古い白黒映画ですが面白かったです。フレデリック・ショパンがポーランドを出てパリで成功するまでの一時期を描いていてとてもわかりやすかった。歴史偉人ものというのは史実だけを描けば良いのではなく、ひとつのエピソードをどれだけ魅力的に描けるかなんだなと再認識。
そういった意味で、本作はショパンと彼の初恋の相手で「別れの曲」を捧げたコンスタンティアと、彼の先生を中心に、90分の短さで「祖国ポーランドとショパン」を描いた楽しい映画でした。

後半、フランツ・リスト、そして男装の麗人ジョルジュ・サンドが登場。
リストと連弾しながらの握手はいちばんの見どころか。リストの手はやはり大きかったのかな。
その前に、コンスタンティアと豆むきをしていたら豆こぼしちゃってニワトリがそれを食べにくる、そのあたりで素敵な映画だなあと感心してしまいました。
ショパンといえばサンドとのマヨルカ島、「雨だれ」なんてドラマが有名だろうけど、あえてこれはポーランドと彼の映画、「別れの曲」というのが良かったです。

genarowlands様のレビューで本作を知りました。ありがとうございました。

ショパンの英雄ポロネーズが大好きです^ ^
別れの曲はすごく切ない曲ですが、101回目のプロポーズが毎回頭をよぎってしまいます(｡-_-｡)
今の若い方はきっと知りませんね(｡-_-｡)

• #図書館

ショパンの「エチュード10の3ホ長調」が「別れの曲」と呼ばれるようになったのは、本作フランス語版が日本でヒットし、主題曲を邦題で呼ぶようになったからだという。それほど日本に馴染んでいる曲名。この「別れの曲」には初々しい初恋と野心が絡み合い、ショパンの二面性が表れていた。

ショパンが初恋の人と別れ、大人の恋に誘われていく時に奏でられる曲がこの曲。田舎に残してきた年若い彼女のために作られた曲。長調なのに切ない。結ばれない運命とわかっていたからだろうか。

この切ない曲の間に、「英雄ポロネーズ」がリストと連弾される。ここにもリストが登場。『愛の調べ』同様にリストは快活で積極的な人物として描かれていた。ワルシャワからパリに出てきたショパンは祖国愛が強く、ロシアからの蹂躙に苦しむポーランドの若者が蜂起し命を落としたことに引け目を感じていた。自身も闘いたかった気持ちを楽曲に込めていた。

内なるパッションとロマンチシズムが同居していた。内向的だが、天才だと自負していたようで、チャンスがあれば女神の前髪を掴みたかったのだと思う。

そのチャンスの女神がジョルジュ・サンドだった。

田舎に残してきた幼い彼女と対比して描かれているからか、肉食女子半端ない。

本作はサンドと出会い初恋の彼女を捨てるところまでが描かれている。ショパンは混乱の祖国を捨てなければ才能を開花できなかったが、一緒に人間の繋がりも切っていった無情な面も暗示されていた。

ショパンの才能を見出し指導し支援していた師は「私たちのショパンではなくなり、世界のショパンになったのだから仕方ない。もう私は必要とされない」と自嘲気味に呟く。ユーモラスな師はショパンが広い世界へ羽ばたくために惜しみなく愛情を注ぎ支えていた。初恋の彼女はショパンの出世のために気のない素振りをして一度は身を引いた。

本作のおもしろさは、この過渡期だけを描いていること。サンドとマヨルカ島で暮らしたことや長患いした病についてはない。どこまでが史実に沿っているかはわからないが、天才が辿る道として、次々と過去を捨て未来に生きようとし加速度のついた時期があったのだと。


日本で公開された時はフランス語版だったが、もともとはドイツ語版で製作されている。こちらは元のドイツ語版。音声を変えたのではなく、役者を総取り替えしている。