娘と私の作品情報・感想・評価

「娘と私」に投稿された感想・評価

二日続けて昭和初期が舞台の映画

NHK朝ドラの第一作目になるぐらいだから、当時は人気だったんでしょうか。
昭和のオヤジにしては珍しく、パパ、ママの家庭で娘を溺愛してるのが微笑ましいです。
男やもめが娘のためにしてやる裁縫だったり、寝る前のお手だったり。
娘への接し方も威圧的じゃなく、とっても好感の持てる父親像。

原節子はこの年が引退だったらしく、それを知るとラストショットが実に印象深い。

山崎努と山村聡がキャッチボールするんですが、山崎さんがいい球投げるんですよ。
念仏の鉄が投げて音羽屋半右衛門が受ける、必殺シリーズ好きには嬉しいシーンだったりします。
チョイ役で菅井きんさんも出ています。
父親(山村聰)と娘(星由里子)、再婚の母親(原節子)の戦前~戦中~戦後を描いたホームドラマであるが、何気ない場面での杉村春子の凄さを感じる作品だった。


この映画、原節子が後妻を演じているので「原節子の経歴でどの位置を占める作品なのか?」が疑問になって、キネマ旬報社刊『女優 原節子』で確認すると、原節子引退直前の映画であった。

また、この映画を観ていくと、娘の婚約者として山崎努が出演している。山村聰とキャッチボールするシーンなどあるが、あまりにも山崎努が若々しいので、こちらも確認してみると、あの黒澤明監督の傑作『天国と地獄』の前年の映画が本作である。

このように、原節子と山崎努のすれ違い的な位置付けの映画であった。
獅子文六の原作はラジオドラマの後、朝のNHK連続テレビ小説の第1作に。
本作は原節子の(引退作「忠臣蔵」は少ししか出ていないので)事実上ラスト。
後妻でやってきたばかりの時と終盤での話し言葉が違っていることに気づいた(←細かい!)
初めは「わたくし」と随分控えめな振舞いと言葉遣い、印象も暗め(老けメイク)だったのが、後半、夫である岩谷が小説家として成功をおさめ、家を建てようかというあたりでは若返っているようにも見える雰囲気に。
そして着物の柄の変化。
山村聰が娘と話しながらお裁縫(と、いうなんとも微笑ましいシーン)や杉村春子の出てくるだけでニンマリさせるコメディエンヌぶりや時代に応じて変化する風俗描写など、いろいろ楽しい。
獅子文六による原作小説は、まず1958年にNHKでラジオドラマ化、次いで1961年〜62年に記念すべき朝の連続テレビ小説の第1作目としてテレビドラマ化されている。しかも、詳細は不明だが、その朝ドラ版の出演者の中に原節子の名前が! 一体何の役だったのだろう? とっても気になるトコロだが、今はハナシを先に進める。そして、朝ドラ版の最終回が放送された3月30日の翌々日(4月1日)に公開されたのが、この映画版「娘と私」である。今で言うテレビドラマの劇場版とは違って、両者の間に権利関係は存在せず、あくまでも同じ原作を元に別々に作られたテレビ版と映画版という位置づけになっている。従ってキャストも異なる。ただ一人、原節子を除いて。彼女だけは両方に出演しているが、どうやら役柄は違うようだ。

その原節子が、まずは本作最大の魅力である。

私は、原節子という女優の魅力を最も引き出した監督は成瀬巳喜男だと思っている。倦怠期を迎えて心がササクレ立ち、ともすると冷ややかに夫を見下す。そんな妻を演じる原節子は、演技が肩肘張っていないぶん、そのナチュラルな美しさが際立っている。正座して正面向いて微笑む原節子も悪くは無いが、姿勢を崩してリラックスする彼女の方が私は好きだ。で、本作の原節子は、引退直前の作品だけに “美しい” と言えるかどうかは微妙だが、自然体の妻の演技が凄くいい。ビールと麻雀が好きだったと言われるこの大女優は、私生活ではきっとざっくばらんな人だったに違いないと勝手に思い込んでいるものだから、なおさらそう感じる。共演者が、杉村春子に山村聰という「東京物語」組なだけに、いっそう原節子の違いが引き立って見えるのかもしれない。

そして、もうひとつの見どころは子役の小橋玲子。

小橋玲子といえば、後の「怪奇大作戦」の小川さおりちゃん役が有名である。あの作品の彼女もキュートであったが、本作における当時9歳の彼女の可愛らしさときたら、これはもうただ事では無い。天使の笑顔とはこのことである。演技力も抜群で、しんどい境遇にありながら元気さを失わず、幼いながらも父親への気遣いも忘れないという健気な少女の役を、見事に演じている。山村聰とフランソワーズ・モレシャンの子供が何で小橋玲子なのだ?などというツッコミをモノともしない魅力がある。

と言うワケで、大女優と子役が最大の見所な本作だが、それ以外にも、菅井きんのシスター姿が拝めたり、若き山崎努や加藤剛を見られたりと、そこかしこに魅力は転がっている。小橋玲子が成長した後の星由里子も、「若大将シリーズ」とはまた違った新鮮さを振りまいていて大変よろしい。戦前から戦後にかけて、娘の誕生〜妻の死〜再婚〜戦争〜2度目の妻の死〜娘の結婚 と綴られる父と娘の半生記も、娘を持つ父親なら落涙必至、そうでなくても涙あり笑いありの家族物語である。

だが、楽しく鑑賞しているうちにハタと思う。映画として悪くはないが、やはりこれは朝ドラ向きのコンテンツだよな〜と。