【美しい人／ミューズとディーヴァ】

ファシズム体制下の1940年、チェーザレ・パヴェーゼ31歳の小説を映画化しています。
1949年にようやく刊行され，イタリア最高の文学賞ストレーガ賞を受賞しています。
そしてその翌年，パヴェーゼは自殺しています。

1938年、トリノで働く16歳のジーニアと19歳のアメーリア。
ふたりの女性の孤独な青春を描いています。
惹かれ合っていくふたりの姿が切なく美しいです。

「天空のからだ」「墓泥棒と失われた女神」に出演し、アリーチェ・ロルヴァケル監督作品のミューズと呼ばれる、イーレ・ヤラ・ヴィアネッロ。
モニカ・ベルッチとヴァンサン・カッセルの娘、ディーヴァ・カッセル。
これからのイタリア映画界を牽引するであろう、このふたりの美しい人の共演は眼福です。
また、当時の雰囲気を醸し出す、ピエモンテ州のトリノと近郊の美しい景観も素晴らしいです。

今日の試写会は、映画『美しい夏』特別試写会。

イタリアの文学賞ストレーガ賞受賞作、チェーザレ・パヴェーゼの名作『美しい夏』の映画化。

第二次世界大戦前のイタリア、トリノの洋裁店で働いていたシャイな少女ジーニアは、ふとしたことから出会ったモデルのアメーリアに憧れを抱き、自由で気ままなアメーリアと画家たちの仲間に引き込まれていく。

湖畔で戯れるアメーリア、トリノの街並みを歩く20世紀ファッションのふたり、どこを切っても「絵」が美しい。

まだ見ぬ世界への好奇心から、ちょっと危ない世界へと足を踏み入れる青春の罠。自分の殻を破りたい。でも後悔もいっぱいする。誰にでもあったあの頃のすっぱい思い出。

ジーニア役のイーレ・ヴィアネッロも繊細な思春期の感情を表現して素晴らしかったが、アメーリア役のディーヴァ・カッセル、なんとあのモニカ・ベルッチの娘さん！どおりで若いのに妖艶な魅力があるのにも納得！この新星を見るだけでも価値がある。

映画『美しい夏』は、8月1日公開です。

　田舎から兄セヴェリーノ（ニコラ・モーパス）とトリノへと移り住んだ16歳のジーニア（イーレ・ヤラ・ヴィアネッロ）は、洋裁店で黙々と働く日々を送っていた。横の繋がりに何も見いだせずにいたジーニアはある休日、湖畔でアメーリア（デヴァ・カッセル）と出会う。彼女は画家たちの「ヌード・モデル」として生きる3歳年上の自由奔放な女性だった。舞台は1938年のイタリア・トリノである。第二次世界大戦の戦禍はまだ想像も出来ない世界の中で、ガール・ミーツ・ガールのような閃光は16歳のジーニアを捉えて離さない。大胆で眩しいアメーリアに惹かれたジーニアは、彼女に連れられて画家グイド（アレッサンドロ・ピアヴァーニ）のアトリエや、若い芸術家たちが集う夜のサークルへ足を踏み入れていく。戦争前夜のざわめきが漂う一方、ジーニアの視界は初めて開け、世界は色づきはじめる。思春期の憧れ・嫉妬・模倣はまた、自身のアイデンティティを奪いかねない自我の混乱を及ぼすことを16歳のジーニアはまだ知らない。

　イタリア文学界最高峰のストレーガ賞を受賞したチェーザレ・パヴェーゼの小説を映画化した物語は、アメーリアの奔放さに胸を高鳴らせる一方で、ジーニアは自分も「ここではないどこか」へ渡りたいと背伸びを重ねる。その痛々しさにこそ思春期の生々しさがある。アメーリアヘ憧れたならばその気持ちを隠さず吐露すれば良いものを、からだと心のズレを感じるジーニアはボーイフレンドのグイドとの関係で「通過儀礼」を経験するが、期待していた性のカタルシスは遂に訪れない。思春期の性自認のズレというのはホモソーシャルではまったく機能せず、次第にアメーリアへの引力ばかりが増していく。決定的なのは中盤のアトリエのヌードの場面で、ジーニアは「自分も脱ぐ」と強がり、グイドの前でポーズを取る。だが背後のカーテンの陰には友人ロドリゲスが潜んでおり、覗かれていたことが露見すると、自分は奔放な性を売りにしたいわけではないというクローズドな自我が次第に顔を出し、自責の念に苛まれる。エイズよりも当時は治療困難だった梅毒と言う病への理解はありつつも、枷を外した2人のシスターフッド的な連帯に涙する。明らかに『燃ゆる女の肖像』や『CAROL』以降の物語で、その2本が永遠のマスターピースならばこの魅力には抗えない。