人間関係が下手でセラピーを受けるレストラン料理長のマーサは職人タイプの女性なのだが、時折パニック発作を起こしたり、客にキレるなど、問題を抱えている状況で、突然姉の事故死で娘リナを引き取る事になったり、同僚の妊娠により臨時で雇う事になったイタリア人料理人マリオとの人間関係に悩むなど、序盤からかなり重めで辛い内容にも関わらず、マーサ演じるマルティナ・ゲデックのさばさばとした雰囲気と美しさ、バックで流れるサックスの趣のある音色で、清々しさや爽快感すら感じる作品の雰囲気が、観ていてとても気持ちよかった。
イタリア人料理人マリオの陽気で温かみのある性格や、悲しみを引きづる8才のリナの健気で可愛い頑張りなど、マーサとの掛け合いが素晴らしく、そこに美味しそうな料理の数々が良い調味料になっていて、徐々に心まで満たされて行く内容がとても心地よく感じる映画だった。
ストーリー展開が素晴らしく、ラブストーリー的な要素もあるが、そこに比重を置かず、一貫したヒューマンストーリーとしてマーサの苦悩や葛藤、頑なな性格が好転して行く展開から、ラストへのあっさりと清々しさすら覚える素敵な流れが、とても気持ち良かった。

キャサリン・ゼタ・ジョーンズの「幸せのレシピ」がとても好きだったけど、ドイツでオリジナルがあった事は知らなかったけど、
そしてこちらもまた雰囲気違くてすごく良かった！

いつも料理のことばかり考えているフレンチシェフマーサは、なかなか人に心を開けない性格。
ハリウッド版より、更に主人公の心の葛藤の表現が深刻な雰囲気なのはドイツ人の気質をより色濃くだすためなのかな。
母を失い心を閉ざしてしまった姪っ子リナとの暮らしと性格が正反対で何もかも対立しちゃう新しいシェフの登場。
プライベートと職場に同時に訪れた変化が化学反応を起こす過程がとても自然で良かった。

マーサの神経質さとは対照的な陽気なマリオの存在はまるで月と太陽のよう。
薄暗くて寒いドイツ🇩🇪と太陽が照りつけるイタリア🇮🇹が融合したら、心地よくてちょうど良い空気の居場所が出来て、リナの心が解れていったのだろう。
ポップでテンポの良いハリウッド版とはまた一味違うエロティックなキスシーンはヨーロッパならではな感じでうっとりしちゃいました。

2021-02-05記。
「太陽の輝くイタリアに… 暗く寒いドイツ…」というセリフがある。私が行った印象でもそのとおりなのだが、住めば都ってことかな。
女性監督(たぶんお母さん役もやってる)ならではのリアリティある厨房シーンが楽しい。
大胆なストーリー運びのおかげでコンパクトにまとまってはいるが、もうちょい泣かせてほしかった。