やはり、生前の幸せな生活をある程度、描かないと女の情念は、幽霊になっても精彩をかいてしまうんだなあと実感する。

灯篭流しの夜、子供たちがたまたま見つけたのは水面に浮かぶ呉服屋の手代・美之介と薄雪太夫の姿だった。恋仲の二人だったが、薄雪太夫に身請話が持ち上がり、遂に身を投げたのであった。だが、美之介が息を吹き返し、薄雪太夫のみがはかなくも還らぬ身となった。心中の生き残りの引け目もあり、薄雪太夫の後を追おうとする息子を母親が励まして迎えた三年後。

今は行商人となった美之介はたまたま、街頭で酔って狼藉を働く旗本らから、ある娘を庇う。名乗らずその場を去るも助けられたのは大店の一人娘。一目惚れして彼を婿に取ろうと父親に懇願。薄雪太夫との過去もあり、生涯妻は持たぬと誓っていた美之介も、母親らに迫られて婿入りをする羽目になるが。

あの皇居の千鳥ヶ淵に怪談話有ったんだと早とちりしたら京都の話なんね。美之介役は中村錦之助。白塗りで睫毛のボリュームもすごいです。薄雪太夫に千原しのぶ。細面にスレンダーな体型の着物姿が女幽霊役によく似合う。

母親役はこの時代の母親役といえばの浪花千栄子さんであります。

序盤以降は音沙汰無い薄雪太夫、てっきり、無理矢理身請けしようとしたお大尽や婿入り先の一人娘はじめ大店の皆さんなどにびしびしと怨みの矛先がむくのかなと思っていたら、尺が短いこともあってか（爆）、ピンポイントに錦之助のみロックオンして、因縁のあの場所へと誘う。

まあ、遊女屋でも死後、雪降った時には姿を現して舞を見せたり、自分がいたところを開かずの間にしてしまったりしていたようだけど。

怪談映画としてはだいぶんおとなしめだけど、終盤の千原しのぶさんの美しい女幽霊の情念漂う姿についつい見いっちゃいましたね。

なお、東映スーパー戦隊の｢侍戦隊シンケンジャー｣の敵役に薄皮太夫というキャラがいたけど、その生前、人間時の名前が薄雪太夫。ネーミングにあたり、同じ東映のこの映画が元ネタだったのかなぁと今更ながら思いましたわ。

YouTube東映時代劇公式にて。

東映時代劇の怪談シリーズ

女性に恨まれると怖いです。でも、本作の美之助は悪くないと思うんだけどな。嫌がる美之助を無理やり結婚させる周りの人達が悪いんじゃないのかな。

この時代、主役は白塗なのかな？

既婚女性は前帯にしているところが時代考証本格的だな。