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母性のモンタージュ
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『母性のモンタージュ』に投稿された感想・評価

3.6
【獰猛な虎でも籠に入れられて飢えてしまうと…?】【東京国際映画祭】
■あらすじ
香港新界で夫と義理の両親と平凡な生活を送っているジェン。

母となり、これまでの日常が一変、家庭での役割と自らの仕事の両立を否応なく求められる。

レジリエンスが試され、アイデンティティを再定義することになるなか、母として揺れ動くジェンの心情の変化を深く見つめる。

■みどころ
凄く怖い映画だった。
『淪落の人』のオリバー・チャン最新作。
本作は娘を授かった新米ママ・ジェンの育児映画で、傾向としては東京フィルメックスで上映されたホワン・ジー&大塚竜治『石門』の向こう側にいるような作品だと言える。

娘を授かったものの体重が軽く、母乳推奨されている事を信じて母乳を与えようとするがなかなか母乳が出てくれない。しまいには母乳を出す機械が壊れ、その修理に協力的じゃない夫や炎症で母乳が詰まって痛い等の母乳が出にくい事を助長するような展開になってしまう。
夫は育児を"手伝う"スタンスでそこまで深く入り込まず、面倒ごとは嫁に丸投げで『嫁と娘の為に俺は頑張って稼ぐわ😎』という昭和の日本の旦那みたいなスタイルであまり助けてくれない。
義理の父母からは夜泣きが止まらないこと、栄養が足りてないことに一々小言を言ってくる。義母は多少は育児の手伝いをするものの、ジェンと育児に関する考え方が違うあまりに協力的ではなくなる。
挙句の果てには託児所も皆無で唯一頼っていた場所も渡加によって預けられなくなる、唯一の生きがいだったパン作りも復職するや否や違約でクビになり転職先もほぼ皆無…そんな境遇に置かれたジェンは日に日にやつれていきある決断をするが…

育児映画としてあまりにも救いが無さ過ぎて泣いた。
育児を始める若いママを家族・社会総出で寄ってたかって虐める話。ほぼ全員がラスボス級の「育児協力するつもりないよ~」のお気持ちをお持ちのようで、味方と呼べそうにない味方すらボロボロ消えていく中、主人公が身一つで絶望的な戦いに挑む。
例えるならばロベール・ブレッソン『田舎司祭の日記』で日記すら奪われた新米司祭のような映画というか…

その他に本作は鳥籠を効果的に使っている作品にも感じる。
インコを飼っているが、インコの境遇だとかベビーベッド越しからジェンを映す姿はまるで鳥籠にジェンが入れられたような錯覚すら感じさせ、同時に育児によって制限されること・手放す事を余儀なくさせる苦しさを現出していて凄かった。
そして、本作の原題は"虎毒不"である。これは諺で「どう猛な虎も(我が子は食べ)ない(親しい人には危害を与えない事の喩え)」の一部を引用したものであるが諺と違って食子が省略されている。
…お分かりですよね?

本作の出来事は実際の事件を基にした映画らしく、衝撃的な内容ながらもこの内容は決して他人事ではないものなので気を付けようと思った次第です。

P.S.
育児ノイローゼやあまりにも辛い環境でジェンがやつれていってる横で、夫と同僚が娘に対して自慢したり「育児しない男はダメだぞ~」なおま言う案件を繰り出すシーンは会社で育児をほぼ嫁に丸投げして、その割に子供自慢しまくる同期を思い出しました。
Motherhoodの邦訳は母性じゃないだろ。既視感ある不幸描写の釣瓶打ちという印象で、ひたすら辛いだけという感じだった。見終わったあとの話し合いで、この映画は届けたいとこに届かない映画だなという意見があり首肯。あと、『ナイトビッチ』に似てると聴いて設定見たけど、絶対そっちの方が良いじゃんと思うなど。
まず言いたいのは、ウィメンズ・エンパワーメント部門には全くもって相応しくない作品である。というのも、今作は救いようのない鬱映画となっているからだ。エンパワーメントの要素がいったいどこにあるのだろうか……。

希望の光や兆しも見えない、とにかく鬱体験をさせられる作品なのだ。

子どもが生まれ、仕事にも復帰し、育児と仕事を両立させているジェンだが、どう上手くいかない。

母乳で育てたいという拘りがあると、ひと手間、二手間増えてしまうこともあり、義理の母には粉ミルクにするようにねちねちと言われるし、対して手伝ってもいないのに、愚痴だけは多い。そして夫も自分を育メンと自負しているが、オムツのサイズさえ知らない。

そもそも子どもは母と父で育てるものなのに、男の場合は、どうして”手伝う”となってしまうのだろうか。女は子育て、男は仕事という概念が現在でも蔓延っていることが、あたりまえに使われている言葉の中からもよくわかる。

他の人はちゃんと育児しているのに、どうして自分はできないのだろうか。育児のために仕事や自分のやりたいことは諦めないといけないのか…….。

そんな世間が、母親に対して植え付けている”あたりまえ””こうあるべき”という間違った概念に苦しむ主人公の気持ちは痛いほど理解できる。

しかし、映画やドラマであれば、そんななかにも一筋の光や、今後改善されていくであろう希望などがあってもいいのだが、今作はとことん主人公を突き放していくため、観ていてとにかく辛い。

中国ならではの、男の子ではなかったことへの冷たい目線も入っているのかもしれないが、今作で描かれている母親が立たされている環境というのは、どこの国にも通じるテーマである。

今まで他の作品などで、オブラートに包んで描いてきたけど、それでも気づかない人々に対して、とことん辛く辛く描くことで、それに気づかせる毒映画としてはかなり機能するだろうが、とにかく主人公が可哀そうだ。

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