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愛のイエントル
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『愛のイエントル』に投稿された感想・評価

Omizu
3.4
【第56回アカデミー賞 作曲賞受賞】
バーブラ・ストライサンドが製作、監督、主演をつとめたミュージカル映画。アカデミー賞では助演女優賞(エイミー・アーヴィング)など4部門5ノミネートされ、作曲賞を受賞した。

話にやや無理があるかなとは思うものの、バーブラが伝えたいフェミニズム的メッセージが存分に詰まった意欲的な作品だと思った。日本ではDVDになっていないのが残念だが、確かに内容としては地味だし仕方ないのかな。

閉鎖的なユダヤ人社会において、学問で身を立てようと男装する女性を描いた内省的なミュージカル。この間観た『ハロー・ドーリー!』のように大々的に歌って踊るというよりも心の中で歌い上げるような感じ。同じバーブラ主演でもだいぶ違う。

女性が男装して最後までバレず、しかも親友の婚約者から惚れられちゃう、という展開には少し都合の良さを感じる。そんなに上手く展開がいくものかな…?違和感はある。

ただ、やはりバーブラの歌は素晴らしく、彼女自身が表現したフェミニズム的メッセージには大いに共感できる。演出も少々荒削りな部分は目立つものの、監督デビューとは思えない堂々としたもの。

かなりの意欲作で、それなりの価値はあると思っただけに扱いがちょっと可哀想。当時のアカデミー賞でも作品賞や監督賞にはノミネートされず、今も日本でのDVD販売はなし。こんなに冷遇されるべき作品ではないと思う。

確かに内容は地味だが、ミュージカルとしても女性映画としてもなかなかに見応えがある良作であった。
tak
4.1
昨年、「ミシェル・ルグラン 世界を変えた映画音楽家」を観た後、ルグランが音楽担当した作品で未見の映画に挑みたいと思っていた。本作「愛のイエントル」は今回が初鑑賞だけど、楽曲だけは高校時代から聴いている。本作の「愛のテーマ」が吹奏楽部の演奏候補に挙がったことがあったが、映画本編を観たことないから強く推せなかった。ちょっと地味な印象もあって結局選ばれず。アカデミー音楽賞も獲得したし、いい曲なのにな。

ポーランドに暮らす女性イエントル。20世紀初め、女性が学問をすることに寛容でなかった時代。ユダヤの律法タルムードを教える父に育てられたイエントルは知識欲の塊で、縁談にも興味はない。父が亡くなり、学問を続けたいために男装して村を飛び出す。道中に知り合った学生アビグドールの協力でユダヤ教の神学校に入学することができた。もちろん男と偽ってだ。

アビグドールは師の娘ハダスとの婚約が決まっていた。アビグドールの優しさに惹かれ始めていたイエントルは軽い嫉妬を覚える。しかしそれが破談となり、師はイエントルとハダスを結婚させようとする。男の姿と女の心の狭間で苦悩するイエントル。彼女の決断は…。

バーブラ・ストライサンドがこの題材を選んだのは、貧しいユダヤ人家庭に生まれ、父を早くに亡くした生い立ちに重なるからだと言われる。"この映画を私の父と世界中の父親に捧げる"と映画の最後に伝えられる。女性に学問をさせない掟をこっそり破ってヒロインに教育を施した父親は、ユーモアも思いやりもある素敵な人物に描かれている。

またいわゆるウーマンリブが叫ばれてきた70年代から、女性の自立を訴えてきたバーブラの姿勢もこの映画で示されている。本作では、製作、脚本、監督、主演、歌唱を一人で務めている。女性がメジャー映画会社の作品を撮る、監督するのは、まだハードルが高かった時代。公開当時のアメリカでも最初の上映館は極めて少なかったという。それがオスカーノミネートにまで辿り着いたのは作品の力でもあり、ヒロインへの共感があったからだろう。

ただ今の目線で観ると、婚約者ハダスの世間知らずな箱入り娘っぷりがあまりにも極端に見えるし、それを聡明な印象のあるエイミー・アーヴィングが演じているのもミスキャストに思える。調べてみるとオスカー助演賞とラジー賞に同時ノミネートされたそうで、世間でも賛否が分かれていたのだと思われる。

後半の男と女をめぐる展開も、早く本当のことを言っちゃえ!とハラハラさせられっぱなしで、偽ったまま結婚式まであげてしまうのはやり過ぎ。だがそれも密かに恋しいアビグドールの願いだったから仕方なかったのかもしれない。結局誰かを傷つけることになってしまっただろうと想像すると、結末としてはちょっとモヤモヤ。今の感覚で撮ったら、後半はもっとコミカルなラブコメ演出になるだろう。例えば…香港映画の「君さえいれば/金枝玉葉」みたいに。でも寝室で枕投げをする初夜の場面、なかなか好き。

アビグドールを演じたマンディ・パキンティンは、後に「ワンダー/君は太陽」の校長先生を演じている。この作品の優しさが受け継がれているみたい、と勝手に思う映画ファンw。

そしてミシェル・ルグランが手がけた音楽と、半ミュージカルな演出でのバーブラの歌声が素晴らしい。吹奏楽部の選曲会議にあがった愛のテーマ(The Way He Makes Me Feel)はもちろん、ラストで歌われるA Piece Of Skyが好き。"窓で切り取られた空"。その先には広々とした世界が広がっている。新天地へと向かう移民船で歌うヒロインに幸あれと願う。

いい映画だった。
思い切ってディスク買ってよかった😊
まだタルムードを学べるのが男性だけだった1904年の東欧。イエントルは父とこっそり学んでいたのだが、その父も肺を悪くして亡くしてしまう。彼女は独りになってしまったが、誰かの妻になるでもなく、ある決意をする。それは、「学問は男だけのもの」という掟を破り、男装して大学に入学するというものだった。

本作はバーブラ・ストライサンドが監督・製作・脚本・主演・歌唱の5役を務めたミュージカル映画である。ミュージカル映画の掟破りについては、鷲谷花さんの作品解説が素晴らしいのでぜひ読んでいただければと思う。

中盤までみていて思ったことは、イエントルが男装して大学で学ぶ様子が、詳らかに語られていくーつまりユダヤ教の側面が強調されるーのではなく、あくまでエンタメ作品となっていることだ。それによって、飽きることなくみれるのだが、当時の男性優位なユダヤ社会が糾弾されるわけでもなく、むしろ男の恰好をしてまで迎合し、あげくにはシスヘテロのロマンティック・ラブ・ストーリーが展開されるのだから、本作をフェミニズム映画に位置付けていいのか戸惑った。

しかし、さすがというか、物語はイエントルと愛するアンシェルが結ばれて、ハッピーエンドになるのではない。イエントルはアンシェルにちゃんと事実を打ち明ける。それは無傷な和解ではないけれど、ちゃんとドラマを生じさせて、他者理解へ向かわせるのだから素晴らしい。だからこの映画の本編が134分であることに頷けるし、現代の映画も長尺にするならこれぐらいドラマを生じさせろと思ってしまう。

ラストは「映画の掟」を破れていないかな…
女性を旅立たせて自由意志が尊重されたから、一件落着とはもうならない。

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