デ・ニーロの「ケープ・フィアー」のオリジナル版

犯人役のロバート・ミッチャムのサイコパス演技は、さすが "スリーピング・アイ" の異名を持つ男、今作でもその特徴的な目の効果がてきめん

変に自分の凶行に開き直りを見せてるところが怖くて厄介きわまりない、余計な事を考えずに攻撃を仕掛けられるところこそこの犯人の一番の強みかもしれません

刑務所に8年服役した男が、逆恨みで弁護士一家を追い詰めていく話。U-NEXT配信終了直前に滑り込みで。

マーティン・スコセッシ×ロバート・デ・ニーロのリメイク版で知られる『ケープ・フィアー』のオリジナル版。

リメイク版と比べてしまったせいかもしれないけど、あんまりキャラが立ってないし、展開も遅くてダラダラ進むから結構退屈だった。

高校の時くらいからずっと観たかった一本！！デ・ニーロの『ケープ・フィアー』は去年観たんですが、こちらが正真正銘本家本元。
弁護士ニック・ノルティVS犯人デ・ニーロでしたが、今回はなんとグレゴリー・ペックVSロバート・ミッチャムという、さらに豪華で渋〜いお二方。
昔自分をブタ箱にぶち込んだ弁護士を一生許さねぇ...と、出所したばかりの犯人が恐怖の復讐に走る超一級品のサスペンスです。そりゃスコセッシもリメイクしたくなっちゃいますよね！

とにかく、ハッピーに行こうぜ！もしくは心震える一大叙事詩だぜ！な映画を映像化することに必死だった当時のハリウッド。本作の2年前にヒッチコックが『サイコ』を発表、一躍サスペンス映画の大流行が始まりますが、本作もその流れの中で生まれた一本。
もちろんこの時代にもすでにサイコキラーは実在していたけど、あえてそれを映画に登場させることはあまりしなかったからか、この時代の作品と思えないくら鮮烈な印象です。デ・ニーロは今思えば若干やりすぎじゃない？というくらい濃い印象でしたが、ニタニタ笑いながら言葉数少なく迫りくるミッチャムも最高！トレードマークの眠そうな流し目が、常軌を完全に逸してるサイコに見えてコワイコワイ。

スコセッシ版では、ニック・ノルティ扮するボーデン弁護士は家庭がありながら浮気をしていたり、人間としてドス黒い側面もありましたが、本作はペックのイメージ通り清廉潔白、悪いのは完全にケイディ（ミッチャム）として描かれています。
また、ジュリエット・ルイス演じるボーデン家の娘ナンシーとデ・ニーロがいい感じになるシーンもありましたが、こちらはそもそもナンシーがもう少し若いのでそういう描写はナシ。時代を考えると、確かにあの設定は無理ですね（笑）。
上記以外はほぼ『ケープ・フィアー』と設定同じ、狂気っぷりは正直スコセッシ版の方が強烈でしたが、ハラハラドキドキさせてくれる度合いはこちらの方が高い気がしました。何よりペックとミッチャムという、偉大なるレジェンドの夢の共演は生唾もの！！
モノクロの画面も、陰影がまた怖さを倍増させて印象深かったです。あのミッチャムの眼差しが暗闇からこちらを見ているとか、もう怖すぎ！！やばい！（笑）
音楽もいかにもって感じのレトロさでいいですね、巨匠バーナード・ハーマンの手腕が光ります。

クライマックスは一家の叫び声や、ミッチャムのボーデンに対する憎まれ口をあえてほぼ使わず、ひたすら沈黙の中で繰り広げられる攻防戦に手に汗握ること間違いなし。
サスペンスに溢れた現代でも、十分通じるどころかこっちの方がよっぽどコワイんじゃないか...ってくらいの、名優2人の演技と演出に脱帽です。スコセッシ版に、ミッチャムもペックもカメオ出演してたのも嬉しかったなー！

...クレジットにテリー・サバラスの名を発見してあれ、って見返してみたらいました。髪の毛が生えているから分からなかったよ。（失礼）