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『スタッフ』に投稿された感想・評価

たむ
4.2
キェシロフスキ監督の初期の劇映画です。
この頃のポーランドの映画作家は社会主義的なものに対する反発、挫折を青春映画の枠組みの中で行う事も多かったですが、本作もそんな一本です。

演劇の衣装担当のスタッフとして雇われる主人公が、主演俳優の衣装へのクレームから発展する組合運動に巻き込まれる姿を描きます。
オープニングから「視線」を意識したカメラワーク多様し、誰かを見ている、見られているという事を強く意識させます。
演劇がテーマになっているとアーティストの物語である事が多い中、本作はあくまでも一労働者の青年を描いていきます。

組合員から目をかけられた主人公が眼鏡をかけてカメラ目線になり、「よく見える」という不思議なシーンがあります。
映画の主人公に我々観客が見られている。
映画の中の出来事も他人事ではない、と意識させてきますね。
adeam
3.0
テレビ用に制作されたキェシロフスキ初期の中編。
劇団の裏方として働き始めた青年が内部の対立に巻き込まれ幻滅する姿を描き、複数の映画祭で受賞を果たした作品です。
前半は衣装係の青年を中心とした裏方の人々の仕事ぶりや何気ないやり取りの描写で退屈ですが、中盤の、事件後は一気に話が展開しておもしろかったです。
社会の汚さ、大人の狡さに引き裂かれる終盤は胸が痛く、ドキュメンタリーからフィクションへの移行を試みていたキェシロフスキが、メッセージを物語に乗せる方法を身に付けたことが感じられました。
対等なはずの劇団内にある格差や管理者の振る舞いを社会主義国家の縮図として見ることはもちろんできますが、アートに魅了された純粋な青年に現実が突き付けられるほろ苦い青春映画としてうまくまとまっていたと思います。
クシシュトフ・キェシロフスキ監督作品。

DVDの日本語タイトルは『スタッフ(下働き)』なのですが、この「下働き」が何とも絶妙な意訳なんですよね…主人公のロメクが誰の何に対して「下働き」をするのかが本作の面白さなので。

以下、ネタバレを含みます。

主人公のロメクは、オペラ座の劇団で衣装係として下働きを始める。彼の下働きの様子が次々とドキュメントされていく。衣装部の人に自己紹介をして、仕事を与えてもらう。同僚たちと親しくなって、酒をみんなと呑む。同僚の一人であるエヴァとはさらに懇意になって、休憩中に談笑する。舞台裏にもいってみる。バレリーナの練習をみてみる。列車で偶然あった女性と話をする、などなど。彼らが劇団の裏方として働く姿や公演に向けての準備や練習風景はフィクションである。しかしドキュメントされるイメージは、場所の真正さも相まって、彼らが劇団員として本当に存在しているかのように思わせる。それほど会話や彼らの働く所作は本当なのだ。

そのように風景が物語の起伏もなく淡々とドキュメントされていくのだが、ひとつの事件が起きる。それはソリストのシェドレツキが衣装確認の場面で、エヴァの仕立てた衣装に不満を言い、破いてしまうことである。それはドキュメンタリーにおけるカメラが予期しない事件のようだ。しかし彼が衣装を破ってしまう経緯は、何となくを装ってちゃんと物語化されている。

シェドレツキは衣装部との談笑中、ロメクに煙草をあげる。しかしその煙草はドッキリグッズであり、吸っていると突然、爆発する。ロメクは驚き、口の周りは煤だらけになる。それをみたエヴァは、シェドレツキを怒る。シェドレツキは笑ってやり過ごすしかできない。そんな事件と呼べない〈事件〉が、一風景としてあったのだ。そしてその憂さ晴らしとエヴァの名誉を傷つけるために服ビリビリ事件をシェドレツキは起こすのだ。

全くもってしょうもない。そしてシェドレツキは新聞のインタビューでも劇団を酷評する。

「我らの劇場にあるのは才能の衝突でなく 
 儀礼的な妥協だけ
 主役を張るのは支配人の友人なのか 
 指揮者が最初に選ぶペアは? 
 劇場が私的に利用されても驚かないが 
 社会主義文化と芸術は危機に瀕している 
 この劇場にいる全員が 
 素人で怠け者で臆病者だ  
 シニシズムと見せかけが横行し 
 モラルが欠如する下では 
 誠実と真実こそ重要でプロの職業義務である」

美辞麗句が並べられた非難だ。しかし本作をみた観客は分かる。この非難が最も当て嵌まるのは彼だと。彼が衣装を破いた後、半裸で歌う姿が、「誠実と真実」ではなく滑稽さを表しているのが全てを物語っている。

シェドレツキに非難されるエヴァが世渡り上手でないことも悲しい。彼は衣装係として懸命に働いているし、何より芸術を愛し、一番に劇場のことを考えている。しかし社交的かと言えばそうでもないし、むしろその誠実さは劇団の体制側には目障りである。

労働組合の集会でも事件について取り上げられ、エヴァは発言の機会を与えられる。その時にエヴァは劇団に対する熱い想いを主張する。しかし幹部には響かない。それも多分、幹部が体制側と結託しているから、体制を脅かす目障りな主張としか思われていないからだろう。さらにその主張は、幹部が事件に対する言い分を聞いているのに、その応答として発せられていて、エヴァの方からディスコミュニケーションを起こしているのだから、擁護しようがない。

そこで目をつけられるのがロメクである。
ロメクは労働組合の幹部に呼び出され、劇団の上層部にも会うことになる。それはロメクを高く評価しており、彼が集会で意見した芝居ができる小屋をつくることに、体制側も肯定的だったからである。それだけ聞けば、ロメクが下働きから出世した成功譚である。

しかしその小屋をつくることと引き換えにエヴァの事件について詳細を書くように命じられる。つまり体制側はロメクに「小屋をつくる」という餌を用意してエヴァに不利な証言を集めようとしているのだ。ロメクの証言によってきっとエヴァが悪者となり、劇団追放という「粛清」が行われるのだろう。その体制側の「下働き」にロメクは加担しようとしているのだ。

何とも不条理な物語である。劇団について最も熱心なエヴァが冷遇され、まだ働き始めの若者であるロメクが体制に都合よく下働きさせられることは。そしてロメクを高く評価していることを装う巧妙さも相まって。

ロメクは何の逡巡もなく筆をとるわけではない。もちろん葛藤はある。単に都合のいい話だとは思っていない。しかし彼の葛藤はエンドクレジットでも中断されない。カメラはエンドクレジットになっても、彼が紙に書き始める姿を逃さない。それは彼の体制からの逃れがたさも意味しているようだ。

本作で描かれる劇団の様子や人びとの姿は当時の政治情勢とそこに生きる人びとの反映であることは言うまでもない。そしてロメクとエヴァはきっとキェシロフスキ監督の化身だろう。そんな主人公像の一端と後の作品に通じる体制批判の萌芽も確認できるのだから、本作はキェシロフスキ監督の「仕事」を理解する上で極めて重要な作品である。

蛇足
ロメクの通勤風景として電車での場面が多いのが、電車がちゃんと走っていることに感動した。あと満員電車でカメラや撮影隊はどこにいるのだろう。画面だけに乗客を密集させているのなら、それはそれで凄い。
また劇団の様子はフィクションであるが、登場する幾人かは実際に劇団で働いている人のような気がする。それがどこまでかは検証していないので仮説段階だが、きっとそうだと思っている。

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