ヒラツカさんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

サンクスギビング(2023年製作の映画)

3.7

イーライ・ロスが『グラインド・ハウス』の中で披露した予告編パロディを、ほんとうに一本の映画にしちゃったという企画。それはつまりは『ハロウィン』のパロディである。「スラッシャー」という無難なジャンルに安>>続きを読む

怪物(2023年製作の映画)

3.5

冒頭の物語は、一見すると「いじめ」や「体罰」、「モンスターペアレント」みたいな、これまでいろんなドラマでこすりたおしてきた社会問題を扱っているように見える。でも、そもそもこんな物騒なタイトルで、教授の>>続きを読む

正欲(2023年製作の映画)

3.1

朝井リョウの小説は、スマートさや合理性みたいなものが通念にあるいまの若者の間に存在する「ウソ」を率直に暴いて言語化してしまうという仕掛けが多いと思っている。僕はこの作家の積極的なファンというわけでもな>>続きを読む

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)

4.2

前作は配信で観たところ「映像もキャスティングも最高なのになんとなく面白くなかったな」という評価になっちゃったので、今回はちゃんとIMAXへ。そしたらぜんぜん面白かった。もともと、乗り物やガジェットの「>>続きを読む

ドミノ(2023年製作の映画)

3.4

『マイアミバイス』みたいなアウトロー捜査モノかと思ったら、早々に『デスノート』とか『SPEC』みたいな話になっていき、次第に『インセプション』とか『シャッターアイランド』の様相を呈したと思ったら、結局>>続きを読む

ボーはおそれている(2023年製作の映画)

4.6

アリ・アスターの最新作は「ぜんぜん実家に帰れない」という、もはやホラーでもない、ジャンルレスの怪作。自宅、医師家族、森の劇団、実家、という4幕構成で、それぞれに個性的な展開が繰り広げられるが、僕はさい>>続きを読む

瞳をとじて(2023年製作の映画)

2.4

ビクトル・エリセ、特別なスタイルがあるわけでもなく、うーん、正直、なぜ映画界において重要な存在なのか、よくわからんかったな。「ミニシアター系」(この言い方あんまり好きじゃないが)の最たるもの、っていう>>続きを読む

ダム・マネー ウォール街を狙え!(2023年製作の映画)

3.6

2021年に起こった、ゲームストップ社の株が異常に急騰した事変の話。僕はこういう金融経済まわりのニュースに疎く、これはぜんぜん知らないエピソードだった。というか、そもそも昔から、なぜ銀行や証券会社が儲>>続きを読む

REBEL MOON ー パート1: 炎の子(2023年製作の映画)

3.3

ザック・スナイダーの新作。ネトフリと組んだら『アーミー・オブ・ザ・デッド』といい本作といい、ちょうどよい塩梅の映画が続いていていい感じ。宇宙を舞台にしたレジスタンスで、いろんなクリーチャーが登場するに>>続きを読む

セーラー服と機関銃(1981年製作の映画)

3.7

テレビで放映されてたのでなんとなく観始めたら、最後まで目が離せなくなってしまった。監督の相米慎二は、もともと日活ロマンポルノ出身らしい。セックス・シーンを定期的に差し込めば他は何をしても良いので、森田>>続きを読む

ナイアド ~その決意は海を越える~(2023年製作の映画)

3.5

しわしわのアネット・ベニングとジョディ・フォスターが、フロリダ海峡を横断する外洋スイム達成の夢を追う話。彼女たちがオスカーにノミネートされたのでなんの気なしに観てみた。「アンビリーバボー」の再現VTR>>続きを読む

死霊館のシスター 呪いの秘密(2023年製作の映画)

3.0

ベラ・ファーミガ特有の奇妙で底しれない魅力を上手に受け継いだタイッサ・ファーミガが、前回に引き続き探偵役として大活躍をするシリーズの最新作。コマーシャル・エンタメ・ホラー映画は、どれだけ観たことない映>>続きを読む

哀れなるものたち(2023年製作の映画)

4.5

一個前に実写版の『リトル・マーメイド』を観たからなのかもしれないけれど、つまりディズニー・プリンセス・ストーリーだなと思った。狭いコミュニティに閉じ込められた姫が「世界を見たいの」と言い出して、愉快な>>続きを読む

リトル・マーメイド(2023年製作の映画)

2.9

足が生えてから馬車に乗せられたシーンで、歌わない!?ミュージカルにおいて、突然歌い出す違和感を誤魔化すために、これまであらゆる先人たちが苦労してきたのに、あっさりと拒否しちゃうのがパンク。僕は原作の2>>続きを読む

バーナデット ママは行方不明(2019年製作の映画)

4.1

リチャード・リンクレイター監督って不思議ですよね。『ビフォア』シリーズや『ウェイキング・ライフ』のようなスマートで哲学的な作品を撮る一方で、『スクール・オブ・ロック』や『がんばれ!ベアーズ』みたいな量>>続きを読む

ゴールデンカムイ(2024年製作の映画)

2.9

最新の『ミッション・インポッシブル』で「なんだよ二部作かよ」と怒ってる人がいて、「そんなに目くじらたてなくてもいいじゃんか」と思っていたが、今回の作品に限ってはその気持が分かってしまった。だって、あの>>続きを読む

Saltburn(2023年製作の映画)

4.0

『プロミシング・ヤング・ウーマン』では、男性優位の社会に起きる性加害問題をコミカルかつ痛烈に描いたエメラルド・フェネル監督、最新作はこれまた一筋縄ではいかない怪作を繰り出してきた。映画の冒頭は『君の名>>続きを読む

EO イーオー(2022年製作の映画)

2.9

ポリティカルな皮肉が詰まった寓話を想像していたんだけど、思いのほか表現主義を多用する芸術映画だった。どの画を切り取ってもポストカードになりそうに美しい。風車のプロペラといっしょにぐるっと回るカメラが、>>続きを読む

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)

3.4

淡々と父娘のバカンスの様子が描かれるという、ソフィア・コッポラの『SOMEWHERE』みたいな話なんだけど、他に類を見ないポイントが、映画全体が常に不穏な死の気配に満ちている、というところだ。後半で誰>>続きを読む

ノースマン 導かれし復讐者(2022年製作の映画)

3.1

血脈が重くのしかかる、シリアスでマッチョなアクション映画。先入観と比べると思いのほかジャンル映画に寄っていたので、副題は「導かれし復讐者」じゃなくて「ノースマン ニューブラッド」みたいなのでも良かった>>続きを読む

ブルービートル(2023年製作の映画)

3.5

笑って泣ける、とっても優れたヒーロー映画だった。なんといっても主人公一家が魅力的で、この『男はつらいよ』みたいな人情味あふれる家族というのは、日本人の感性にぴったりな気がするんだけど、これをビデオスル>>続きを読む

グランツーリスモ(2023年製作の映画)

3.1

堂々たる正当スポ根映画であり、前例なき挑戦、親の不寛容、はみ出し者のメンターなどなど、前半からすでに感動の予感が充満していたが、結果としてその通りに心が熱くなる展開となった。ただ僕がちょっとだけ気にな>>続きを読む

バイオレント・ナイト(2022年製作の映画)

3.2

サンタクロースが幸せなクリスマス・ソングに乗せて敵をばったばったと殺戮していくというアイデアは楽しいが、『キック・アス』でクロエ・グレース・モレッツが「バッド・レピュテーション」に乗せて悪者のアジトに>>続きを読む

クエンティン・タランティーノ 映画に愛された男(2019年製作の映画)

2.6

タランティーノの軌跡を、『レザボア・ドッグス』から『ヘイトフル・エイト』までの8作に分けて、関係者たちのインタビューから追っていくドキュメンタリー。正直、これ、映画館で公開するものなのかな、と思ってし>>続きを読む

カラオケ行こ!(2024年製作の映画)

4.0

ここ最近、『最後まで行く』や『幽遊白書』などで、なかなか他の役者にはできないような演技を披露している綾野剛、本作も彼の独壇場であった。そもそもヤクザの役って難しいと思うんですよね。近年、エンタメの界隈>>続きを読む

アクアマン/失われた王国(2023年製作の映画)

2.8

DCEUに属するシリーズ最新作だが、スーパーマンやバットマン、ワンダーウーマンやフラッシュなどの面々はいっさい姿を見せることがなく、『マン・オブ・スティール』から始まった、「ユニバース」という、キャラ>>続きを読む

福田村事件(2023年製作の映画)

3.7

本作は、『A』『A2』で名を挙げた森達也がはじめてメジャーで手掛けた劇映画であり、どういう演出を行うのか注目だったが、ARATAや永山瑛太、田中麗奈やコムアイなどといったキャッチーな役者たちを集め、教>>続きを読む

笑いのカイブツ(2023年製作の映画)

4.1

伝説の放送作家・ツチヤタカユキの伝記映画。僕はほどほどなお笑いファンではあるにも関わらず、お恥ずかしいことにこの人の存在をそこまで認識してなかった。映画鑑賞後に、原作の自伝的小説を読んだのと、オードリ>>続きを読む

クライムズ・オブ・ザ・フューチャー(2022年製作の映画)

3.6

新しい臓器が生まれる体質の主人公と、それを摘出するライブパフォーマンスを行う医師のカップル。そんな突飛な設定と進行は、大御所監督だから許されるのか、それともこんな発想ができるから大御所なんだろうか。ク>>続きを読む

Winny(2023年製作の映画)

3.4

法廷モノだと『告発』や『フィラデルフィア』が好きで、さいきんだと『シカゴ7裁判』がいい感じだった。このジャンルの面白いところは、大事な判決を争って真剣に戦ってるくせに、裁判の合間の準備中には呑気で放漫>>続きを読む

エクスペンダブルズ ニューブラッド(2023年製作の映画)

2.7

『バービー』でも揶揄されていた「スタローン映画」、そのど真ん中シリーズである『エクスペンダブルズ』の最新作だったが、ここにもポリコレの波が押し寄せていたようで、新メンバーにきちんと女性が加わっていた。>>続きを読む

市子(2023年製作の映画)

3.8

監督の戸田彬弘がインタビューで「(『市子』というタイトルは)ホラー映画に捉えられかねない」と言っているのを読んだ。ポスターやティザービジュアルでも、若干のミスリードを企んでいるところがあった気もするが>>続きを読む

コカイン・ベア(2023年製作の映画)

2.9

動物パニック映画でいうと、昨年観たイドリス・エルバの『ビースト』が、信念も教訓もない、さくっと観られる良作だった。もともとヒッチコックの『鳥』やスピルバーグの『ジョーズ』などといった名作のころから、人>>続きを読む

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)

2.6

フジテレビで10年おきくらいのペースで作られてきたレギュラーシリーズアニメにそこまで馴染みがない一方で、水木しげるの原作漫画で、鬼太郎が墓場から這い出てくるエピソードは読んだことがあるので、本作がどれ>>続きを読む

ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!(2023年製作の映画)

3.9

コンピュータ・グラフィック・アニメなのに、紙の上に油絵の具を置いたような質感の画が動く。ただ、それだけなら『スパイダーマン:スパイダーバース』でも観た。しかし、本作におけるいちばんの特徴は、非対称で気>>続きを読む