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『どぶろくの辰』に投稿された感想・評価

notitle

notitleの感想・評価

4.2
戦後、不発弾が数多く埋まる現場でのブルーワーカー達の話。所謂、タコ部屋労働で、気に入らなければ飛ぶ辰。荒々しく無骨ながらも、筋が通り、不器用で、優しき男に一目置かれ、女達も惹かれていく。男臭く、痛快。あまり知らぬタコ部屋労働も興味深い。
同じ原作の、P·シュレイダーが『聖なる映画』として論じた3人を上回る·トーキー以降はスタイルの概念さえ消し去った、真に聖なる田坂(比肩するはドヴジェンコのみか)の広島被爆からの復帰第1作(公開後も撮影続行)と比べては可哀想だが、稲垣も充分に映画の申し子なのだ。ワルぶったあらくれの世界と見えて、ことごとく、明るい東宝健全世界に鞍替えしてく、いい加減さ·腰砕け、それを非難する気もしないのだ。表面的に唸らせる、映画だけに許された醍醐味·その手腕に限ると、サイレント期はともかく腰の定まったトーキー以降はケレンを嫌いブレッソンすら無化してしまう田坂の清廉を、何となくワクワクの面では少しは引き離してて面白い。
三村や伊丹の名作脚本を得ての、映画的表現を極めた『海を渡~』『無法松~』『手をつ~』のモノクロ·スタンダード期に比べて、いくらアカデミー賞やベネチアを制したとはいえ、カラー(途中からスコープ)期は通俗的と云われるが、そんなこたぁない。批評家当ての名誉なんて端からか捨ててるだけだ。遺作だって比べても、同じ変わり者ばかりを集めた題材で、田坂の名作にそんなに劣るわけでもない。
本作も、昔ながらの採石場での、労使の問題、現場と社上層、飯場や近くの飯屋=女斡旋の女たち、の軋轢を描いてるが、暗い筈の話が、設定ベース自体がころころ変わるイージーさなのでか、じつに心地よく伸びやか。棒頭の下·ライフル携帯要所見張りらの目光り脱出不可能の現場で、「トビッチョ」と呼ばれる脱走をあちこちでやって来て生き甲斐としてる主人公。追分の唄と爆発物処理名人の相方がいる。学ありながら敢えて入って、「恥部たるタコ部屋の潰し模索」と「森林切り出し路実現への貢献」の両方を味わってる男。主人公は、幾つあるかわからない戦中の不発弾の存在分かったのと、飯場で威勢よく博打名人の女に狂う位に惹かれ、トビッチョを出来ずにいる。彼女の事は、下へ暴力·上へ無理押し、何でも力ずく·被害お構い無しの棒頭がつけ狙ってる。主人公は、女らを守る為に、棒頭と格闘し、女らとの関係をでっち上げてくも、豪快強気に見えてじつは東宝調おもんばかりの好漢。女も出所夫の為に資金貯めてる背景あり、飯場強気は「演技」で正体分かると言葉使いもコロッと女らしく変わる。不発弾抱えて、他現場の他社に負けぬ工事早期完成の親方に、過大な取分要求して、消されかける棒頭。「飯場内でケリ。娑婆に出れば(クリア)」と女と夫を逃がして自分もトビッチョの後、それを知り、工事貫徹のため、不発弾処理·棒頭救出の為もどってくる主人公。成就後も、飯屋の女に「腰落ち着け」応じかけて、やはり「狭すぎ」ると船へ。女も明るく、「サヨーナラー、一生懸命ホレてるよ」と。
何ともスターとキャラ、暗さ排除、の安定に急カーブしてく展開。でも安心して、タッチの豪腕·妙手に浸れる。合成·スケール·力感万全の東宝特撮以上に、ロー·仰角多用地力、疾走感のスピード·迫力、回るめ他移動の格と確かさ、エキストラ量も含め·縦図や大Lの伸びやか·広大な力とバランス、ごく短いカット挿入の気付かれぬも意識下へ確かな効果。俗に留まるなら、これが映画だ。
mingo

mingoの感想・評価

3.6
昭和30年代に地方の道路工事やダム工事の現場でタコ部屋と呼ばれる最悪な労働環境の中で働く土工とそれを管理する男の対立を描いた稲垣浩×三船敏郎コンビのアクションドラマ。前半はダラダラしてて退屈だが後半は忙しくそこそこ笑えるところがある。三船が森を駆け抜けると羅生門の高速カットバックを思い出すが石場を駆け抜けるロングの三船も悪くない。男のくせー汗の匂いが漂ってくる三船じゃなければ完全駄作に陥っていただろうと思うくらいには三船の偉大さを痛感。有島一郎は喜劇でもアクションものでもどこでも名バイプレイヤーだなとつくづく思う。そして池内淳子はどんな役やらしても不幸な女が似合ってしまう…私も職場から「飛びっちょ」したいぞ!それにしても田坂具隆版の方が面白いんだろうな…

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