なんか男も女もコントみたいなボロの出し方ですが、いろんな意味でハラハラして、退屈はしなかった。落ちはね、うん、ちょっとえーってなる。

1944年🇺🇸
フリッツ・ラング監督
フィルム・ノワール

平凡な中年の犯罪学教授が
若き魔性の女に心を奪われた
その結果
彼は思わぬトラブルへと
巻き込まれていくが…

ミステリでありながらも
軽妙なタッチで描かれ
童話のようなまさかの締めくくり

フリッツ・ラング監督作。なんと脚本がピエル・パオロ・パゾリーニというのが驚き。ヒッチコックのような巻き込まれ型サスペンスの娯楽作でありながら、旧約聖書の「雅歌」がトリガーってところがパゾリーニ風味かｗ

ショーウィンドウに飾られた美しい女の絵に魅せられていた主人公エドワード・Ｇ・ロビンソンが、絵のモデルの女に出会ってしまい、スケベ心を抑えられずに彼女の部屋に上がりこんだが運の尽き。彼氏が出てきてボコられ反撃で彼氏殺害。死体を捨ててシラを切ろうとするも捜査の手が伸びてきてどうする？ってなオハナシ。

前述の「雅歌」は「女の中で最も美しいひとよ」なんて言葉も出てくる色っぽい恋の歌なのですが、これは神と人との関係を歌っているとされている。聖書では「神と人」を「花婿と花嫁」に例えたりそういう比喩はわりとありますね。

肖像画からホンモノの女性が飛び出してきたかのような夢うつつな雰囲気の中、あれよあれよと主人公が罪に誘われ急転直下の惨劇が起きるストーリー・テリングの手際よさに唸る。インテリの主人公が冷静に隠蔽工作を図るも案外ボロ出しまくってオウンゴール連発のトンチキ展開になる後半はドキドキ。これがちょいワル優男の破滅ならニヤニヤしながら眺めていられるが、若干、出川哲朗入った渋カワなオッチャンがヤバイよヤバイよーって追い詰められていくのはなんだか気の毒だった。
あと、みんながみんな持ち物にイニシャルつけて証拠になっちゃうのが笑える。ミステリー作家には都合の良い時代でしたね。

生真面目な中年男のほんの浮気心がこんな災いに～という大人のイソップ童話？のような実に面白い物語。