映画漬廃人伊波興一さんの映画レビュー・感想・評価 - 13ページ目

映画漬廃人伊波興一

映画漬廃人伊波興一

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ブリッジ・オブ・スパイ(2015年製作の映画)

3.6

スピルバーグをナメるなよ
スティーブン・スピルバーグ『ブリッジ・オブ・スパイ』

あるバラエティー番組で是枝裕和監督が出演された時、所謂(イイ話)が紹介されました。
司会者から
『監督、こんな話ならす
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夜よ、こんにちは(2003年製作の映画)

4.2

力強く投げかける視線に呼応出来る者だけが映画を、そして未知なる相手の心象を鋭敏に察知出来るとマルコ・ベロッキオは言う。
『夜よ、こんにちわ』

まずは私自身がいかに映画を観ていないかを告白します。
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検察側の罪人(2018年製作の映画)

1.4

原田眞人『検察側の罪人』

近年の日本映画にコミック原作の作品がいやというほど氾濫している事実が興行の活気に必ずしも貢献しているとも思えませんが、自分の作品に事件や犯罪者を登場させねば気がすまぬ、とい
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欲望という名の電車(1951年製作の映画)

3.0

(映画史に残る名作)から目いっぱい遠ざける試み
エリア・カザン「欲望という名の電車」

(名作)と呼ばれる作品を観直すのは時として恐ろしいです。
例えば私にとって「戦場にかける橋」「アラビアのロレンス
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カスパー・ハウザーの謎(1974年製作の映画)

3.1

バイエルン王国・ニュルンベルクの広場の陽光をいっぱいに浴びて、冬のか弱い光と共に天翔(あまが)ける凧の如し 
ヴェルナー・ヘルツウォーク「カスパー・ハウザーの謎」

「アギーレ・神の怒り」にも「フィッ
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黒猫・白猫(1998年製作の映画)

3.1

社会主義政策ともチトー政権とも無縁。
ですがやはり抑圧の中からでしか生じ得ない不条理ギャグ。やはり笑ってやらねばなりません。
エミール・クストリッツァ『黒猫 白猫』

若い二人がひまわり畑で戯れながら
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カポーティ(2005年製作の映画)

3.5

カポーティが小説「冷血」で得た名声とF・シーモア・ホフマンが映画「カポーティ」で得た名声。もしかしたら、その代償は同じものかもしれない。
ベネット・ミラー 「カポーティ」

等身大の鏡が映っている
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戦争のはらわた(1977年製作の映画)

4.3

5秒に一度の大爆音。映画史全ての火薬が詰め込まれています。
サム・ペキンパー「戦争のはらわた」
この映画の真の主人公は泥にまみれ、虎視眈々と襲撃の機を窺う、一点の瑕疵もない(虚無と混沌)
陽光、風向き
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冷血(1967年製作の映画)

3.2

見えるものにしか見えない、などと模糊としたものでない揺るぎない悪夢
リチャード・ブルックス「冷血」

私は映画は必ず虚構に返してやらねばならない、と普段は信じていますから(ノン・フィクション)が元ネタ
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ホーリー・マウンテン(1973年製作の映画)

3.8

この世のあらゆる出来事を有象無象のように蹂躙しながらも、前衛的な傲慢さが希薄な不思議さがあります。
アレハンドロ・ホドロフスキー『ホーリー・マウンテン』

映画も100年以上の歴史を持つのなら、捉えて
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ストレンジャー/謎のストレンジャー(1946年製作の映画)

4.6

天性の嘘つきウェルズが嘘つきである事の代償を全身で受け止める覚悟を体現したような異様ぶり。

オーソン・ウェルズ『ストレンジャー』

まずは(本物)の嘘つきが映画を撮れば、どんな作用を私たちにもたらす
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親切なクムジャさん(2005年製作の映画)

3.0

熟成ではなく、発酵に留める野心

パク・チャヌク 『親切なクムジャさん』

出所してパティシエの職に就いたイ・ヨンエがあたかも蔦がモルタルの白い壁いっぱいに勢力を広げていくように、服役中に知り合った
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ワーテルロー(1969年製作の映画)

1.3

(権力)の産物 
セルゲイ・ボルタル・チューク、あるいはディノ・デ・ラウレンティス「ワーテルロー」

この世に神がいるか?
など諸氏の見解が永遠に紛然し続けるでしょうが、映画界には我意をを張り通す神の
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ゼア・ウィル・ビー・ブラッド(2007年製作の映画)

2.1

時々あられもない焦燥にも似た振る舞いに駆り立てられていくような映画に出くわす時があります。
私にとってポール・トーマス・アンダーソンの作品・数本はさしずめそんな映画。
かなり面白く観れた『ブギーナイツ
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叫びとささやき(1972年製作の映画)

2.5

女傑とも肉食とも現せるような三人の女性たちに骨の髄まで搾られれば、この世の女性はすべからく頭のてっぺんから足のつま先まで真っ赤に見えるのかもしれません
イングマル・ベルイマン「叫びとささやき」

中学
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見えない恐怖(1971年製作の映画)

4.3

ひたすら落ち葉を舞い上がらせる風と、次々と閉ざされていく扉、そしてブーツの足音がかくも恐ろしいものか 
リチャード・フライシャー「見えない恐怖」

もし、ただいま現在、ニュープリントでリバイバル上映し
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バニー・レークは行方不明(1965年製作の映画)

3.7

(B級映画)という呼称は立派な賛辞だと改めて思います。

オットー・プレミンジャー「バニー・レークは行方不明」

普段、地方都市神戸に住んでいることに不満があるわけではありませんが、それでも首都がうら
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神の道化師、フランチェスコ(1950年製作の映画)

5.0

時には恥を忍んで告白します。観たい映画の半分も観ていない事を。
ロベルト・ロッセリーニ「神の道化師 フランチェスコ」

映画も長い間、観続けいれば(待ち焦がれる)作品が現れてきます。
若い頃に出逢って
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座頭市 THE LAST(2010年製作の映画)

3.7

トレンドなどあっさり無視して映画の歴史に(現代作家の拮抗)を賭けてみる阪本順治監督の強靭さ

阪本順治「座頭市 THE LAST」

当たり前の話ですが
映画は上映開始と共にこちらの機嫌などお構いなし
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絞殺魔(1968年製作の映画)

4.9

三つの視点が一点に凝縮された時、他ならぬ観ている私たちが(好奇心)という魔物に憑りつかれた別の人格を有していた事に気づかされます

リチャード・フライシャー「絞殺魔」

ヒッチコック「フレンジー」でい
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フィツカラルド(1982年製作の映画)

1.0

映画における(不幸)がここまで集約された作品も珍しいですね。
ヴェルナー・ヘルツォーク「フィツカラルド」

全ての映画が傑作であるわけでもないし、またそうである必要もございません。
駄作、愚作と称され
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暗殺の森(1970年製作の映画)

4.3

この画面はその都度、燃え上がり、消滅していくのでは?そう思わせる儚い官能性が全編に溢れている映画です。
ベルナルド・ベルドリッチ『暗殺の森』

映画史の中には、画面ひとつから生じた派生によって綴られて
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ガルシアの首(1974年製作の映画)

4.4

何故撃つのか?気が晴れるからだ。
サム・ペキンパー『ガルシアの首』

まるでベルイマンの映画のような映えた湖と牧歌的な風景から時代も場所も特定し難いオープニング自体が、その後に起こる展開と対比すれば全
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エル・スール(1982年製作の映画)

5.0

映画で起こりうる全ての佳景がここにある気さえします。
ビクトル・エリセ「エル・スール」

訪れたことのない国の映画を想う時、聞き慣れぬ言語の響きや抑揚から取り残されまいと過去に見聞きした情景と絡ませた
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かぞくのくに(2012年製作の映画)

3.0

トラベルケースをひくヤン監督の旅はまだ始まったばかりのようです。

ヤン・ヨンヒ「かぞくのくに」

まずはヤン・ヨンヒ監督が語ったお言葉をそのまま抜粋します。

(いつか兄たちと共に、私の映画が楽しめ
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オーバー・フェンス(2016年製作の映画)

3.3

今日から変わるかもしれない。だから鳥は舞うのを止めない。
山下敦弘「オーバーフェンス」

「大芸ヌーヴェルヴァーグ」というムーブメントが存在するらしいです。

聞くところによれば、俳優の津田寛治さんが
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離愁(1973年製作の映画)

3.0

ある映画プロデューサーとこの作品のラストシーンについて話題が言及した時、互いが絶句して同時に泣きました。それくらいこのラストシーンは凄い!28年ほど前の有楽町の喫茶店での事です。

ピエール・グラニエ
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恋人たち(2015年製作の映画)

4.1

硬くて火持ちが良く、遠赤外線をたっぷり放って冷え切った心まで暖めてしまう薪のような映画です。
橋口亮輔「恋人たち」

対立する構図さえ築く事が出来ない篠原篤、成嶋瞳子、池田良の三人。
元々は小さくても
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欲望(1966年製作の映画)

3.9

あらかじめ、というものはどこにも存在しない、とアントニーオニは言う
ミケランジェロ・アントニーオニ「欲望」


あらかじめその相手との甘美な陶酔や官能を頭の中で思い描いていたとしても、いったんその異性
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セックス・チェック 第二の性(1968年製作の映画)

3.3

自分が育てた錦鯉をひたすら愛でるようなもう一つの「痴人の愛」
増村保造「セックス・チェック 第二の性」

男勝りの気性と白肌に彩られたような筋膜の模様に一瞬で惹かれた緒形拳はどんな高い値にも糸目につけ
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天国の門(1980年製作の映画)

4.1

あらゆる悪評に立ち向かう覚悟で申し上げます。絶対に無視できない貴重な映画です
マイケル・チミノ「天国の門」

言わずと知れたアメリカ映画史上最も悪評高い一本である「天国の門」を最初に観たのが中学三年生
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生贄夫人(1974年製作の映画)

4.1

星の数ほどの種類の人々をしっかり繋ぎとめ、眼には見えない、時には見えすぎる事もある支配と言う名の鎖

小沼勝「生贄夫人」

中途半端なメロドラマやミュージカルに接すればこちらから逃げ出したくなるくらい
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魔術師(1958年製作の映画)

1.8

ホラーでも、奇譚でも、艶談でもなく、単純に(沈黙の寓話)として味わえばいい筈なんですが・・
イングマル・ベルイマン『魔術師』

『仮面/ペルソナ』のリブ・ウルマンに劣らず『魔術師』のマックス・フォン・
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仮面/ペルソナ(1967年製作の映画)

2.9

やはりニンマリしたくなる
イングマル・ベルイマン『仮面/ペルソナ』

三叉路で修験僧のように堂々と立っているものから(幸せか?)と問われて深く頷いたとしても、大抵は肥育された肉牛と全く同じ錯覚ではない
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ダージリン急行(2007年製作の映画)

4.0

ウェス・アンダーソンの『ダージリン急行』の列車の滑走は旅そのものの疲れを癒してくれます。

大晦日から妻の実家に帰省し、朝から昼から酒浸りの食浸り。
ひと寝入りした後、目が覚えてまだしばらく続く午後の
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GONIN(1995年製作の映画)

4.0

特別な条件が揃えば、新宿の夜のとばりは、行きずりの出会いをあっという間に一蓮托生に変えてしまう
石井隆「GONIN」

常に物情騒然たる危険を孕んだ石井ワールドの住人たちですが
ヤクザから返せるメドの
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