『帰れない山』
原題 Le otto montagne/The Eight Mountains
映倫区分 G
製作年 2022年。上映時間 147分。
イタリアの作家パオロ・コニェッティの世界的ベストセラー小説を映画化し、2022年・第75回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した大人のイタリア・ベルギー・フランス合作青春映画。
『マーティン・エデン』のルカ・マリネッリが主人公ピエトロ、『ザ・プレイス　運命の交差点』のアレッサンドロ・ボルギが親友ブルーノを演じた。
メガホンをとったのは『ビューティフル・ボーイ』で知られるベルギーの俊英フェリックス・バン・ヒュルーニンゲンと、『オーバー・ザ・ブルースカイ』などで脚本も務める俳優のシャルロッテ・ファンデルメールシュ。
実生活で夫婦でもある2人が共同で監督・脚本を務めた。

山岳ってのは一瞬にしてできるものではない。
地殻変動プレートがぶつかり合う境界でひずみが発生し、プレートの一部が破壊され、 そして、この断層という形で大きな地面のズレが生じたり、細かいズレが積み重なることで大きな高低差が生まれ、それが山となると聞く。
地殻変動プレートは、衝突する車のボンネットのようにたわむんかもしれないが、それは何千年もかかる衝突であり、人間のタイムスケールから考えれば、限りなく遅い。
主峰は小石を積み重ねるように隆起している。
フェリックス・バン・ヒュルーニンゲンとシャルロッテ・ファンデルメールシュの静かで壮大な今作品には、北イタリアの広大で険しい風景がよく似合ってたし、また、今作品自体も尾根と谷、尖塔と谷を横切る壮大な眺望に至るまで、細部がゆっくりと徐々に積み重ねられており、生涯の、人生を決定づける友情が描かれていました。
パオロ・コジェッティによる同名のイタリアのベストセラー『Le Otto Montagne』を原作とする今作品は、良い意味で小説的でした。
人間とアルプスの両方の登場人物の世界に、通常は文学でしか描き出せないような、ゾクゾクするほど深いレベルで浸ることができた。
しかし、高級で見事な映像のひとつひとつが千の言葉に値するほど、今作品は美しく映画的な言葉で生き、息づいていました。
この古典的なビルドゥングス・ロマン(主人公がさまざまな体験を通して内面的に成長していく過程を描く物語)は、ページからスクリーンへの移行において、スケール、広がり、感情という点では、少しも損なわれていないように感じました。
ナレーションは、書籍から映画化された作品ではしばしば多用されるものやけど控えめな点も良かったです。　
ピエトロ（ルカ・マリネッリ）は、子供時代の終わりのない夏を終えて街に戻ると、『足がイラクサの刺を忘れてしまった』ことを思い出す。
この言葉遣いてのは、控えめで直接的な詩のようなものを視覚的な言葉と共有していると素人詩人ながらそう思いました。
また、今作品の唯一のサウンドトラックである、スウェーデンのシンガーソングライター、ダニエル・ノルグレンによるブルージーで善きフォークソングが、悲痛な過去時制によるエレジャックなトーンを確立していました。
お話は、80年代半ばのある夏、都会育ちのピエトロ（ルポ・バルビエーロが幼少期を演じる）が母と一緒に、アルプス山脈の雪に覆われた巨大な山々に囲まれた、消え入りそうな小さな集落グラナにバカンスにやってきたことから始まる。
広がる友情の物語。
彼は、自称 "村の最後の子供 "ブルーノ（クリスティアーノ・サッセッラ）と出会い、牛を飼い、岩をよじ登り、澄み切った山の湖で水しぶきを浴びることを通じて、生い立ちや気質には根本的な違いがあるにもかかわらず、11歳の2人は急速に絆を深めていく。
丈夫で有能なブルーノに猛烈な愛着を抱くようになるのは、物静かで礼儀正しいピエトロだけではない。
ピエトロの威勢のいい工場経営者の父（フィリッポ・ティミ）が登山に熱中するためにやってくると、ピエトロの両親もブルーノを気に入り、学校教育のためにブルーノをトリノに連れて帰ることを申し出るほど。
ピエトロは、田舎の遊び相手が自分のように都会的で中流階級になるかもしれないと憤慨する。
しかし、ブルーノは、自分の素朴な世界の外の世界がどんなものか見てみたくなる。
数年後、ピエトロ（現マリネッリ）とブルーノ（現アレッサンドロ・ボルギ）が再会したとき、ブルーノは山での生活に完全に身を委ねていた。それを "自然 "と呼ぶのは都会の人間だけだと彼は嘲笑い、ピエトロの友人たちが風景をロマンティックに抽象化する傾向があることを指摘する。
しばらくの間、ピエトロは石や小道や木々の間に根を張り、落ち着きのない根無し草のような友人に安定した影響を与えるようになる。　
しかし、その後、ピエトロはさらに世界に飛び出し、最終的には平坦ではないネパールに新しい家を見つける。
二人の運命は徐々に逆転していく。。。

今作品にはブルーノの無神経なガールフレンド（エリザベッタ・マズッロ）、ピエトロの黒い瞳の母（エレナ・リエッティ）など、女性陣の出番が少ないのは事実やけど、中心となる男性陣の人間関係の豊かさや、彼女たちが描かれる真摯で一途な感受性の異常なまでの高さを考えると、その少なさが問題にならないのは驚きでした。
マリネッリとボルギの間には、簡単で冷ややかな相性があり、それぞれが、もう一人の方が当然と思われるような役柄に配役されていることを考えると、特に興味深い。
実際、若い俳優と大人の俳優の身体的な類似性から、キャスティングはある時点から逆になっていたのかもしれない。
ピエトロという役柄にマリネッリがもたらす素晴らしい繊細さを考えると、この変更はインスピレーションに満ちたものと云える。
ここでは、ボルギのコンパクトで実用的な陽に対して、彼は魂のこもった不確かで蛇行する陰。
大人になったブルーノが、ピエトロの父を偲んで建てた小屋の屋根のスレート越しに、初めてピエトロを幼い頃のニックネームで呼ぶときのように。
ブルーノとピエトロの青春時代のギザギザの傾斜の後、二人の再会でピークに達し、その後、何度も振り返りながら、よりゆったりとした、思慮深いペースで長い帰路につく。
遠くから見れば荘厳で静謐やけど、間近で見れば、2人に多くのものを与えながらも、それ以上のものを犠牲にした友情の亀裂と愚行で引き裂かれた、この映画もまた山やと云える善き作品でした。

心に降り積もった雪は溶け、人生となる。

パオロ・コニェッティが上梓した同名小説を、フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン、シャルロッテ・ファンデルメールシュ監督、脚本、ルカ・マリネッリ、アレッサンドロ・ボルギ主演により映像化したイタリア、ベルギー、フランス製作のドラマ。
都会育ちと牛飼いという対照的な二人の少年が、いったん離れ離れになるも、青年となり山麓の村で再会する姿を描く。
原作は未読。
主人公となる都会育ちのピエトロをマリネッリ、牛飼いのブルーノをボルギが演じているほか、ピエトロの父親役としてフィリッポ・ティーミ、母親役としてエレナ・リエッティが登場。
物語の序盤は、休暇で山を訪れたピエトロが、そこで牛飼いをする同い年のブルーノと出会い、性格も出身も対照的な少年二人が意気投合し親交を深めていく姿が描かれるが、ここまででもジュブナイル作品として十分高いクオリティを誇っている。
中盤以降、村を離れたピエトロが青年となり、村で暮らすブルーノと再会、二人で山小屋を建てることとなるのだが、大人になり、それぞれの価値観を持つ二人が、お互いを尊重し合い、時にはぶつかり合いながらも友情という言葉だけでは語り尽くせない、人と人との触れ合いを、静かにかつ力強く描いていくのが本作品の真骨頂。
約二時間半という長尺であり、極力説明的な台詞も廃されているのだが、無駄なシーンは一切なく、時間を感じさせないもの。
また、原題である『八つの山』の意味も劇中で明かされるが、『帰れない山』とした原作の邦題も秀逸。
北イタリアにあるモンテ・ローザ山麓のアオスタ渓谷や、ヒマラヤ山脈で撮影されたとされる雄大な景色を背景に繰り広げられる、主人公二人の繊細かつ濃密な物語がじんわりと沁み渡り、その結末に、本当の幸せとは何かを問われる良作。

言葉が貧しいと、思考も貧しくなる。

「人生は山あり谷あり」と 言葉が ある様に
色々な辛いシーンを山と例えたり 自分に
言い聞かせたり励まして 頑張れたりする
素晴らしい言葉だと 思います …… 👍🏻✨

本作の原題『Le otto montagne』 は「八つ
の山」と言う意味 〜 そして『帰れない山』
の邦題 ＿＿ その繋がりは 人其々が歩む　
人生を映しているのか 或いは繋がりとは友情を指している言葉 なんだと思います …… 🤔✨

人生において山は普遍的な意味を含む言葉であると同時に ＿＿ 同じ山でも 人生の節目によって色々な風景に見えたりするのも山なんだと思います …… 😌✨

その人生の山々に登場する仲間 ＿＿ そして友情とは 色々と重ね合わせながら 山から教えられることも多いなって 思いますね 様々な山 ⛰️ と其々が歩む人生 …… 😌✨



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