徳田秋声の晩年の傑作を新藤兼人監督が映画化。乙羽信子の演技が光ります。

貧しい家庭で家計を助けるため芸者になった銀子の半生。美人なので4度場所を変えてもすぐにパトロンが出来る。純粋な愛で結ばれたいと願うも、芸者とういう立場から銀子はなかなか幸せになれない。それでも負けずに家族のために芸者として生きていく…

本気でやるお座敷遊び（野球拳みたいなの）やカッポレの踊り、そこだけでも乙羽信子が名女優だと思える。

山田五十鈴の意地悪な置屋の女将とかカメラワークとかがよかったけど、4度も場所を変え似たような展開なので少し長いと感じた。音楽は伊福部さん。

描いているのは原作の前半部分らしい。実在の人がモデルなので、この後の銀子の半生が気になります。実際の小説は戦争前で国から弾圧され未完なのだそう。

貧しく病弱な家族を養うため芸者として日々懸命に働く長女役の乙羽信子さま。
いくつかの恋も経験するが芸者ゆえに実ることはなかった……。
母は生活のため、ゆくゆくは次女も三女も芸者にして働かせようとしていたが妹たちにまで芸者の辛い世界を味わわせるわけにはいかない！と自分が皆を養うから！と決心する長女だが……。

素晴らしい作品です。これから先何度か観てしまいそうです。乙羽信子さまは日本を代表する女優さんの１人だと思っております。演技力、表現力、存在感……素晴らしいです!!


[追記]
冒頭シーンでは、はだかの少女たちが口を開けて上を向いており続いて乙羽さまが雨の中、家路を急ぐシーンになりますが、破れた傘をさし古い木造の家々の軒下からまとまった雨がぼたぼたと‥‥ からもうスッカリこの作品に入り込んでしまいました。

生活に困窮する家族を養うため、芸者小屋に従事することになった長女（乙羽信子）が、悲喜交交を経験していく。芸者の道を進むことになった娘の人生模様を描いている、ヒューマン・ドラマ。

主人公は客人から一方的に惚れられるタイプの売れっ子芸者。しかしながら、芸者としての素質に足元を掬われ、さらに蓄積されたフェミニズム精神と「芸者を演じること」の観念が妨げとなって、本物の恋心を見失ってしまう。

運命共同体としての芸者小屋をリアリティ満点に描いているところが面白い。きらびやかに見える表面と、泥沼化した裏面の対比表現が巧みであり、ストリップ小屋を舞台にした日活ロマンポルノの醍醐味と相通じるものがある。

主人公にとって頼りがいのある人物がご都合主義的に退場するのと、ラストの冗長な愁嘆場が、どうしても笑えてしまう。だが、かつて実在した貧困層のことを慮ると、本作で笑っている自分自身へのカウンターとして、自暴自棄に陥ってしまう。