古いものと新しいものが混在する現在のロンドン。ピアノ教師であるスザーツカの教え方は確かに古いもので、時代とは相容れないものであった。彼女に才能を認められたインド人少年は、師の元で芸術を極めるのか、生活のためにビジネスとしての音楽に足を踏み込むのか、選択を迫られる。

彼女の元で学び続ける弟子はわずか。それ故に彼女は弟子たちをわが子のように愛した。世代をこえた心のつながりが描かれる秀作。

ロンドン再開発や地上げ屋たちをストーリーに絡めて、時代の移り変わりを印象づけるのがナイス。老け役を熱演するシャリー・マクレーンに凄みを感じる。ゴールデングローブ賞主演女優賞など高く評価された。

記録(ジョン・シュレシンジャー監督作品。彼らしい、質の良いこころに残り続ける名品。)

バーニス・ルーベンスの原作を、ルース・プラワー・ジャブヴァーラとジョン・シュレシンジャーが脚色、シュレシンジャーが監督した。ロンドンを舞台に、インド人の少年と、シャーリー・マクレーンの老婦人がピアノを介して交流する。マーチャント＝アイボリー作品のジャブヴァーラのインド人の視点が脚本に反映されたのが成功の要因。
シネセゾン渋谷にて