映画漬廃人伊波興一さんの映画レビュー・感想・評価 - 12ページ目

映画漬廃人伊波興一

映画漬廃人伊波興一

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エル・ドラド(1966年製作の映画)

3.7


夜の帳(とばり)のウェスタン。これほど夜の場面の多い西部劇も珍しい。

甘い生活(1959年製作の映画)

-

そりゃあフェリーニだって悪くないさ 「甘い生活」
付き合いの古い友人の一人から「お前がフェリーニについて語ったのを聞いた事ないが嫌いなのか?」最近問われたので唐突に観たくなりました。
どの映画でもよか
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砂漠の流れ者(1970年製作の映画)

4.4

ペキンパーが主人公の動きを止めた事で示唆したアメリカ映画=非ハリウッド映画の証


サム・ペキンパー『砂漠の流れ者』

例えばそれは風塵であったり土埃であったり爆風であったりゴミ収集車の廃棄物であった
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シシリアン(1969年製作の映画)

3.5

映画に飢えてる時、いわゆる普通の映画が観たくなる

アンリ・ヴェルヌイユ『シシリアン』

若い頃一度観たきりの映画が無性に観たくなる事があります。
とはいえアンリ・ヴェルヌイユという映画作家の名前で2
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グッバイ・ゴダール!(2017年製作の映画)

3.8

映画公開後、一か月を経ずして逝ったアンヌ・ヴィアゼムスキーへ

大笑い 監督と過ごした20年の大騒ぎ。

ミシェル・アザナヴィシウス
『グッバイ、ゴダール!』


何も好んで『アーティスト』の
ミシェ
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パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)

-


残念ながら世評に抗う事になりそうです。
私は全くダメでした。
ポン・ジュノ『パラサイト 半地下の家族』


私の中には(ウソらしいホント)と(ホントらしいウソ)の境界線があります。どちらか映画的なの
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勝手に逃げろ/人生(1980年製作の映画)

4.7



風を感じる瞬間がある。風を当たってる瞬間。自分が出ている映画を観てそう感じるのはゴダールの映画だけ by ナタリー・バイ

ジャン=リュック・ゴダール『勝手に逃げろ/人生』

(『軽蔑』そして『
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殺人の追憶(2003年製作の映画)

4.4

お楽しみはこれからさ

ポン・ジュノ『殺人の追憶』

この映画には、ふたつのクライマックスがあります。
ひとつはキム・サンギョンが土砂降りの雨の中、重要容疑者・パク・ヘイル(って名前の俳優さんだったと
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ゴダールの決別(1993年製作の映画)

4.2

レマン湖とそのほとりの町。
白と青の基調色に、キース・ジャレットのピアノとキム・カシュカシャンのヴィオラの旋律が融合した時、ゴダールが映画という虹が架けた。

ジャン=リュック・ゴダール
『ゴダールの
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アルファヴィル(1965年製作の映画)

4.4

追悼アンナ・カリーナ③
今の大国家マスク騒動からさかのぼって観れば何と面白い事か
ジャン=リュック・ゴダール『アルファヴィル』


(元気です。ありがとう。どういたしまして)
全てのメンタリティがここ
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メイド・イン・USA(1967年製作の映画)

4.5

追悼アンナ・カリーナ② この大いなる飛ばっちりにあるがままに身を委ねてみようではないか

ジャン=リュック・ゴダール「メイド・イン・USA」
 
何かと苛立っている者から受ける飛ばっちりほどめんどくさ
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ゴダールの探偵(1985年製作の映画)

4.5


公開から35年、齢(よわい)を超えた今、ついに解禁しました。

ジャン=リュック・ゴダール
『ゴダールの探偵』

映画を選ぶ際、世評などほとんど気にせぬ私ですが、ついつい及び腰になってしまった映画も
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小さな兵隊(1960年製作の映画)

4.3

追悼アンナ・カリーナ、あるいは(バッハを聴くには早すぎ、ベートーベンを聴くには遅すぎる。ハイドンがちょうどいい)と、うそぶく30歳ゴダールが、20歳アンナ・カリーナの中に見た光。

ジャン=リュック
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愛情萬歳(1994年製作の映画)

5.0

その涙に意味を求めてはいけない。そこからは(説明)しか導き出せないのだから。

ツァイ・ミンリャン『愛情萬歳』

1995年の夏、大阪梅田を歩いていたら目に飛び込んできた一枚の映画ポスターで一瞬で呑み
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恐怖分子(1986年製作の映画)

5.0


劇中人物たちも、私たち観客も、皆が皆、不審火の近くにいるのは、焚き付けの天才エドワード・ヤンによる誉高い犠牲者だからです。
 
エドワード・ヤン「恐怖分子」
 

全編、パトカーのサイレンが鳴りっぱ
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恋恋風塵(れんれんふうじん)(1987年製作の映画)

5.0

90年始め、候考賢はメロドラマという大河に『恋恋風塵』という橋を架けて見事にその流れを分断させた。



橋が完成すれば誰しもが大いなる幻想を抱く。
特に渡り初(ぞ)めの時など、そこを通ってもたらされ
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ずぶぬれて犬ころ(2018年製作の映画)

2.6



病院に帰る前、顕信が、法衣を着て写真を撮りたいと申し出た時、勇姿をテレカにして親友に送っていたくだりが憎い。
今みたいにスマホどころか携帯も、デジカメさえない時代、成功と名声にこだわった(少なくと
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日本侠花伝(1973年製作の映画)

4.5

ひとりの映画監督から推された一本の映画に巡り会えるのに、気づけば30年でした。

加藤泰『日本俠花伝』

まずは皆様に問いたい。
ご自身が数十年前に観た映画の魅力を、たった今しがた観終えたかのように、
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ゲームの規則(1939年製作の映画)

4.4

絶えず(現代)にとどまり、時代に逆行するどころか先行することさえ自身に固く禁じているルノワールの声
ジャン・ルノワール『ゲームの規則』

素晴らしい映画に賛辞を送りたい時、それを古典的名作にしてしまう
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モンパルナスの灯(1958年製作の映画)

4.6

名作故だからなどではなく、ベッケル故だからに他ならない。
ジャック・ベッケル 『モンパルナスの灯』

どのタイトルもが刺激的でありながらも、ただ悠長に構えているだけではなかなか巡り会ぬフィルモグラフィ
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Playback(2012年製作の映画)

4.5

この才能の出現はことによると令和元年日本には過ぎた贅沢かもしれない
三宅唱 『playback』

映画画面には、近代美術の才能が集結したような街並みとか、荘厳さを想起させるような大自然の風景などでは
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やくたたず(2010年製作の映画)

3.8

自分よりもふた回り近くも年齢を隔てた才能に触れた時、齢(よわい)を超えた今でも、嫉妬出来る(若気)にいささか自嘲気味にほくそ笑みたくなります。

三宅唱『やくたたず』


青春群像が直線的な動きしか出
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ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(2019年製作の映画)

4.5

当たり前である事と、期待・予想通り、とは明白な才能の差が介在するのです。

クエンティン・タランティーノ『ワンス・アポン・タイム・イン・ハリウッド』

タランティーノ作品と聞くと必ず(コロンブスの卵)
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火口のふたり(2019年製作の映画)

4.4

要約という言葉さえ必要としないようなシンプルな物語であるのに、論理などでは到底導き出しようのない、豊かさにみちたこの細部は何なのだ!

荒井晴彦「火口のふたり」

自分とは何の関係もない他人事なのに、
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東京物語(1953年製作の映画)

5.0

『東京物語』はやはりいつもの『東京物語』でしかないのです。

小津安二郎『東京物語』

一見質朴そうに見えて実は性悪な者が結構多い私達映画好きは、相変わらず憎々しげにその映画を睨みつけます。
ですが生
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赤目四十八瀧心中未遂(2003年製作の映画)

4.8

苔まみれの岩と石と倒木に映え、太陽の光線が見事な縞目を作る。
その縞目を受け止めるように瀧はどこまでも律動的に流れ、寺島しのぶと大西信満は互いに言葉を交わす事なく、あくまで曲線的に歩く。

このふたり
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ベレジーナ(1999年製作の映画)

4.6




ダニエル・シュミット『ベレジーナ』

『ラ・パロマ』は素晴らしかった。
『ヘカテ』も素晴らしかった。
また『カンヌ映画通り』『トスカの接吻』といったドキュメンタリーも素晴らしかった。
とりわけ『
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蜜のあわれ(2016年製作の映画)

3.5

石井岳龍の『蜜のあわれ』は千態万状の不自由さの中に唯ひとつしかない自由さを追い求めて生き続ける映画です。


既に『爆裂都市』や『狂い咲きサンダーロード』から何千日も経っているというのに、少しも退化し
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母なる証明(2009年製作の映画)

3.1

毒に染まった母性は、たとえ十の中にイチの可能性しかなくとも、そのイチには賭ける価値がある、と蛮行に踏み切る

ポン・ジュノ『母なる証明』

最近、認知症の診断を受けた私の母は、かつてひとことで言えば暴
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オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ(2013年製作の映画)

4.1

美醜を問わぬ慈愛の眼差しに満ち満ちて
ジム・ジャームッシュ『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』

恐らくはその名前アダムとイブから創世記の頃から生き続けてきただろうと、察せられる二人は、21世紀
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イメージの本(2018年製作の映画)

4.9

この翻弄には従う価値がある
ジャン=リュック・ゴダール「イメージの本」

たとえいなくてもさして気に留めぬよう努めていたつもりですが、その存在が久しぶりに現れるとやはりある種の懐かしさすら覚えてしまい
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誰もがそれを知っている(2018年製作の映画)

4.7

2019年、何千本、何万本の映画が全世界で公開されるのか予測できませんが、ひとつだけ自信をもって予想出来る事があります
それは他作品をいくらうず高く積み上げようとも、アスガル・ファルファーディーの新作
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哭声 コクソン(2016年製作の映画)

4.0

ナ・ホンジンは、ただひとつ、この攻撃を避けるのか、避けずに通るのかとのみを問う。
『哭声 コクソン』

令和になってからも相変わらず映画だけは気忙しく観続けておりますが、奇妙なサイクルに陥り脱けだすの
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エレナの惑い(2011年製作の映画)

4.0

不可視のイメージに引き寄せていく罠。そこにハマって映画の戯れが始まる

アンドレイ・ズビャギンツェフ
「エレナの惑い」
 
あらゆる意味で(自由)であるべき筈の映画を(このように観なさい)などと押し売
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気狂いピエロ(1965年製作の映画)

5.0

(映画世界)そのものであるゴダールを畏れるな
ジャン=リュック・ゴダール『気狂いピエロ』

新年号になって10本の映画を観ました。それらを挙げる日もいつかは来るでしょうが、令和最初に取り上げるべき映画
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ミュンヘン(2005年製作の映画)

3.6

大家の余裕より、こんな混迷に苦いシンパを覚えます。
スティーブン・スピルバーグ『ミュンヘン』

A級とB級、どちらが映画として面白いか、などという世迷い言に惑わされてはならぬ。
面白さにA級もB級もな
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