ナガノヤスユ記さんの映画レビュー・感想・評価 - 12ページ目

ナガノヤスユ記

ナガノヤスユ記

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ドリーム(2016年製作の映画)

4.5

セオドア・メルフィ侮りがたし。
出勤途中に車がエンストして立ち往生してる3人と警察官の絡み、あのくだりからもう色々絶妙。
あとは『ヴィンセント』もそうだったけど、女性に激情の芝居をさせるタイミングと演
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スペース カウボーイ(2000年製作の映画)

-

地球のためでも愛する家族のためでもない、勿論国なんてもののためでもない、潔いほど歪なロマン。嘘だろいうくらいミニマルな演出で、じじい同士のさわやかな関係だけが記憶に残る。

バード(1988年製作の映画)

4.0

バードことチャーリー・パーカーもしっかりとイーストウッド印のダークヒーローの系譜にいるのだなあ。とても褒められた人間ではないが、「どこにでもある」固有の苦悩の中に身を置きながら、ひとつの正義を為した存>>続きを読む

魚影の群れ(1983年製作の映画)

4.3

相米流のダークヒーロー映画として見たり。
終盤、娘の要請に父が応え、服を着させてもらうシーン。あれはもう、ヒーローがコスチュームを纏う瞬間と同じだ。己の狂気と渾然一体の外的要請なのだ、あれは。
海にた
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15時17分、パリ行き(2018年製作の映画)

4.4

アフガンテロ戦争の終結を活写し米国中心に議論を巻き起こしたキャサリン・ビグロー『ゼロ・ダーク・サーティ』も記憶に新しいけど、イーストウッドの描く対テロ闘争はこれだと。この突発的で偶発的な僅か数分間の戦>>続きを読む

お引越し(1993年製作の映画)

4.3

人間が大人でも子どもでもないものになる瞬間、というか空間、トリップというのかダイブというのか、そういう引越し。おめでとうございます。

はじまりへの旅(2016年製作の映画)

3.5

近ごろの自分の脳みそに素直に従って文化人類史的に考えると(笑)、ジャレド・ダイアモンド言うところの小規模血縁集団が、外圧によって否応なく変化を迫られるその様を、現代家族劇に換骨奪胎したという感じ。
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グレイテスト・ショーマン(2017年製作の映画)

3.3

歌弱すぎ問題。ビルボードトップ500のポップソング見本市みたいなスコア連発していたけど、耳に残った曲はひとつもなく、エンドロールが終わり館内が明るくなった時には口ずさむことすらかなわなかった。
カット
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ミリオンダラー・ベイビー(2004年製作の映画)

4.6

ハネケの『愛、アムール』をみた翌日に、なんとなく、というか多分「尊厳死」という朧い連想で久々に見てみようという気になった。
改めてとんでもなく歪な映画だと思った。あげたいんだか、さげたいんだか、よく分
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愛、アムール(2012年製作の映画)

4.0

私事だけど、『銃・病原菌・鉄』の上巻を読み終えた翌日に見た。
人間もひとつの生き物なら、菌やウィルスもまたひとつの生き物なのだ。僕たちは絶えず生と生のせめぎ合いの淵を、さながら綱渡りで生きていて、落ち
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モンパルナスの灯(1958年製作の映画)

4.3

不遇の芸術家の単なる伝記作品とかではない。搾取への明確な怒り、あるいは恐怖かもしれない。
画商はもちろん、アメリカの資産家も死ぬほど怖い。

とらわれて夏(2013年製作の映画)

3.8

親を親という役割を通してでなく、ひとりの人間として眺めはじめたとき、人間ひと皮剥けるというか、ああ思春期ってそんな瞬間かもなと、そこらへんは妙に納得。
ボニーとクラウドよろしく失意のシングルマザーとア
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ベイビー・ドライバー(2017年製作の映画)

3.4

鑑賞から丸二日で内容の95%を忘れ、ダムドとジェイミー・フォックスの死に様くらいしか覚えていない。エドガー・ライト作品の中では限りなく最下位に近い印象。

胸騒ぎのシチリア(2015年製作の映画)

4.5

シチリアという場所は、現代人にとってのある種のファンタジー世界、ひとつの小宇宙であるらしい。そこでは、都会の現代生活で与えられた社会性(衣服に象徴される)ははぎ取られ、剥きだしの身体が曝される。男も女>>続きを読む

マンチェスター・バイ・ザ・シー(2016年製作の映画)

4.3

土地と深く結びついた経験の厄介さというのかな。
家族と過ごした記憶のために残りたいという甥と、家族と過ごした記憶のために去りたいという叔父と。
誰に罰されるわけでもないが、決して自分を許すことができな
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ありがとう、トニ・エルドマン(2016年製作の映画)

3.8

意外と良識あるパンク映画。しかし「ありがとう」というラストシーンではなかった。
多少ふざけ倒したくらいで気を病まなきゃいけないようなものは、仕事にせよなんにせよクソくらえというのは間違いないけれど、ユ
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ムーンライト(2016年製作の映画)

3.5

誰かに与えられた名前を捨て、本当の自分(そんなものがあるとして)になれる瞬間など、長く険しい人生の中に一体何分間訪れるというのだろうか。僕はそんなもの必要ないと思ってしまうタイプではあるけど、それもま>>続きを読む

希望のかなた(2017年製作の映画)

4.2

カウリスマキ映画で純粋にコメディ的なフックとして機能するのは、市井の人々の人間性(社会性)がふとした瞬間に失われる部分だと思っていて、下手な監督がそれで振り切っちゃうと、ユーモアとは呼べない悪辣なドタ>>続きを読む

ミラノ、愛に生きる(2009年製作の映画)

4.3

風の力か人の力か、とにかく何者かに開け放たれてしまった窓(扉)のあの爽やかさを、愛だとか欲望だとかそういう定義のままならない文言さまざまによって説明する必要は最早なく、ただ目を閉じ静かに、じっとりと感>>続きを読む

わたしは、ダニエル・ブレイク(2016年製作の映画)

4.2

ダニエル・ブレイクの憤りには心底共感するし、あまり粗探ししたいわけでもないのだけど、セックスワーカーの尊厳云々に踏みこんだあたりの甘さでケン・ローチもやはりジジイだなあと言わざるをえない。

モールス(2010年製作の映画)

3.5

刑事の視点を残し、父親のパートを削ったわけだけど、結果オーウェンのキャラクターが薄くなり、結末に至る動機が弱くなってる、という。

ぼくのエリ 200歳の少女(2008年製作の映画)

4.2

不可知の圧倒的他者、1人では生きていけないという呪い、孤独への絶対拒否。たとえそれが生きのびるための契約だったとしても。
これを見る限り、愛という言葉の生成においてスウェーデンは某国の少なくとも20年
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シングルマン(2009年製作の映画)

4.0

「人生は自殺の延期」映画。
2本目のタバコもらってしまうところが、絶妙に情けなくて良い。トム・フォード御仁にああいうの見せられると、だらしない人生もまた肯定されるかのようだが、そもそもの時間の生き方が
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