身としては、メディアミックス化にあたる原作との差異にばかり目がいってしまうのだけれど、そうした良くも悪くもな贔屓目を取り払っても瀬田なつき監督の作家性と原作の悲喜劇性の混合によ>>続きを読む

ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ(2007年製作の映画)

2.8

手段こそ変わり種ではあるが紛れもなく王道の青春映画。酷薄で空虚な現実を現実として受け止められなかった人間が、その拒絶を正当化する体の良い言い訳として出現する比喩的存在と立ち向かうという筋書きは最高に厨>>続きを読む

ゲームマスター(2016年製作の映画)

1.0

クソ。不出来さに憐れみを感じたり同情を抱いたりする気持ちの『クソ』ではなく、行き場のない怒りを唾として路上に思わず吐き捨てたくなるような『クソ』。学生映画の方がまだマシなもの作れますよ。
そもそもが低
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黄龍の村(2021年製作の映画)

3.0

ネタバレ厳禁という謳い文句がされていた本作ですが、監督の作風や傾向を知っている人ならば”それ”は読めなくはない展開で、個人的な所感としては『いつもの』よりは更なる変わり種を期待していたのでその点は残念>>続きを読む

嘘八百(2017年製作の映画)

2.0

シンプルにさして面白くなくない。
いわゆるケイパー映画の形式に則ってはいるものの最低限のお約束要素を熟すばかりで作品としての奥行は皆無に等しく、『騙し』を主軸とした物語であるにも関わらず最後は技術頼り
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マイ・ブロークン・マリコ(2022年製作の映画)

3.3

漫画とは総合芸術なので、作品の性質上 特定の画風/筆致で描かれることで十二分の魅力が引き出されている作品というのはどうしても存在するのだけれど、本作の原作はコレにあたるように思う。

日常と隣り合わせ
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劇場版 HUNTER×HUNTER The LAST MISSION(2013年製作の映画)

1.5

前作:緋色の幻影と比較するとオリジナル要素である『怨』の存在が作品を形作る本作は、本来この時系列では果たされない原点回帰としての釣竿やヨーヨーといった武装、またそれまでに登場したキャラクター達を交えて>>続きを読む

劇場版 HUNTER×HUNTER 緋色の幻影(ファントムルージュ)(2012年製作の映画)

1.7

原作の要素や台詞を掻い摘む形で『原作っぽさ』の再現性を上げようとする作りは劇場版として堅実ながら話としての面白味がなく、またそのオリジナリティの欠落から印象としては原作エピソードの粗末な再放送のように>>続きを読む

デート・ア・バレット ナイトメア・オア・クイーン(2020年製作の映画)

2.0

映像化する行為に意義があるとでも言いたげな空虚な内容に腹が立ち、まだ余白があった前編と比較すると後編は明かされるだけ明かされた割に精々仄めかしい程度の真相は客の神経を逆撫でする作りで、特定のキャラクタ>>続きを読む

デート・ア・バレット デッド・オア・バレット(2020年製作の映画)

2.5

キャラクターが先行き不透明な状況に晒されるというシチュエーションの面白さはあるが所詮はそれだけの話で、本編にさしたる中身がないのはまあ苦言を呈さずにはいられない。『隣界とは?』『この話は本編にどう関与>>続きを読む

ホワイト・ノイズ(2022年製作の映画)

3.7

前評判ほど難解な印象は覚えず、むしろ至極単純で普遍的な命題をユニークで彩っている作品であるように感じる。現代にも通ずる陰謀論/薬物依存/環境破壊/家庭内不和などの要素を贅沢に扱いながらも、しかしながら>>続きを読む

LAMB/ラム(2021年製作の映画)

1.9

喩えると『起承て』の段階でそれらしい終幕を迎える本作はやはり数多くの点から不足感を覚える不完全な出来である一方で、説明を最小限に抑えたからこそ母という存在が子供に与える無性の母性愛に垣間見える狂気を表>>続きを読む

かがみの孤城(2022年製作の映画)

3.8

約550頁の長編小説を120分以内に纏め上げることは当然の如く容易ではないのですが、その点はベテランである原恵一監督が適切に取捨選択している印象で、『ここカットされたの!?』といった残念さは多分にあり>>続きを読む