【仕事をすること】

※ 舞台挨拶。監督と主演の女優さんの舞台挨拶があった。監督の自主制作映画。

映画の学校を卒業して仕事に就くにあたって、仕事をすると云うことは…という作品を撮りたかったのだそうだ。

分かる。

仕事をすると云うことは、それまでの生活に大きな変化をもたらすと云うことだ。

慣れてきたら多忙になる。
優秀だったら頼まれごとも増える。
新しい仕事もある。
イレギュラーな仕事も増える。

でも楽しくもなる。

転勤。

遠距離恋愛。

付き合っている相手と良い関係を保つなんてそう簡単ではない。

相手の親は別のファクターだ。

お母さんみたいな融通の効かない人……いるいる……みたいな😁

でもね、一歩ずつ、少しずつ前進してるんですよ。

琴がシンセサイザーで制作している音楽みたいな感じ。腕が上がってね。

借り暮らしをする女性の縁の切れ目、そして人生はつづく

音響畑出身監督だけあって、非常に音がこだわられている。元カレよりも元カレに借りていた自動車やギターやマンガが人生の一部となっていた女性にとって、愛着の湧いてきたものたちとの別れが元カレとの縁が切れる瞬間を一番感じさせるものになっている。

元カレと別れた後は一瞬軽やかになるも、移動中に聞いていたデモ作品からお気に入りの箇所を見つけてメモを取るルーティンが移動時間から消えてしまったこと、そして業界人のくだらない話を通しで聞く新しい日常が到来したことを示すラストが印象的。

空港から家へ戻る車を後部座席から映し出した場面と空港へ向かうタクシーを前から映した二つの場面が車を通じて綺麗に対比されているところも上手い。

• #プレ的2024年鑑賞

生活は続く──今年公開された邦画の中でも最大級に褒め称えたい大傑作だった。もしかするとこの映画は、今まで一度も映画になったことがなかった感情を映画にしてのけているかもしれない。「見過ごされるような小さな問題を描きたい」と言っている某監督が観たら（彼の作品も好きですよ為念）地団駄踏んで悔しがりながら絶賛するんじゃないかレベルの傑作でしたよ。全ての描写が自然で、全ての登場人物が生活していた。例えばちらっと映るLINE文面の末尾の「いただけると」でさえもふたりの距離感を的確にとらえている。神は細部に宿るやつ。

録音の仕事をして生活している琴（村上由規乃）とフィリピンから一時帰国した元彼の昭一（岩崎敢志）。映画はふたりの微妙な距離感と琴の生活を描く。日本から外に出て活動する昭一と外から音を持ち帰って中で活動する琴は、相反する属性を持つ人物として画面の中にいる。昭一は窓を開け、琴は窓を閉める。このふたりの関係を、倦怠カップルものによくあるありふれたすれ違いや別れとして描かず、あくまで違いは生活スタイルや視線の向き先（タクシー内のふたりの視線が雄弁に物語る）にあり、ふたりの人生における関わりあいや時折の並走はいつだって可能だとするあたり、80万点の好感を持った。

監督・出演・脚本・録音・整音と一作で八面六臂の成功を収めてみせた岩崎敢志さん、早く次の作品が観たい！

そして村上由規乃さんは運転ができる！素敵な理由はそこじゃないけど運転ができるの意外でした。

追記
そういえばスペシャル・サンクスに清原惟監督のお名前があった。何か協力してもらったりしたんだろうか。